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【原版】日本人气幻想小说レイン

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戦士と王女は出会い、そして歴史が动く


IP属地:上海1楼2012-05-28 10:46回复
    第一部
    レイン
    雨の日に生まれた戦士
    吉野 匠



    IP属地:上海2楼2012-05-28 10:47
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      ――☆――☆――☆――☆――☆――☆――
      异世界に存在する大陆、ミュールゲニア。
      科学文明の魔手はまだこの地を覆(おお)うことなく、廃(すた)れつつあるとはいえ、いにしえより伝わる魔法も细々と受け継がれている。
      そんな、剣と魔法が支配する世界――
      ミュールゲニア全土を巻き込んだ大戦から、长い长い时が流れた。
      危ういバランスを保っていた平和は、そろそろ终焉(しゅうえん)を迎えようとしている。
      大陆北部地方の大国ザーマインは、新たな王を迎えて生まれ変わった。
      彼は小さな権力にしがみつくことを良しとせず、今や世界制覇(せかいせいは)の野望に燃えている。
      最强の王が発する命令の元、漆黒(しっこく)の军団が一斉(いっせい)に侵攻(しんこう)を始め、同时に复数の国と戦火(せんか)を交えるに至っている。
      そして、そんなザーマインの侵略(しんりゃく)を受けようとしている国の一つに、大陆南西部の小国「サンクワール」があった。
      国力はかの大国の一割にも満たず、士気も振(ふ)るわない。
      さらには、现王は贵族のみを过剰(かじょう)に优遇(ゆうぐう)し、既に人心(じんしん)を失っている。
      弱小国サンクワールの灭亡(めつぼう)は、もはや避けられない运命のように见えた……
      


      IP属地:上海3楼2012-05-28 10:48
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        目次
        プロローグ
        第一章 レイン、谨慎(きんしん)になる
        第二章 ラルファスの戦い
        第三章 シェルファ、ガルフォート城を去る
        第四章 再会
        第五章 决戦
        エピローグ 雨の日に生まれたレイン
        特别书き下ろし编 友谊(ゆうぎ)の始まり――ルナンにて――
        あとがき


        IP属地:上海7楼2012-05-28 10:50
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          第一章 レイン、谨慎(きんしん)になる
          サンクワールの主城(しゅじょう)、ガルフォート城。
          真っ赤な绒毯(じゅうたん)を敷(し)き诘(つ)めた谒见(えっけん)の间(ま)に、大势の重臣达が集まっていた。
          今日は军议(ぐんぎ)である。
          奥の一段高い玉座(ぎょくざ)に腰を据(す)えたダグラス王の前に、それぞれ定められた地位に従い、文官と武官が左右に并んでいる。
          そのほとんどが金髪に碧眼(へきがん)……つまり贵族の者达だ。
          ただ、王の至近に跪(ひざまず)くレインのみが、つやつやした黒髪に、黒い瞳といった外见的特徴である。今日はまた、一段と悪戯(いたずら)っぽく瞳が光っている。
          この男は、いついかなる场面においても、不敌かつふてぶてしい表情に见えるのだが、ご多分に泄(も)れず、今もそんな颜である。
          少なくとも、ラルファスにはそう见えた。
          彼自身は、细面(ほそおもて)の整った容貌(ようぼう)であり、あまりレインとは共通点がない。
          普段、このガルフォート城内の女性达が、上下の别无く热を上げる优しい颜立ちなのに、今は色浓く忧(うれ)いが浮かんでいる。
          レイン、もういい加减にしろと思っていたが――あいにくラルファスの祈りは、同年代の亲友には届かなかった。
          『先程から申し上げる通り、ザーマインの露骨(ろこつ)な诱いに乗るのは得策ではありません。兵を差(さ)し向(む)けるなど、もってのほかですね。ぶっちゃけ、わざわざ相手の罠に头から飞び込むのと同じかと』
          イヤミなほどでっかい声を张り上げるレイン。
          ダグラス王は巨眼に怒りの炎を燃やし、不逊(ふそん)な男を睨(にら)みつけた。
          「贵様っ、その口の利(き)き方はなんのつもりかっ。わしの作戦に异を唱(とな)えるだけでなく、軽んずる気と见える!」
          頬に大きな伤の残るダグラス王が巨体を震わせて怒鸣った。
          文官达の喉が鸣ったが、怒鸣られた当人であるレインは、まるで応えてはいない。それどころかこの状况を楽しむかのように、口元が绽(ほころ)んでいるくらいだ。
          并の胆力(たんりょく)ではないのである。……厚かましい、とも言うかもしれないが。


          IP属地:上海13楼2012-05-28 11:20
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            这段里百度说有不良内容...我只好一句句发了...
            その证拠に、レインはちらっとラルファスの方を见て、にんまりと笑った。
            目で问いかけてみたが、既に友は正面に向き直っていた。
            そして、またしても王に谏言(かんげん)――というか、文句。


            IP属地:上海14楼2012-05-28 11:26
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              「なにっ」
              ダグラス王はギリッと歯を食いしばった。そろそろ忍耐がぶち切れそうである。
              ラルファスには、レインの気が知れなかった。王の気が短いことは、彼もよく知っているはずなのだ。このままでは冗谈ではなく、レインは王に斩られてしまう。
              おまえは、それほどこの决定が不服なのか……
              大陆北方の强国ザーマインが、ルナンを攻め灭ぼしたのは、つい半年前のことである。
              このサンクワールのすぐ北に国境を接し、长年サンクワールと争ってきたルナンも、南下を始めたザーマインの前には、ひとたまりもなかった。
              敌が减って嬉しい、などと喜んではいられない。
              どう考えても次にザーマインが狙うのは、ミュールゲニア大陆南西端の小国、つまりこのサンクワールに他ならない。
              もちろん、ルナンの崩壊とともに、すぐに警戒が强化された。间谍(かんちょう)を防ぐため、旧ルナンの国境には関所が设けられ、私兵を拥(よう)する各上将军(じょうしょうぐん)达は、王の命令で戦いの准备に追われた。
              そして先月の末。予想通り、とうとうレイグル王が、大规模(だいきぼ)な大军を动员した。
              王の定めた指挥官の命令の元、一斉に南下し始める。こうなると、目标はこのサンクワールだと子供でもわかる。
              ダグラス王その人も、敌を奇袭(きしゅう)によって打倒する覚悟を固め、総势七人の上将军(じょうしょうぐん)达に出阵を命じたのだ。
              ラルファス以下の上将军(じょうしょうぐん)达は、その命令に従い、私兵を引き连れて居城から続々とガルフォート城に入城した。
              ――のだが、レインだけはその命令をあっさりと无视し、ただ一人、手ぶらでやってきた。これだけでも厳罚(げんばつ)物である。
              それに加えてこの反抗的な物言い……ラルファスがハラハラするはずである。


              IP属地:上海17楼2012-05-28 11:29
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                「レインよ、わしはおまえを平民にも関わらず取り立て、领地持ちの上将军(じょうしょうぐん)に据えてやった。骑士として最高の地位を与えたのだぞ、それをっ」
                怒りのあまり、王は声が诘まったようだった。対するにレインの返事は軽い。
                「はあ。それについては感谢してますが」
                どう闻いても感谢などしてそうにない。むしろ、相手を马鹿にしているようだ。
                「おのれっ、ぬけぬけと。ならばっ、どうして命令通りにせぬ!」
                はあというため息の音。
                无论、レインが発したものだ。
                「先程から申し上げているはず。相手に劣る兵力で、策も无くぶつかるなど反対ですと。ご理解いただけませんかね」
                やれやれ、という感じで首を振る。
                「少数の部队で大军にぶつかり、华々しく散る――佣兵(ようへい)上がりの私としては、そういう玉砕戦法(ぎょくさいせんぽう)は趣味じゃないですしね」
                「なにが、『趣味じゃないですしね』だ、愚(おろ)か者っ。おまえの意见など、问题ではないわっ」
                そうだそうだっという声が、そこかしこからした。
                サンクワールの军事面を代表する、ラルファス以外の五人の上将军(じょうしょうぐん)达である。レインの评判は、同僚にもすこぶる悪いのだ。もっとも、本人はさっぱり気にしていなかったが。
                「旧ルナンの地は既にザーマイン领、つまり敌地です。そこへノコノコ奇袭(きしゅう)を挂けに行くなど、正気とは思えません」
                「き、贵様っ、それが主君に言う言叶か!」
                ジャギン!
                とうとうダグラス王が剣を鞘走(さやばし)らせた。
                玉座(ぎょくざ)から立ち上がり、大股でレインに近づこうとする。周囲のどよめきの声。その中には何かを期待するような响きも多い。
                さすがに、これを见过ごす訳にはいかない!
                ラルファスは素早くその场から走り出て、盾になるかのようにレインの前に立ちふさがった。
                「お待ちください、陛下っ」
                「どけっ、ラルファス! 今日という今日は勘弁ならんっ」
                「それにしても斩るなど……やりすぎでありましょう!」
                「黙らぬか、ラルファスっ」
                「いいえっ、黙りませぬっ!」
                気迫を込めた大声に、辺りはたちどころに静まりかえった。惊いたのか、王でさえ持ち上げていた剣を下ろした。
                いつもは穏やかなラルファスだが、时として别人のような気骨(きこつ)を见せる事がある。今がまさにそうだった。
                ラルファスは、一歩も退(ひ)かぬ构えで続ける。
                「これから戦いだというのに、お味方を斩ってなんとします。今少しお考えください」
                鼻白(はなじら)んだ王に代わり、反撃は他から来た。
                上将军(じょうしょうぐん)の一人ガノアが、痩(こ)けた頬をひくつかせ、得意気に発言したのだ。
                「ラルファス殿、いかに友を庇(かば)うためとはいえ、その行いはあまりに陛下の意志をないがしろにしすぎでは」
                ――要するに、「黙って见てろ!」と言いたいのだろう。
                横で同僚のギレスがしきりに颔(うなず)いている。こちらは、细身で気取った颜のガノアと対照的に、樽(たる)のように太った男だ。どちらも贵族意识が强く、レインとの仲は最悪である。
                ちょうどいい、レインが斩られて死ねばいいと、密かに热望していたに违いない。ラルファスは贵族も贵族、王家の远縁に当たる大贵族だが、昔からこの二人が嫌いだった。
                「愚(おろ)か者!」
                ぴしりと言い切る。
                「ここでレインが死んだところで、喜ぶのは敌だけなのだぞ。それがわからないのかっ」
                ガノアはむっとしたように何か言い返そうとしたが、ラルファスの瞳を覗き込み、开けた口を闭ざした。ギレスも同様である。
                


                IP属地:上海23楼2012-05-28 11:56
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                  ダグラス王もまた、苦々しい颜付きで剣を鞘(さや)に戻す。今のセリフが、自分に当てつけられたように感じたのだろう。のしのしと玉座(ぎょくざ)に戻り、忌々(いまいま)しそうにラルファスとレインを见た。
                  「まあよい。こやつを斩ったところで、せんないことだ」
                  「そうそう」
                  他人事のように、軽い口调の合いの手を入れるレイン。
                  王の眉间(みけん)に、深々と縦皱(たてじわ)が刻まれた。
                  おまえは黙っていろと、ラルファスはレインを片手で制す。友と并んで跪(ひざまず)いた。
                  「陛下、お闻き届けいただき、ありがとうございます」
                  「……だが、こやつは兵を率(ひき)いず、手ぶらでここへ来た。命令无视は命令无视、今后の事もある。全く罪に问わない訳にはいかんぞ」
                  「それはそうですが」
                  困ったラルファスは隣を窥(うかが)ったが、レインは人ごとのようにこちらを见返しただけだった。自分の事だというのに、まるで真剣さが见受けられない。
                  仕方なくラルファスは、
                  「陛下、それではレインには谨慎(きんしん)をご命令あればいかがでしょう」
                  「谨慎(きんしん)とな」
                  「はい。この戦(いくさ)にはどのみち间に合わないのですから、それが适当かと」
                  「むう……」
                  ダグラス王は浓い颚髭(あごひげ)を擦(さす)り、いかにも渋い颜をした。気に入らないのだが、ラルファスが有力な大贵族のため、无下(むげ)に反対もできないのだった。いくら王とはいえ、笔头贵族(ひっとうきぞく)のラルファスには一目置いている。
                  「いささか、軽い処罚のように思うが」
                  ぶすりとそれだけを言う。
                  「そうでもありません」
                  ラルファスはすかさず、自分でも信じていない事を进言する。
                  「陛下が军を率(ひき)いてザーマインを打ち破り、见事|凯旋(がいせん)なされば、レインも己の不明を悟らずにはいられますまい。我らに対しても面目を失うことになります。名誉ある骑士にとって、これほど辛い処罚はありますまい」
                  骑士の名誉など、レインは鼻歌交じりでそこらに舍てそうだが、ラルファスはあえてそう言った。
                  「むう……それは、な」
                  「でありましょう。陛下、ご决断を」
                  促され、王は砂を噛(か)んだような表情で告げた。
                  「まあよかろう。ではレイン、领地にて谨慎(きんしん)を命じるっ。この程度の処罚に止(とど)め置(お)いた事を、感谢するのだな!」
                  「ははっ。まことに有り难き幸せ!!」
                  素晴らしく明るい声で、レインは形だけは恭(うやうや)しく头を下げた。同じく头を低くしたラルファスが横目で见ると、あろうことか不敌な微笑とともに片眼をつむった。
                  まさか、全部计算ずくだったのか。だとすればしょうがない奴だ。
                  ラルファスとしては、苦笑する他はない。
                  だがまあ、亲友が无事でいてくれるのならそれに越したことはないだろう。この戦いには、どう考えても胜ち目はないだろうから。
                  この时、ガノアとギレスの二人がラルファス达を冷たい目で见つめていたのだが、幸か不幸かラルファスは気付かなかった。


                  IP属地:上海24楼2012-05-28 11:56
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                    その后はさしたる意见も出ず、すぐに军议(ぐんぎ)は解散となった。
                    ラルファスはレインを、城内の自室へと诱った。
                    これから戦いとなれば、下手をすると今生(こんじょう)の别れとなるかもしれない。
                    「一杯やるだろう?」
                    「ああ、いいな」
                    爽(さわ)やかに笑うレイン。
                    私室に入ると、レインがどかりとソファーに座った。长い足を高々と组み、早くもくつろいでいる。
                    ラルファスは、本棚に埋もれたようなキャビネットから、酒の瓶とグラスを取り出し、たっぷりと注(つ)いでやった。それから自分も向かい侧に座る。
                    注(そそ)がれたそれを一息で饮み干し、レインはすぐに自分でおかわりを注(つ)ぐ。いつもながら豪快な饮みっぷりである。ラルファスは自分のグラスをゆっくりと倾けつつ、目を细めて正面の友の颜を眺めた。
                    若々しいその颜は、初めて颜を合わせた顷と何ら変わらない。とにかく、自分と同じ二十五歳にはとても见えない。せいぜい、十八~二十くらいだ。
                    祖先はエルフではないかという噂のある、この国の贵族の血筋であるラルファスも、普通の人间より遥(はる)かに寿命が长く、従って老化も遅いのだが、この友はどういう理由でだろう。
                    思えばレインについて、自分はなにも知らないも同然なのだ。
                    と、そのレインがいきなり言った。
                    「ところで、さっきは悪かったな」
                    「なにがだ? もしかすると谨慎(きんしん)のことか? なんだ、やっぱり私の仲裁(ちゅうさい)を当てにしてたのか」
                    「ああ、予定に入っていた」
                    「それならそれで、教えておいてくれればよかったのだ。私が陛下をお止めしなければ、おまえ、どうする気だったんだ」
                    「おまえは必ず止めてくれると信じてたさ。第一、腹芸(はらげい)ができない奴にそんなこと言えるもんか」
                    「ふむ。それもそうだ」
                    ラルファスは深く纳得した。确かに最初から闻いていたら、自分はおそらく颜に出してしまっていただろう。
                    「しかし、おまえがそこまで戦(いくさ)を避けるとはな。今度の远征(えんせい)、それほど胜算なしと见たか」
                    「このままじゃ小指の先ほどもないな、胜算なんか」
                    実に気安く保证してくれた。
                    「こりゃ、完全にザーマインの罠だぜ。行军(こうぐん)速度がやたらと遅いのも、わざとに决まってるね。ある程度まで懐(ふところ)に诱い込んだ后、袋叩きにするつもりだ」
                    「……そうかもしれないな。だが、それならどうすればよいと思う? 放っておいたところで、彼らはいつかは攻めてくるのではないか」
                    「サンクワール领で迎え讨(う)てばいい。ただ、作戦は俺かおまえが立てて、しかも戦(いくさ)の指挥も俺达のどちらかが取る必要があるが、な」
                    「それは……しかし……」
                    ラルファスは颜をしかめた。
                    ダグラス王は、自らの作戦方针に口を出されることを极度に嫌がる。他のことならまだしも、こと戦いに関する限り、ラルファスの意见ですら闻こうとはしない。
                    「无理だろうが? ならどうしょうもないね、终わったね。単纯に数が物を言うのが、この世界の戦(いくさ)だからな」
                    「――そうだな」
                    最后は妙な言い方だが、レインの言い分はわかる。
                    その分析は、冷彻(れいてつ)だが正しい。ダグラス王は个人的な武力はともかく、大局(たいきょく)を见据(みす)えた戦略を练(ね)る能力は乏しいのだ。どう考えても、先は见えている。
                    「とにかくだ。俺は、陛下のために命を投げ出すような殊胜(しゅしょう)な性格してないしな。柄(がら)じゃないんだ、胜てないけど特攻とか」
                    ラルファスは黙(もく)したままグラスを倾けた。
                    


                    IP属地:上海27楼2012-05-28 12:43
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                      口は悪くとも、少なくとも间违ったことは述べてない。
                      王は、无茶な命令でレインを何度も穷地(きゅうち)に追いやったし、そんな主君に彼が身を舍てて仕える方が不思议だ。
                      第一、元々|佣兵(ようへい)上がりの彼には、この国に対する忠诚心などさしてない。ことによると全くないのかもしれないのだ。
                      しかし、人はそれぞれだ。踏みとどまって戦う愚(おろ)か者がいても、それはそれでいい……
                      レインがじっとラルファスを见る。
                      「……远征(えんせい)に加わるのはやめとけ、と忠告しても无駄だな、その颜つきじゃあ」
                      「ああ。心配してくれるのは嬉しいが」
                      「――别に。色々とたかる相手がいなくなるのが、残念なだけさ」
                      「そうか」
                      ラルファスは静かに笑った。
                      最后に酒の残りをぐっとあおり、レインは思い切りよく立ち上がった。
                      「さて。そろそろ俺は行くぜ。何しろ谨慎(きんしん)だしな」
                      「うん。いいか、くれぐれも気をつけるんだぞ。おまえには无用の言叶かもしれないが」
                      「いや、おまえの方だろ、気をつけないといけないのは」
                      一瞬だけ、薄皮(うすがわ)が剥(は)がれるようにレインが内心の危惧(きぐ)を覗かせたが、たちまち元の平静な表情に戻った。
                      湿った感情など微尘(みじん)も见せず、まるでちょっと中座するだけといった态度で外に出る。ラルファスは彼を见送ろうと、一绪に廊下に出た。
                      「そうだ」
                      立ち去ろうとしたレインは、ふとなにかを思い出したように、
                      「前から闻こうと思ってたんだが、おまえ、ミシェールって女の子を知ってるか? いま十六歳くらいで、贵族の血筋らしいんだが」
                      「ミシェール? さあ……名前以外になにか特徴はないのか」
                      「そうだなあ。こう腰までの长い真っ直ぐな金髪で、ちょっと信じられないようなきれいな颜をしているな……声もいい」
                      「そんな特徴ではちょっとな。贵族は大势いるんだ」
                      言いながら、ラルファスは少なからずあきれた。
                      「しかし、几らなんでも年齢が开きすぎてはいないか。男女のことは、确かに私にはよくわからないが……」
                      「违う违う! 别にそんなんじゃない。そんな趣味ないし。ただ、ちょっと约束がな」
                      「约束?」
                      「いや、知らなきゃいいんだ。会えそうな场所はわかってるしな」
                      レインは手を振ると、何事も无かったように身を翻(ひるがえ)し、歩き去った。
                      最后まで一度も振り返らなかった。


                      IP属地:上海28楼2012-05-28 12:43
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                        ラルファスの视线に気付くと、そのコインを白い手に乗せ、こちらに见せてくれた。
                        「ラルファスさまはレインのお友达だから、特别にお见せしますね。レインにもらったこのコインは、わたくしの宝物なんです」
                        「恐缩(きょうしゅく)です。随分と古い物のようですね。あまり装饰品には见えませんが」
                        それは古いというより、汚いといった方がより正确だった。银货に见えるが、おそろしく汚れた表面に、なにかびっしりと彼の知らない言叶で字が雕(ほ)ってある。
                        「これは魔法のコインなんです」
                        「魔法、ですか」
                        「ええ。约束なので、どんな効果があるのかはお话し出来ませんけれど、つらい时にこのコインを见ていると、わたくし、いつも元気が出るんです。ただ、魔法の効果を発挥するのは、一度だけらしいですけど」
                        魔法の品、つまりマジックアイテムは、今の时代には大変な希少価値(きしょうかち)がある。物に魔力をチャージ出来るルーンマスターが、もうほとんどいないせいだ。
                        だがしかし……ラルファスは嫌な予感がゾワゾワと背中を走るのを感じた。
                        実は魔法の品なら、かつてラルファスも譲(ゆず)られたことがあるのだ。
                        それはまだ、ルナンとの戦いが続いていた顷のことである。王より出撃を命じられたラルファスは、出立(しゅったつ)の前夜レインと饮んでいた际、いい物をやると言われた。
                        「いい物?」
                        「ああ。これは俺が『大陆北部地方』を旅していた顷に、偶然ある遗迹(いせき)で见つけた物だがな……まあ、见てくれ」
                        もったいぶって出されたのは、どう见てもただの石ころだった。ただ、ちょっと绿がかってはいるが。
                        「ふむ? 私にはただの石にしか见えないな」
                        「あー、これだから素人は……。これはな、一度だけしか効果がないが、持ち主の命がヤバくなった时に、その危険を肩代わりしてくれる。ほんとだぜ、嘘じゃない」
                        「ほう!」
                        すっかり感心して念(うな)るラルファス。
                        「用心のために、おまえにやる。今度の戦いに持っていけ。いい、いい。远虑すんな。その代わり、ここはオゴりだぞ」
                        言いながら、レインはもう一度、効果のほどは嘘じゃないぞと念押しした。
                        ラルファスは深く感谢してその魔法の石をもらい、戦地へ赴(おもむ)いた。
                        実际、その石は役に立ったように思えた。
                        激しい戦いの最中、彼の首筋を敌の矢が贯きかけたのだ。が、わずかに首に赤い筋を付けただけで难を逃れることが出来た。その后に例の石が消えていたので、すっかりそのお阴だと思っていたのだ。
                        ところが、帰国してから酒席(しゅせき)に招いて丁重に礼を述べたラルファスに、レインはあっさりと言ってくれた。
                        「ああ。ありゃただの石だ。俺がそこらの道端で拾った、な」
                        「……なんだって」
                        「ああ、怒るなって。何となく心强かったろうが。戦いはほら、気の持ちようが肝心(かんじん)だからなあ。いやー、よかったなぁーハッピーだなー」
                        景気よく背中をぶっ叩かれ、ラルファスは饮んでいた酒を吹き出しかけた――
                        以上のようなシビアな过去を思い出し、ラルファスは思わず喉を鸣らす。
                        幸せそうに微笑んでいる王女に、恐る恐る寻ねてみる。
                        「时に王女様、レインはその银货についてなにか申しておりませんでしたか」
                        王女は何度か瞬(まばた)きを缲り返してから、
                        「そうですね……レインは次元の向こうの世界をも见てきたそうですが、この品に関しては、『大陆北部地方』を旅していた时に、偶然ある遗迹(いせき)で见つけた物――だとか」
                        「そ、そうですかっ」
                        あいつめ!
                        ラルファスの首筋に冷や汗が浮く。
                        苦悩する彼には気付かず、実に嬉しそうに王女が続ける。
                        「レインったら、おかしいんですのよ。わたくしは少しも疑っていないのに、嘘じゃないからなっ、て何度も言うんですもの」
                        「は、はあ……それはおかしいですね……はは、ははは」
                        上品に手を口にやり、王女は微笑んでいるが、ラルファスは少しもおかしくない。
                        今まで饮んだ酒が、全部、汗になって流れてしまった。
                        とにかく、さっさと话题を変えることにする。レインにまた会うことがあれば、その时に问いただそう。
                        「まあどのような効果があるにせよ、一度きりの効力なら、使わずに大事に取っておくべきでしょう」
                        「はい、わたくしもそう思います」
                        「安堵(あんど)しました」
                        「えっ?」
                        「――い、いえ。そう、それより王女様、ミシェールという名前に心当たりがありませんか」
                        话を変える为に何気なく出した名前なのに、王女は惊愕(きょうがく)の表情で腰を浮かせた。
                        「どうしてその名を? レイン!? レインから闻いたのですね」
                        その迫力に负けて颔(うなず)いてしまい、ラルファスは冻りついた。王女がレインに好意を寄せているのなら、ここで女性の名前など出すべきではなかったのだ。
                        ところが予想を裏切り、王女は花が开くように微笑んだ。ほっそりした手を组み合わせて、梦见るように言う。
                        「レインが、ミシェールのことを気にしていたのですね、ラルファスさま」
                        「は……ま、まあ。知らないかと闻かれたんです。それだけで……」
                        王女はろくに闻いてもいないようだった。頬を染め、そうですか、レインが……などと呟(つぶや)いている。完璧に、梦见る乙女の颜になっていた。多分、もはやラルファスなど目に入ってもいまい。
                        やはり私には、女性のことはわからない。
                        ラルファスはしみじみと思った。


                        IP属地:上海30楼2012-05-28 12:45
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                          ――☆――☆――☆――
                          低音の効(き)いた歌声が、风に乗って流れてきていた。
                          ユーリはもう何度目かになるが、石でもぶつけてやろうかと马上から地面をキョロキョロし、结局は任务のためにぐっと堪(こら)えた。
                          青色のブラウスに白いスカートを穿いた、十六、七の少女である。
                          肩先できれいに揃(そろ)えられた手入れのいい黒い髪。リスのようによく动く薄绿の瞳が、胜ち気な光を放っている。大抵の男がかわいいと认める颜立ちだが、今は内心のいらだちのせいで、爱らしさは随分とダウンしてしまっていた。
                          ――もうっ、いつまで下手クソな歌を歌ったら気がすむわけ、あいつっ。おまけに、この寒いのにシャツとズボンしか着てないし。変人よ、変人!
                          この世にこんな音痴(おんち)がいるのか! と度肝(どぎも)を抜かれるほどのひどい歌である。なにやら男と女の恋の物语が歌词になっているようだが、はっきり言ってただの騒音にしか闻こえない。
                          というか、闻いていると、自分の寿命がどんどん缩まっていく気さえする。
                          それくらい、ひどいのだ。
                          ユーリは耳を塞(ふさ)ぎたくなるのを我慢しながら、马で一定の距离を保ち、歌い手の后をつけていた。
                          その男――この国の上将军(じょうしょうぐん)であるところのレインは、ザーマインでは「知られざる天才」と呼ばれている。
                          まあ今は结构有名なので、そう呼ぶ者は少なくなってはいる。にしても、彼が他国で高く评価されていることは间违いない。武名(ぶめい)が天下に轰(とどろ)いているのだ。
                          実际ユーリも、この目で见るまでは大変紧张していたぐらいだ。もはや、そんな気持ちは欠片(かけら)も残っていないが。
                          こんなの、もうさっさと放って帰りたい――そう思うのだけれど、宰相(さいしょう)の命令ともなればそうもいかないのだった。
                          はあっ、とユーリはため息を吐(つ)く。とにかくなにがあろうと、当分は嫌でもこの男についていくしかない。
                          ユーリの気持ちなどにはまるで顿着(とんちゃく)せず、やけに毛并みのよい白马に跨(またが)ったレインは、われ钟(かね)のような声で歌を歌い続ける。
                          周りは商店が建ち并ぶ王都の中心街だというのに、気にする様子はまるでない。大通りを歩く人々の失笑など、完璧に无视しきっている。ある意味では大物かもしれない。
                          ただし、ユーリは一ミリも関わり合いになりたくないが。
                          今も、道行く人に间违っても知り合いだと思われないよう、可能な限りレインと距离をとっている。あんなの他人ですから。
                          と……レインがいきなり杀人的な歌を中止し、何事か呟(つぶや)いた。ユーリが必死で耳をすませたところによると、
                          「どうだ、腹は减ってないか、クリス?」
                          と言っているようだ。
                          うんざりして天を仰いだ。
                          散々同じことを闻かされたので、もう、「クリスって谁よ?谁も居ないじゃん!」などと文句をつけたりしない。
                          ここまでの道中で、クリスとは彼が跨(またが)っている马のことだとわかった。つまりあのレインは、いい歳をして马と话し込む趣味があるらしい。
                          难仪(なんぎ)な奴である。
                          なんであたしが、こんな「使えない噂倒れの奴」を**しなきゃいけないのだろう……
                          いくら话しかけても无駄なのに、レインはしつこく马に话しかけている。と、偶然に决まっているが、马が軽く首を振った。
                          途端に、満足そうに颔(うなず)くレイン。
                          「そうかそうか、メシは后でいいのかクリス」
                          何事もなかったように、また杀人的な歌を歌い始めた。
                          ユーリは思わず、小声で呪い文句を吐いた。こんなに任务が疎(うと)ましく思えたのは、初めての経験である。
                          


                          IP属地:上海31楼2012-05-28 12:48
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                            歌だけの问题ではない。
                            だいたいレインは上将军(じょうしょうぐん)という要职(ようしょく)にあるくせに、そこらの田舎者のごとく、やたらとあちこちの店を覗きまくるのだ。どうも店员が女性(それも美人の)であればあるほど、兴味を示すようだ。
                            必ず、一言二言话しかけるまで动かない。
                            女たらしの头の弱い马鹿ね、こいつっ。
                            ユーリのレインに対する评価は、だだ下がりに下がる一方であり、もはや回复の见込みは有り得なかった。
                            と、急にレインがとある酒场の角を、ひょいと曲がった。
                            まぁたそういう気まぐれを起こすっ。
                            ユーリは距离を诘め、急いで自分もその路地を曲がった。
                            「――! ああっ」
                            危うくレインにぶつかるところだった。
                            とうに先を进んでいるはずの彼は、马を降りて酒场の壁にもたれている。そしてユーリを见るなり、お気楽に片手を上げて见せた。
                            「よう! ちょっと话さないか」
                            しまった! まさか**が……ううん、まだなんとかなるわっ。こいつ、马鹿だし。
                            目まぐるしく颜色を変えた后、ユーリは表情を调节し、大急ぎでうぶな少女のそれに変えた。大きく目を见开いて、
                            「えっ。谁かとお间违えでは、骑士様?」
                            「间违い……ねえ」
                            レインはじろじろとユーリを観察し、わざとらしく肩をすくめた。
                            「ま、间违いでもいいさ。ちょっと马を降りてくれないか。话がしたい」
                            わずかに迷ったが、ここで怪しまれてはいけない。结局、渋々と马を降りた。
                            「それで、なにか?」
                            「いやなに。おまえが『偶然』にも、俺を城からずうっとつけてくる理由が闻きたくてな」
                            偶然、の部分に力を入れて话すレイン。
                            ユーリはぐっと诘まった。ただの抜け作だと思っていたのに、相手はなんとガルフォート城からこっち、ずっと**に気付いていたらしい。それでは偶然で片づけるのは无理がある。
                            や、ヤバいかも……ユーリは汗ジトで、次なるごまかしを模索(もさく)した。
                            「え、えーと……こうなったら正直に申し上げますけど、あたし、実は一目见て骑士様に心を夺われまして、フラフラと后をお慕(した)いしていたんですの」
                            歯が浮くのを我慢して、ユーリは一気に卷(まく)し立てる。レインが、ほおっ、俺に一目惚(ひとめぼ)れねえと言って笑った。ユーリもお追従(ついしょう)でえへへへ、と笑った。
                            ひとしきり二人で笑った后、ぴたりとレインが笑い止み、断言した。
                            「嘘つけ、こらっ」
                            「ええっ。本当ですよおっ。その真っ黒な格好がなんともはや」
                            「まだ言うか、こいつは。いいか、确かに俺はかっこいい」
                            自意识过剰(じいしきかじょう)の马鹿、とすかさずユーリは内心で评価に加えた。
                            「だからといってなあ、そんな见え透いた言い訳は纳得できないねっ」
                            「え~、ほんとですってばっ。私はあなた様にすっかり……」
                            パッとレインが片手を上げ、ユーリは口を闭ざした。わざとらしいため息を吐(つ)いた后、レインはいきなり核心をついた。
                            「あくまでシラを切るなら、しょうがないから俺が言ってやろう。おまえの正体は、ザーマインの间谍(かんちょう)だろう?正直に认めろよ」
                            バレてるっ!
                            そう思った瞬间、ユーリはスカートの后ろに隠した短剣に手を伸ばし、后方へ跳跃(ちょうやく)しようとした。逃げ足の速さなら自信があるし、仮に戦いになったとしても、そこらの并の骑士よりは遥(はる)かに戦えるつもりだ。ザーマインで受けた训练は伊达(だて)ではない。
                            とにかくユーリは、今の今までそう思っていた。
                            ――だが、あいにく跳跃(ちょうやく)するどころではなかった。
                            


                            IP属地:上海32楼2012-05-28 12:48
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                              微(かす)かな剣风と共に、黒影が残像を生じつつ动く。
                              光の轨迹(きせき)が鲜やかに半円を描き、青き光芒(こうぼう)がユーリの视界をふさぐ。
                              気がついたら、动けなくなっていた。
                              手を腰の方へ伸ばすか伸ばさないかのうちに、抜く手も见えない速さで、喉元に剣を突きつけられていたのである。
                              それもただの长剣ではない。光り辉く魔力のオーラを放つ、魔法剣……魔剣である。
                              その刀身には、うねるように青白い光が乱舞(らんぶ)し、ブゥゥゥゥゥゥンという多数の羽虫が立てるような音が闻こえる。
                              物凄くよく切れそうだった。とにかく自分の身体で试すのは绝対に嫌だ。
                              ゴクリ、とユーリの喉が鸣った。
                              「う、嘘っ。なんて速いの」
                              「当然だ、俺は天才だぜ」
                              片手でえらそうに髪をかきあげるレイン。无性にむかつくが、今は反论できない。
                              加えてクリスとかいう名の駄马(だば)が、こっちを马鹿にしたように见るのも腹が立つ。
                              まあ、これは偶然だろうが。
                              「な、なんで……」
                              「なんでバレたかって? そりゃおまえ、俺は人の気配には敏感だから**なんて通じないし、それにおまえの足の运びは、普通の娘とは思えないしな」
                              「ううっ」
                              「ふっ。まあこの俺の目を误魔化(ごまか)すには、二十年早かったってことだ」
                              言いたい放题である。ユーリは殴ってやりたくなったが、今はそんなどころではない上に、命を无くすおそれすらあった。
                              间谍(かんちょう)というのはどこの国でも嫌われ者なのだ。捕まればまず死刑だ。それどころか、たいがいは见つかったその场で斩り杀されることになる。つまり、非常にヤバイ。
                              大変だっ。あたしが死んだら、妹の面倒は谁がみるのっ。なんとかならないかしら、なんとか!
                              助けてって頼めば……ああっ、でもでも、代わりに抱かせろとか言われたらどうしよう。こいつ、头が弱くてスケベそうだし。
                              ユーリが闷々(もんもん)としていると、レインがのんびりとした口调で问うた。
                              「それで。おまえ、名前は?」
                              「……ユーリです」
                              「ユーリか。まあまあかな。ちょっと雰囲気がきつそうなのがアレだが」
                              大きなお世话だっ、とユーリが思っていると、レインは続けて年齢も寻ねてきた。
                              今更隠しても仕方ないので、十六歳、と魔剣から目を离さずに答える。レインは颚(あご)を抚(な)でつつ、残念だが守备范囲外だなあ、などとぬかした。心配せずとも、ユーリだってお断りである。
                              「まあ、今度からもうちょい短めのスカートをはくようにな。股下スレスレのヤツをな」
                              あっさりとレインが魔剣を鞘(さや)に収めた。
                              ユーリがポカンとしていると、鼻歌を歌いながら自分の马の方を向く。
                              「クリス、もう少しでメシにするからな」
                              「……ちょっと」
                              「そうだ、なんなら町外れの宿屋でぱーっといくか、クリス」
                              「……あのさあ」
                              「そうかっ。おまえも賛成か。よしよし、腹一杯食わせてやるからなっ」
                              ユーリは大きく息を吸い込み、全力で怒鸣った。
                              「こらあぁぁっ! 马と话してないで、あたしの话を闻けえっ!」
                              「おおっ」
                              ぎょっとしたようにレインが振り向く。
                              黒瞳(くろめ)が大きく见开かれていた。
                              「おまえなあ、急にでっかい声だすなよ。俺は美声を好むんだぞ」
                              「なにが美声よっ。あ、あんたねえっ、人がいつ斩られるかと身が细る思いで震えているのに、呑気に马と话してんじゃないわよっ」
                              「いつ震えてたんだよ、いつ。しぶとく逃げるチャンスを窥(うかが)っていたくせに。俺から逃げようなんて五十年早いってのに」
                              憎たらしい口调でレインが言い返す。
                              


                              IP属地:上海33楼2012-05-28 12:48
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