刀身が锖びてようが朽ちてようが折れてようが、そんなもんは鞘に纳めたら见えへんわけやん」
「见えなきゃいいのかい」
「见えなきゃええんよ。あるかどうかわからんもんは、あってもなくてもおんなじもんやし
たとえなくとも、あるように振舞えばそれはあるんと同じやろ。剣术なんか骗しでええんよ。
虚刀流が刀を持たんでも剣士を名乗れるんと同じことや」
「やれやれ。相変わらず、仆はひねてるね。そんなことだから、どこか切れ味に欠けるんだよ。
もっとも、だからこそ斩られれば甚大に痛いわけだが。
それでもある程度は俺みたいに、普段から人を斩って锻えてないと、日本刀ってのは、斩った数ほど锻えられるもんなんだぜ。
そういうとこ私はどう思う?」と、球体人间は、视线をやや上に向けた。
ずらりと并べ立てられた刀剣の、その大量の刃先の上に、ごろりと寝転がっていた男に対して、彼は声を挂けたのだ。
しかし、体に突き刺さる刃物にも目を覚まさないその男が、そんな呼び挂けで目を覚ますわけもない。
否、正确には、それら刃物の切っ先も、彼の体に突き刺さっていないし贯いてもいない。
男の钢のような筋肉が、そんな狼藉を许さないのだ。
极限まで锻え抜かれた、铠のごとき分厚い筋肉。
だからこそ、刀剣を寝台に眠るなんて无谋を、彼は成し遂げているのである
武器库管理人としては、如何なものかとは思われるが。
球体人间は、しかし返答がなかったことに少なからず不満を覚えたようで
彼が寝台にする刀剣群の根元を蹴り、もろともに崩してしまう。
これには堪らず、筋肉の固まりも目を覚ました。「なにすんだ、俺」
「仕事中に寝てたら駄目だよ、私」
球体人间は、伟そうに大义名分を述べるが、しかし、管理すべき武器を足蹴にしたという点においては、彼に何かを言う资格はなさそうだ。
「これのどこが仕事だ。刀の仕事は、斩ることだけであろうに」筋肉の块は、酷くつまらなそうに言う。
まるで、世の中には価値の见出せる物など何一つなく、くだらないの一言で片付けられない现象など
决して起こらないと、そう确信しているかのように。
「仆や俺のように、ごちゃごちゃと理屈を考えたり、己が行为に意味を裏付けたりすることも无駄だ。
刀が意思など持つべきではないし、そもそも意思など持ってはいないのだから」
そんなよしなしごとなど、考えるだけ虚しいだけだ、筋肉の块のそんな言叶を受けて、球体人间は丸い肩を丸く竦め
「相変わらず私は固いな」と呟く。
自分の言うことを否定されても、まるで気分を害した风はない、むしろ楽しげでさえある。
「もっとも、そんな固さだからこそ、刀の刺さらない刀として成立してるんだろうけどね。
いつも言うことだけれど、その技术は、ほとんど忍者の领域だぜ。真庭忍军(まにわにんぐん)とかさ。わかってる?」
「わかってないし、わかる必要などない」からかうような球体人间の言叶に、筋肉の块は首を振る、地べたに寝そべって。
「私は纳得したい訳ではないのでな」
「纳得したい訳ではない、ねえ」と、彼の発言に前置きも无く、挨拶も无く不躾に被さってくる台词があった。
三人が声のした方向に颜を向ければ、そこにいたのは、背の高い女と、背の低い男の二人组みである。