第一章 レイン、谨慎(きんしん)になる
サンクワールの主城(しゅじょう)、ガルフォート城。
真っ赤な绒毯(じゅうたん)を敷(し)き诘(つ)めた谒见(えっけん)の间(ま)に、大势の重臣达が集まっていた。
今日は军议(ぐんぎ)である。
奥の一段高い玉座(ぎょくざ)に腰を据(す)えたダグラス王の前に、それぞれ定められた地位に従い、文官と武官が左右に并んでいる。
そのほとんどが金髪に碧眼(へきがん)……つまり贵族の者达だ。
ただ、王の至近に跪(ひざまず)くレインのみが、つやつやした黒髪に、黒い瞳といった外见的特徴である。今日はまた、一段と悪戯(いたずら)っぽく瞳が光っている。
この男は、いついかなる场面においても、不敌かつふてぶてしい表情に见えるのだが、ご多分に泄(も)れず、今もそんな颜である。
少なくとも、ラルファスにはそう见えた。
彼自身は、细面(ほそおもて)の整った容貌(ようぼう)であり、あまりレインとは共通点がない。
普段、このガルフォート城内の女性达が、上下の别无く热を上げる优しい颜立ちなのに、今は色浓く忧(うれ)いが浮かんでいる。
レイン、もういい加减にしろと思っていたが――あいにくラルファスの祈りは、同年代の亲友には届かなかった。
『先程から申し上げる通り、ザーマインの露骨(ろこつ)な诱いに乗るのは得策ではありません。兵を差(さ)し向(む)けるなど、もってのほかですね。ぶっちゃけ、わざわざ相手の罠に头から飞び込むのと同じかと』
イヤミなほどでっかい声を张り上げるレイン。
ダグラス王は巨眼に怒りの炎を燃やし、不逊(ふそん)な男を睨(にら)みつけた。
「贵様っ、その口の利(き)き方はなんのつもりかっ。わしの作戦に异を唱(とな)えるだけでなく、軽んずる気と见える!」
頬に大きな伤の残るダグラス王が巨体を震わせて怒鸣った。
文官达の喉が鸣ったが、怒鸣られた当人であるレインは、まるで応えてはいない。それどころかこの状况を楽しむかのように、口元が绽(ほころ)んでいるくらいだ。
并の胆力(たんりょく)ではないのである。……厚かましい、とも言うかもしれないが。