｛何かが有り、何者かが、何故にか、怒り恨んでいる、それを明からかにしない限り、剣には力が宿らず、モノノ怪は斬れん。｝

今行きますよ…だが、少々やっかいですよ。

心の裡が問題なれば、他人がどうこうできる訳もない。

落ち着いて、海座頭が見せるのは只の幻、悪い夢を見たに過ぎない。加世さんの"真"は何も変わらない。

問うがいい、答えよう。

私が本当に恐ろしいこと…それは、この世の果てには形も真も理もない世界が、ただ存在しているということ…それを知るのが、恐い。

アヤカシが集う物の怪の海、その海へこの船を差し向けた理由、お聞かせ願いたく。

…震えていますね。そこまで貴方を恐怖させながら、この海にまで来なくてはならなかった、その理由…海座頭、問うがいい！

｛モノノ怪の『形』、来たり。｝あのモノノ怪の"真"と"理"、お聞かせ願たく候。

【モノノ怪の『形』、来たれり。】

【憎しと思う事、悔しと思う事、決して赦せぬと思う事。それが何だと己が己に問えば、それは、底無しの海に身を投げるも同じ。果て無しの海に船出するも同じ。決して見てはならぬ。決して、考えてはならぬ。暗き海、己が内にありながら、決して覗いてはならぬ場所。】

【この海をずっと漂い、朽ちてモノノ怪になりたくないのなら】
｛この海をさ迷い、朽ちてモノノ怪になりたくないのなら｝

…そうか…では…

【妹君がモノノ怪なのでは、ないよだ。】
｛…どうやら…妹君がモノノ怪そのもの…というわけでもない様ですね。｝

今度は測るだけでなく、手繰り寄せて見ようかと、モノノ怪の『真』を話して、いただけますか？50年前のこのウツロ船と妹君に纏わる毎々を。