噎せ返るほど甘美な芳香
目に痛いほど鲜烈な色彩
昨夜の大风で桂花は大地を覆う毛毡と化していた。
馥郁と言うには豊かに过ぎる香りに陆机は颜を颦める。そのまま暂くは袖口で口元を押さえていたが、気にならなくなると袖を降ろし周囲に目を走らせた。
「云¨¨」
威圧感のある声に精一杯の优しさを込めて陆机は弟を呼ぶ。踏みしめた履の下で小さな桂花が溃れているのを感じながら。
昨年、国が灭びた。
北方を强大な国に接しながらも国内がまとまるどころか、暴君が君临し佞臣が侍るといった自壊の道を歩み続けていた状态から考えれば长く保てたとも言えるが、悲壮な覚悟で戦いに挑まなければならなかった者にとっては悲剧そのものである。
陆机の军も晋の龙骧将军・王浚率いる军に为す术もなく打ち破られ、长兄の陆晏は夷道で次兄の陆景は楽郷で戦死を遂げた。
西陵で败戦の忧き目に遭いながら何とか生き延びた陆机は、信陵にいた陆云の安否を気遣いつつも兄达の遗体を故郷に运ばなければならず心残りのまま帰还。そして陆云が故郷に戻って来たのがつい先月―――戦からは一年以上経ってからのことである。
「云、何処にいるのだ?」
兄达の死を知った陆云の悲しみは寻常ではなく、最も西方に位置していた自分が晋军を止められなかった所为なのだと强い自责の念に駆られている。
大风で残らず散らされた非力な桂花を自身に准えて、无情感に袭われて陆云が変な気を起こすのではないかと陆机は気が気ではなかった。
控えめでありながらも芯の强さを持つ陆云は、时に强情で激しい―――
「¨¨兄上?」
振り返った陆云の睑は少し肿れていた。よく见れば頬にも涙の痕らしきものが见える。
「何を¨¨しているのだ?」
桂花と溶け合うほどに鲜やかな夕阳に照らされる中、置き去りにされた迷い子のように大地に座り込む様子は穏やかならぬものがある。
陆机は駆け寄り陆云の両手を掴む。陆云の荒れた指先が败戦后の流浪を感じさせて胸が痛んだが、手の中には何も握られていないのを确认すると、有无を言わさぬ势いで懐をまさぐった。
「なっ¨何をなさるのですっ!?」
惊きに目を见开き―――しかしほのかに頬を染めた陆云の表情に気付いた时、陆机は身体に热情が走るのを感じた。
「云が刃か毒を持っているのではないかと¨¨」
些か唐突に陆机は口を开き、慌てた様子で両手を陆云から离した。
「兄上は私が自害するとお思いだったのですか?」
「痛ましいほどに意気消沈していたから、ふとした切っ挂けで¨¨と不安でならなかった」
「いつも自信に溢れておられる兄上でも不安になることがあるのですね」
くすりと笑みを零した陆云を、陆机は反射的に平手打った。
「谁の所为だと思っているんだ!この一年¨¨いや别れて暮らすようになってから一日たりともお前のことを考えない日はなかったというのにっ!」
「兄上¨¨」
扑たれて赤くなった陆云の頬を涙が伝う。
「やっと兄上に再会できたのです。命を绝つようなことなど致しません。ただ、风に吹かれて飞ばされ、地に漂着しては踏み溃される小さな桂花が自分に重なり、気が付けば此処におりました」
「桂花は色も香りも强すぎる。云には似ていない¨¨」
陆机は陆云の頬を抚でると、彼の颚を引き寄せて唇を降らせた。
「―――兄上っ¨んっ¨¨」
二人は崩れるように桂花の毛毡の上に倒れ込んだ。势いで舞い上がった桂花が夕阳に反射し砂金の如くの煌めきを発する。
その辉きに我に返った陆云が兄を押し止めた。
「なりませんっ、我々は同じ血を分けた兄弟なのですよ¨¨」
「なればこそ。兄弟达の中でも云は幼き顷より共に在り、我が半身と思っていた。心ならずも引き离されてしまった时は自分が自分ではない心地だった。それがようやく再会できたとなれば一つになるのが道理だろう」
当初は涌き上がる情欲に戸惑いを覚えていた陆机だったが、自身の言叶に力を得、もはや迷いはなかった。
「¨¨私の想いも兄上と同じです。けれども先の戦で陆氏の栄誉を伤つけ、さらに罪を犯すのは亡き父上や兄上に申し訳が立た¨¨」
陆云が最后まで言叶を発しないうちに、陆机は陆云の唇を指先で押さえる。
「呉国が灭びた时に陆氏の栄华も终わりを告げた。――义存并済、胡楽之悦(今我々が为すべきは共に生き残ることのみ、他に何の楽しみがあろうか)――これは些かの虚饰もない本心だ」
それは先日陆机が陆云に赠った诗の一节だった。伤心の陆云を慰めようと连ねられた四言诗に込められた兄の真情を思い返す度に、だが陆云は嬉しさと共に胸を缔め付けられるような切なさを覚えていた。
「どうして我々は兄弟として生を享けてしまったのでしょう¨¨これほどに兄上のことを爱しているというのに¨¨」
「马鹿だな、云は¨¨」
陆机はゆっくりと陆云を抱きしめた。
「兄弟だからこそ深く互いを知り、深く爱せるのではないか。このまま云と手を携え年老いて行ければこれに胜る幸福はない。そうであろう?」
「はい、兄上¨¨兄上がおられる限り私はこの世におりたいと思います」
「―――云っ¨¨」
立ち上る馥々たる芳香
差し込む夕阳に煌めく色彩
交わされたくちづけは桂花の香りよりも甘く、花弁の色よりも艶やかで¨¨
二人は愉悦と恍惚の波间に身も心も预けた。
其实这篇是兄弟CP。。。
目に痛いほど鲜烈な色彩
昨夜の大风で桂花は大地を覆う毛毡と化していた。
馥郁と言うには豊かに过ぎる香りに陆机は颜を颦める。そのまま暂くは袖口で口元を押さえていたが、気にならなくなると袖を降ろし周囲に目を走らせた。
「云¨¨」
威圧感のある声に精一杯の优しさを込めて陆机は弟を呼ぶ。踏みしめた履の下で小さな桂花が溃れているのを感じながら。
昨年、国が灭びた。
北方を强大な国に接しながらも国内がまとまるどころか、暴君が君临し佞臣が侍るといった自壊の道を歩み続けていた状态から考えれば长く保てたとも言えるが、悲壮な覚悟で戦いに挑まなければならなかった者にとっては悲剧そのものである。
陆机の军も晋の龙骧将军・王浚率いる军に为す术もなく打ち破られ、长兄の陆晏は夷道で次兄の陆景は楽郷で戦死を遂げた。
西陵で败戦の忧き目に遭いながら何とか生き延びた陆机は、信陵にいた陆云の安否を気遣いつつも兄达の遗体を故郷に运ばなければならず心残りのまま帰还。そして陆云が故郷に戻って来たのがつい先月―――戦からは一年以上経ってからのことである。
「云、何処にいるのだ?」
兄达の死を知った陆云の悲しみは寻常ではなく、最も西方に位置していた自分が晋军を止められなかった所为なのだと强い自责の念に駆られている。
大风で残らず散らされた非力な桂花を自身に准えて、无情感に袭われて陆云が変な気を起こすのではないかと陆机は気が気ではなかった。
控えめでありながらも芯の强さを持つ陆云は、时に强情で激しい―――
「¨¨兄上?」
振り返った陆云の睑は少し肿れていた。よく见れば頬にも涙の痕らしきものが见える。
「何を¨¨しているのだ?」
桂花と溶け合うほどに鲜やかな夕阳に照らされる中、置き去りにされた迷い子のように大地に座り込む様子は穏やかならぬものがある。
陆机は駆け寄り陆云の両手を掴む。陆云の荒れた指先が败戦后の流浪を感じさせて胸が痛んだが、手の中には何も握られていないのを确认すると、有无を言わさぬ势いで懐をまさぐった。
「なっ¨何をなさるのですっ!?」
惊きに目を见开き―――しかしほのかに頬を染めた陆云の表情に気付いた时、陆机は身体に热情が走るのを感じた。
「云が刃か毒を持っているのではないかと¨¨」
些か唐突に陆机は口を开き、慌てた様子で両手を陆云から离した。
「兄上は私が自害するとお思いだったのですか?」
「痛ましいほどに意気消沈していたから、ふとした切っ挂けで¨¨と不安でならなかった」
「いつも自信に溢れておられる兄上でも不安になることがあるのですね」
くすりと笑みを零した陆云を、陆机は反射的に平手打った。
「谁の所为だと思っているんだ!この一年¨¨いや别れて暮らすようになってから一日たりともお前のことを考えない日はなかったというのにっ!」
「兄上¨¨」
扑たれて赤くなった陆云の頬を涙が伝う。
「やっと兄上に再会できたのです。命を绝つようなことなど致しません。ただ、风に吹かれて飞ばされ、地に漂着しては踏み溃される小さな桂花が自分に重なり、気が付けば此処におりました」
「桂花は色も香りも强すぎる。云には似ていない¨¨」
陆机は陆云の頬を抚でると、彼の颚を引き寄せて唇を降らせた。
「―――兄上っ¨んっ¨¨」
二人は崩れるように桂花の毛毡の上に倒れ込んだ。势いで舞い上がった桂花が夕阳に反射し砂金の如くの煌めきを発する。
その辉きに我に返った陆云が兄を押し止めた。
「なりませんっ、我々は同じ血を分けた兄弟なのですよ¨¨」
「なればこそ。兄弟达の中でも云は幼き顷より共に在り、我が半身と思っていた。心ならずも引き离されてしまった时は自分が自分ではない心地だった。それがようやく再会できたとなれば一つになるのが道理だろう」
当初は涌き上がる情欲に戸惑いを覚えていた陆机だったが、自身の言叶に力を得、もはや迷いはなかった。
「¨¨私の想いも兄上と同じです。けれども先の戦で陆氏の栄誉を伤つけ、さらに罪を犯すのは亡き父上や兄上に申し訳が立た¨¨」
陆云が最后まで言叶を発しないうちに、陆机は陆云の唇を指先で押さえる。
「呉国が灭びた时に陆氏の栄华も终わりを告げた。――义存并済、胡楽之悦(今我々が为すべきは共に生き残ることのみ、他に何の楽しみがあろうか)――これは些かの虚饰もない本心だ」
それは先日陆机が陆云に赠った诗の一节だった。伤心の陆云を慰めようと连ねられた四言诗に込められた兄の真情を思い返す度に、だが陆云は嬉しさと共に胸を缔め付けられるような切なさを覚えていた。
「どうして我々は兄弟として生を享けてしまったのでしょう¨¨これほどに兄上のことを爱しているというのに¨¨」
「马鹿だな、云は¨¨」
陆机はゆっくりと陆云を抱きしめた。
「兄弟だからこそ深く互いを知り、深く爱せるのではないか。このまま云と手を携え年老いて行ければこれに胜る幸福はない。そうであろう?」
「はい、兄上¨¨兄上がおられる限り私はこの世におりたいと思います」
「―――云っ¨¨」
立ち上る馥々たる芳香
差し込む夕阳に煌めく色彩
交わされたくちづけは桂花の香りよりも甘く、花弁の色よりも艶やかで¨¨
二人は愉悦と恍惚の波间に身も心も预けた。
其实这篇是兄弟CP。。。