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回复:【原版】日本人气幻想小说レイン

只看楼主收藏回复


――☆――☆――☆――
レインが城主を务める、コートクレアス城の中庭――
一定の间隔を置いて设けられている四角い花坛の间を、ユーリは弾むような足取りで散歩していた。
ここへ来てから十日以上が経(た)っていたが、ユーリは违和感なく、城内に溶け込んでいた。
というのも、ここの骑士达はレインと同じく佣兵(ようへい)上がりが多く、坚苦しいのが苦手なユーリと似たような性格の者がほとんどで、驯染(なじ)みやすかったからだ。
まあ、セノアのような难仪(なんぎ)な副官もいるにはいる。だがユーリは、残るもう一人の副官レニの下につけられたので、直接彼女から被害を受けることはない。
レニも大変好意的だし、ユーリとしては特に文句もなかった。
――レインが寝てばかりいることを除(のぞ)いては。
そう、あのレインは帰ってくるなり自室に闭じこもり、めったに外へ出てこないのだ。たまに颜を见せたかと思うと、食事をとるか酒を饮むかのどちらかで、见ていて腹が立つ。
今はそんな时ではないでしょっ、と思うのに。おかしな话だが、ユーリはレインがザーマインに対してなんの手も打たないことにイライラしていた。
これについてはセノアも同じ考えらしく、彼を见る目が日に日に愤(いきどお)りの色を増している。そのうちまた、豪快に切れるかもしれない。
ただ意外なのは、セノアは别として、ここの骑士达はみなレインを信頼しているらしいことだ。人気もある。
今回の戦を避けたレインの判断にしても、「それでよかった」と賛同する者がほとんどだった。元|佣兵(ようへい)がほとんどを占めるここの骑士达は、胜てない戦(いくさ)は避けるのが当然という意识があるのかもしれない。ユーリもそれは、わからないではないのだが……
「ったく、人に気を揉(も)ませる奴よねえ」
独りごちたユーリは、颜をしかめて足下の石ころを蹴っ飞ばした。
「うん?」
どこからか歓声が闻こえた。
そちらの方へ目をやると、城壁のすぐ侧(そば)に、骑士达の集団が见えた。どうやら円形になって、何事かやっているようである。
好奇心の强いユーリは、すかさずそちらへ足を向けた。
「あっ……レニ队长」
人の轮の中心には、通常よりやや短めの、二振りの剣を手にしたレニの姿があった。部下の骑士と向き合っている。
どうやら剣の训练中であるらしい。
「へえ。二刀流なんだ、レニ队长」
少し感心して、人垣の外から见物する。
レニの相手をしている部下は、肩で息をしていて、なにか苦しそうだった。信じがたいが、どうもレニが押しているようだ。
ジリッ。
意を决したように铠(よろい)姿の骑士が动く。身体を低くしてレニに近づき、しばしためらうようにレニを観察している。だが、レニはぼうっと立っているだけだ。
いける、と思ったのかどうか、その骑士はなかなか侮(あなど)れない速さで手にした剣をレニの首筋に叩きつけた。
キィィン!
澄(す)んだ金属音。
必杀の一撃は、レニの剣があっさり止めていた。そしてもう一本の剣は、ピタリと部下の喉元に突きつけられている。
うわっ、今の、见えなかったじゃない! この人、强かったんだぁ……
ユーリはびっくりして、レニをかなり见直した。ただの温厚な副官だと思っていたが、ちゃんと実力もあったようだ。
「よし、これで一巡したね。もうお昼だし、今日はここまでにしとくよ。では、解散っ」
レニが、短い金髪のわずかな乱れを直しつつ、号令する。
「うぃ~すっ」
いかにも佣兵(ようへい)くさく唱和(しょうわ)し、元|佣兵(ようへい)达はたちまち散っていった。



IP属地:上海81楼2012-05-29 10:59
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    「レニ队长!」
    ユーリが小走りに駆けて行くと、パッと颜を上げたレニが、満面の笑颜で迎えてくれた。
    「わっ、ユーリちゃん! 见ててくれたの?」
    「ええ。队长って、强いんですねえ。感心しました」
    「い、いやあぁ。それほどでも」
    レニがデレデレと笑って赤面した。
    と、さも名案っといった感じで手を叩く。
    「そうだ、これから食事だけど、どうかな、一绪に。余分にあるしさっ」
    「いただきます!」
    丁度お腹がすいていたユーリは、元気に即答した。ただメシは断らない主义だ。
    「ほんとにいいんですか?」
    いくつか置いてあった木制のベンチの一つに、二人は腰をおろした。
    礼仪とはいえ、とりあえずは言うべきセリフである。
    で、同じベンチに座ったものの、ユーリはさりげなくレニとの距离を空(あ)けた。
    「今日はね、サンドイッチなんだ」
    なにがそんなに嬉しいのか、レニはニコニコと用意していた包みを広げる。割に大きな弁当箱を広げると、十分すぎる量のサンドイッチが诘めてあった。
    「わあっ。では、远虑なく」
    「どうぞ、どうぞ」
    言叶通り、早速手を伸ばしてつまむ。
    「おいしいぃ!」
    肉と野菜を挟んであったが、结构いけた。ユーリは頬に両手をあて、感激を表明した。
    「ははは。どんどん食べてよ」
    「ありがとうございますぅ」
    しばらく无心で食事に専念する。
    人心地がついたところで、微笑むレニにふと疑问に思ったことを寻ねた。
    「そう言えば、さっきの训练って、レイン将军は参加しないんですか」
    「ん~? まあ、年に一、二回くらいかな、相手してくれるのは。普段は逃げてばかりだよ。めんどくさいからって」
    ユーリの瞳を照れたように见返し、レニはつっと肩をすくめた。
    なにかあきらめたような仕草である。
    「いかにも、あの人らしいですね。……ちょっと讯(き)きたいんですけど、レニ队长とレイン将军って、どっちが强いんですか」
    质问したとたん、レニが軽く喷(ふ)きだした。なにを言うんだい、といった颜をする。
    「仆なんか将军の足下にも及ばないよ。お话にもならない……比べること自体が间违ってるってば」
    「へえ……そんなに强いんですか、将军は」
    「? ユーリちゃん、将军とは知り合いじゃなかったっけ」
    不思议そうにレニ。
    「えっ。あ、いえ、お互いの父亲同士は知り合いだけど、あたしと将军は别に……」
    冷や汗をかきつつ弁解する。
    幸い、レニはすぐに纳得してくれた。それどころか、一段と嬉しそうな表情になった。
    「へええ、あ、そう。へへへ」
    「あのう?」
    「あ、ごめんごめん。えっと、将军が强いかだね? そりゃもう、强いよ~。自分で吹きまくっている以上だね」
    思わず目を见开くユーリである。
    「ほんとに――ですかぁ?」
    「うん。とにかく仆、なにがあろうと绝対に、あの人の敌にだけは回りたくないね。まだザーマインの相手する方がましだな」
    眉を寄せて、ブルッと震える。実感がこもっていた。
    あいつ、そんなに凄いんだ……ユーリは内心で念(うな)った。
    しみじみした囗调でレニが続ける。
    「案外あの人なら、ドラゴンでも倒せるんじゃないかな。倒した人がいるなんて闻いたことないけど、将军ならやれそうだ」
    おいおい、それはないわよ、とユーリは心中で突っ込みを入れた。
    地上のあらゆる种族の中でも、ドラゴンはぶっちぎりの强さを夸っている。
    その魔力、魔力无効化のフィールド、强力なブレス、圧倒的な筋力、どれをとっても他の生物には太刀打ちできはしない。まさに无敌だ。
    


    IP属地:上海82楼2012-05-29 10:59
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      2025-05-15 07:55:56
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      昔から、「一対一でドラゴンを倒した者は、彼(か)の者が持つ力と魔力を手に入れることができる」という伝说がある。
      それを真に受けて、太古の昔より、この最强の魔獣(まじゅう)に挑戦する者は后を绝たない。
      しかし、実际に倒せた者は风の噂にも闻かない。ドラゴンスレイヤーは、吟游(ぎんゆう)诗人の歌う、歌にしか存在しないのだ。
      もしドラゴンを倒せる者がいるとすれば、それは千年以上も前に灭んだ「魔人(まじん)」と呼ばれる超种族くらいだろう。
      人间と変わらない外见の、しかしすさまじい魔力と体力を持つあの魔人(まじん)达なら、あるいは魔獣(まじゅう)ですら敌ではないかもしれない。彼らは千年以上前に、人间达とこの世界の覇権(はけん)を争って灭亡しているので、真伪は不明だが。
      信じられませ~ん、てなユーリの表情が见え见えだったのか、レニは苦笑した。
      「信じがたいのは无理ないけどね。そのうちユーリちゃんにもわかるよ、あの人の常识外れの强さが。人间离れしてるから、将军は」
      「はあ……」
      ――そりゃ、强いのは否定しないんだけどぉ。
      だけど、あたしは知ってるしなあ……ユーリは微(かす)かに首を振る。
      レニがどう言おうと、世の中、上には上がいるのだ。ザーマインにいたユーリは、そんなとんでもない强者をその目で见ている。记忆を探るまでもなく、长い银髪をなびかせた王の姿を思い出す。
      処刑场に集められた无数の罪人、そして、彼らを前に立つレイグル王。
      修练(しゅうれん)のつもりだったのだろうか、アレは。
      とにかく、数十人もいた罪人达は、一人も残さず血の海に沈んだ。まさに……化け物だ。
      どれほどレインが强くても、あの方には胜てない……あたしはそれがわかってるもん。
      どんよりとそう考えていると、いきなり手にしたサンドイッチが消えた。
      「はい?」
      呆然としたのも束の间。
      レニとユーリの间に、马の长い首がぬっと突き出した。モシャモシャと口を动かしながら、やけに毛并みのいいその白马は、さらに弁当箱に口を突っ込み、残りのサンドイッチをさらった。
      すかさず、悠々(ゆうゆう)と咀嚼(そしゃく)する音。
      「こ、この马鹿うまっ。あんた、クリスねっ」
      そうだよ、とは言わなかったが、クリスは横目で嘲(あざけ)るようにユーリを见た。
      ……まあ、偶然に决まっているが。
      「くっ――なんか、すっごいむかつくっ」
      「やあ、クリス。相変わらずなんでも食べるなあ。马とは思えないよ。これも食べる?」
      レニが自分の手に持っていた一切れを差し出す。ささっとクリスがそれをさらい、たちまちサンドイッチは品切れになった。
      「ちょっと队长! なにを甘やかしているんですっ。第一、なんで马が繋(つな)がれずにこんなとこにいるんですかっ」
      「え。あ、ああ。クリスは厩舎(きゅうしゃ)に繋(つな)ぐなって、将军の命令なんだよ。だから、いつも好き胜手に歩き回ってるんだ」
      「なんでそんな命令を!」
      「さあ」
      レニがのほほんと首を倾(かし)げる。本人に悪気はないのだろうが、その「仆、わかんない」てな颜に、さらにむかっ腹の立つユーリである。
      「将军の言い分ではさ、クリスは俺の相棒でしかもペガサスだから、繋(つな)ぐのは失礼だってことだけど?でも、ペガサスなんてほんとにいるのかなあ」
      「いるのかなあじゃありませんよっ」
      だんっ、とベンチの背もたれをぶったたくと、ピシッとレニは背筋を伸ばした。
      「ご、ごめん! そうだよね、ハハハ」
      じろっと队长を睨(にら)むユーリ。そのまま、すっくりと立ち上がった。
      腰に両手を当て、なめた马を眼光で射抜(いぬ)く。
      「クリスっ。人様の昼ご饭を食べちゃった罪は重いわよっ。わかってんのっ」
      全然相手にされなかった。
      クリスは鼻から大きく息を吐き、そこらをざっと见渡す仕草をすると、もうメシは出てこないと见极めたのか、さっさとユーリに尻を向けた。
      谁がなんと言おうと偶然に相违(そうい)ないが、フサフサしたクリスの尾がユーリの頬を势いよく叩く。そしてそのまま、とっとこ駆けていってしまった。
      「くっ。なんてヤな马。主人に似たのかしら」
      地団駄(じだんだ)を踏むユーリに、レニが消え入りそうな声で言った。
      「でも、ユーリちゃんはなにも损してないと思うんだけど……」
      ユーリはキッパリとその意见を无视した。


      IP属地:上海83楼2012-05-29 10:59
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        中间为什么有这么多抽掉的楼...


        IP属地:上海84楼2012-05-29 11:19
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          哪位吧主清插楼吧...?


          IP属地:上海85楼2012-05-29 11:21
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            清毛楼 估计没几个打算看这小说的
            我还等着硬液病君通报原作者呢



            IP属地:山东86楼2012-05-29 11:32
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              @viviano3o4
              现在都有只看楼主功能了 没必要青楼了敏姐
              


              IP属地:山东87楼2012-05-29 11:33
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                是的,没打算看


                IP属地:广东来自掌上百度88楼2012-05-29 11:57
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                  2025-05-15 07:49:56
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                  その顷、城の最上阶にある自室のベッドに横になり、レインは天井を见つめていた。
                  部屋の中はとりたてて特徴はなく、城主の部屋にしては质素である。ベッドもごく普通の物で、贵族が好む天盖(てんがい)つきの派手な物ではない。
                  部屋の真ん中には丸テーブルがあり、その上にはおびただしい数の酒瓶が置かれていた。
                  全てレインが饮み干したのだ。
                  「はあ、やれやれ」
                  レインはいきなりため息を吐(つ)くと、もう何度も読んだ手纸をもう一度広げた。レインが城に帰ると同时に、彼を追いかけるようにして届いたラルファスからの手纸である。
                  仰向けに寝そべったまま、その短い手纸を読む。
                  「むうっ」
                  やはり何度読んでも念(うな)ってしまう。ラルファスの人のよさにあきれてしまってだ。
                  手纸の前半部分はいい。
                  いつものごとく、やれ深酒(ふかざけ)は避けろとか、はやり病に気をつけろとか、俺のお袋かよおまえはっ、てなことがつらつらと书いてあり、これは実にあいつらしい。
                  で、问题は后半だ。
                  时に、レイン。
                  おまえがどうやって王女様と知り合ったかは知らないが、この戦いが败北に终われば、あのお方のお命も危なくなる。
                  亲しい仲ならば、おまえの力でぜひとも王女様を守って差し上げてくれ。
                  それから……おまえ达の仲に口出しをする気はないが、王女様の年齢と立场をかんがみ、早まった真似(意味はわかるだろう?)は控えるように。いいな。
                  以上
                  「なにが以上だ、なにがっ」
                  レインはむっとして、手纸をサイドボードに放った。
                  わけのわからんことを言う奴である。だいたい、文面では王女の保护を頼んでいるようだが、そもそも王女など会ったこともない。
                  あいつはその王女とやらに俺が手を出すとでも思っているようだが、会ったこともない女に手を出すほど自分は见境(みさかい)なくないのだ。
                  第一、あのダグラス王のような暑苦しいおっさんの娘など、会わずともどんなシロモノか想像がつく。
                  勘弁してくれと言いたい。
                  ただでさえ贵族连中は好かないのに、よりにもよって王族とはっ。しかも、王の娘ときた!きっと、厚かましくて暑苦しくて家事も一切出来ず、威张り散らすしか能のない马鹿女に决まっている。
                  レインは自分が知る限りの、神をも恐れぬ悪态をつきまくった。しかし文句を言いつつ、自分が必ずラルファスの頼みを闻き入れるだろうこともまた、わかっていたのだが。
                  「ま、いいけどな。ミシェールを助けるついでになんとかするか」
                  思いっきり愚痴(ぐち)った后、呟(つぶや)く。
                  脳裏(のうり)に、前に会った寂しげな美貌(びぼう)を持つ少女が浮かんだ。约束がある。あの子は必ず迎えにいかねばならない。
                  だが、今心配なのは、ラルファスである。なにしろあいつは、今顷は戦いの真っ最中かもしれないのだ。
                  この时点で、明らかに计算に狂いが生じている。ザーマインはどうやら、思ったより自分を警戒していたらしい。ユーリによれば、レインには数え切れないほどの监视の目がつけられているそうだ。
                  これでは无理にここを抜け出せば、たちまちザーマインの本队に连络が飞ぶだろう。それではかえって相手を警戒させ、ラルファスを助けられなくなる。
                  レインを利用するだけだったダグラス王がどうなろうと知ったことではないし、死んだとて胸も痛まないが、あいつだけは助けないといけない。
                  「寝覚めが悪いからな。ただそれだけだ」
                  自分を纳得させるように、レインは呟(つぶや)いた。
                  とにかくあいつには、随分と借りがある。頼んだわけではないが、これまで何度も怒り狂った王に取りなしてもらった。
                  


                  IP属地:上海89楼2012-05-29 15:23
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                    レインも、一度だけラルファスの命を救ったことがあるにせよ、まだずっと借りの方が多い。
                    なのにあの男は、ことあるごとにその一度きりの出来事をレインに谢(しゃ)し、「あの时は言叶に尽くせぬほど世话になった。私は决して忘れないぞ」などと言う。
                    なんというお人好しな奴だろうか。
                    お阴で、助けるこちらは大苦労である。
                    大前提(だいぜんてい)として、ラルファスは绝対に故国サンクワールを见舍てない、というのがある。
                    それはつまり、あいつを助けるためには、大国ザーマインを退(しりぞ)ける他はないということを意味するのである。
                    なにしろ、例え一人になっても平気で数万の大军を相手取ろうとするような、そういう无駄に热い奴なのだ、あの马鹿は。
                    『ギュンターの奴、うまくやったかな?』
                    自分が动けないもどかしさに、レインは歯ぎしりした。ひょっとすると、わざと谨慎(きんしん)を食らったのは间违いだったかもしれない。
                    いくら不利になろうとも、やはりあの马鹿たれ王についていくべきだったか。
                    「フィーネ……俺は判断を误ったかなあ」
                    と、レインが小さく声にしたとたん。
                    ババンッ!
                    シャレにならない势いで、ノックもなしに扉が开いた。いや、蹴り开けられた。
                    首を巡らすと、両足を开いて戸口に立ちはだかるユーリがいた。
                    「ちょっとおっ」
                    ビシッと人差し指をレインに突きつける。
                    「フィーネって谁よっ」
                    「……え?」
                    「『え?』じゃないわよ、『え?』じゃっ」
                    ブラウスにスカート姿のユーリは、ずかずかと部屋へ入り込むと、レインの寝るベッド脇に立つ。どっちが主人かわからない。
                    一気にしゃべり出した。
                    「だいたいあんた、そんな态度でいいと思っているわけ? いつまでもからっぽの酒瓶みたく寝ころんでばかりでさ、しゃきっとしなさいよ、しゃきっと。ダレすぎよっ。そんなことだから谨慎(きんしん)なんか食らうのよっ。それに、あんたのなめた马鹿うまときたら」
                    「だああっ! やっかましいっ」
                    ほっとくといつまでも続きそうな骂倒(ばとう)を、レインは起きあがりざまに遮(さえぎ)った。
                    「俺は今、神圣な考え中なんだよっ。おまえの相手してる暇ないんだ。俺に会いに来るのなら、重要极まりない用件の时か、下着レスでスケスケの服を着ている时にしろ!」
                    「なにを言ってんだか――寝るなっ」
                    「うるさい奴だな」
                    またシーツの上に倒れ込もうとしたレインは、头をかきながら渋々と起きあがった。
                    ベッドに横座りをし、突っ立つユーリに目をやる。
                    「んで、なんの用だ。だいたい、気配でわかってたけど、なにを人の部屋の前で闻き耳立ててるんだよ、おまえは」
                    「ふふん、闻かれて困ることなんかなにもないくせに。私はね、気合いを入れてあげに来たのよ。あ、それと、フィーネって谁よっ」
                    「……いっぺんに并べんなよ。それに、わけがわからんぞ」
                    レインはやる気なさげに指摘し、それからふと思いついてにんまりした。
                    「な、なによ。その薄気味悪い笑いは」
                    ユーリが嫌そうな颜で后退(あとずさ)りする。
                    「いや、たいしたことじゃないんだが。おまえさ、その黒髪と瞳の色からして、出身はサンクワールの平民だろ?」
                    「……だから?」
                    「単刀直入に言うが――。おまえ、こっちに寝返らないか」
                    ユーリは息を呑み、薄绿の瞳を瞬(またた)いた。なんともいえない颜で、レインを见返す。脉がありそうだな、とレインは思った。
                    「おまえだって生活のために、嫌々やってんだろ。この国は平民に厳しいからな。でも、俸给(ほうきゅう)さえ良ければ、なにも敌侧につくことはないんじゃないか」
                    


                    IP属地:上海90楼2012-05-29 15:23
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                      「それは……まあ。あたしだって、决していい気分じゃなかったし」
                      「そうだろ、そうだろ。だからどうだ、月に银货二十枚で手を打たないか?」
                      「二十枚ってことは……五万タラン? ん~、もう一声」
                      大きく身を乗り出すユーリ。
                      「じゃあ、银货二十一枚」
                      「あんたね、刻(きざ)み方がセコいのよっ。男でしょ、もっとババンッといきなさいよ!」
                      レインはしかめっ面(つら)を作り、首を振る。
                      「马鹿。城主は常に节约を考えないといけないんだよ。――银货二十五枚でどうだ?」
                      「高価な酒をガバガバがぶ饮みする奴が、なにを言ってんのっ。あたしの妹……じゃなくて、弟の学费も考えてよ!」
                      「男なんざ、知るかっ。じゃあ、おまえの女としての将来性を买って、银货三十枚っ! 持ってけ、泥棒っ」
                      「乗った!」
                      ユーリは目を辉かせて手を叩いた。
                      ぐぐっとレインに诘め寄る。
                      「ほんっとに银货三十枚、月にくれるのね」
                      「ああ。その代わり、ちゃんと働けよ」
                      「うん! 良かった~。これで妹――ううん、弟に嘘つかなくてすむわっ」
                      小跃りして喜ぶユーリ。どうやら生活のために、肉亲に嘘をついて间谍(かんちょう)を続けていたらしい。さぞかし后ろめたかったのだろう。
                      「あ、でも――」
                      「どした?」
                      「もしあたしが申し出を断っていたら……あんた、どうするつもりだったの」
                      かわいらしく小首を倾(かし)げるユーリ。
                      レインは极悪な笑いを浮かべた。
                      「ザーマイン本国に、ユーリは寝返ってこっちにつきましたよ、て教えてやるね。そしたら、そんな事実がなかったとしても、向こうはもうおまえを使わないだろ。嫌でもこっちにつくしかない」
                      「……ど畜生か、あんたは」
                      あんぐりと口を开けるユーリ。
                      まあな、と悪びれずにレインは胸を张った。
                      と、その时。
                      部屋の中央付近でいきなり光が明灭し、一つの形を取り始めた。
                      マジックビジョン? とユーリが寻ねる。
                      レインが答える间もなく、その光は収束(しゅうそく)して、一人の目つきの锐い男の形を取った。
                      もちろん、その本人は遥(はる)か远くにいるが。
                      「……谁、あの思いっきり不机嫌そうな、人生に悩んでるっぽい人」
                      「后だ、后っ。これは大事な报告なんだ」
                      レインは锐くユーリを制した。
                      时间的に见て、ラルファス救出の件に违いあるまい。
                      「ご报告いたします、レイン様」
                      その考えを裏付けるように、わずかにぶれるギュンターの像が、レインに恭(うやうや)しく一礼した。


                      IP属地:上海91楼2012-05-29 15:23
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                        ――☆――☆――☆――
                        王宫の奥深くの庭园で、シェルファは一人ぼっちだった。
                        ガルフォート城は现在、静寂に包まれている。昨日までは逃げる算段(さんだん)をする者达で騒がしかったが、今やほとんどの者が逃げ散ってしまい、人の姿をあまり见ない。
                        庭园の端の、小さい池のほとりに立つ木にもたれ、シェルファは水面を眺めている。
                        お気に入りの场所である。
                        いつも静かな所なのだが、今日は特に物音一つしない。
                        头上に张った木の枝が、风でごく微(かす)かに揺れる音がするくらいだ。
                        今は昼时だというのに、人々の会话の声や喧噪(けんそう)の音など、その种のざわめきが少しも闻こえてこない。
                        「このお城、本当にからっぽになっちゃったんだわ」
                        シェルファは呟(つぶや)いた。
                        理由もわかっている。一昨日(おととい)、マジックビジョンで败戦の报が重臣达に伝わったからだ。
                        彼らは最初は信じようとせず、だが详しく报告を受けるにつれ、例外なく绝望に呻(うめ)いた。
                        従军した上将军(じょうしょうぐん)达はラルファスを除き、全员が戦死。しかも、父王さえも裏切りにあって杀されたらしい。
                        その报告には、厳重な箝口令(かんこうれい)が敷かれたが、瞬く间に噂が広がっていった。
                        人の口を封じることは出来ないものなのだ。
                        噂によると、どうやら丞相(じょうしょう)を初めとする重臣达は、「あのガノア殿がまさか!」などと言っていたそうだ。
                        シェルファにすれば笑止(しょうし)である。
                        彼女は昔から彼が嫌いだった。しかも最近は、たまに颜を合わせるとねっとりと嫌な视线で自分を见るので、増々、大嫌いになっている。
                        侍女(じじょ)からガノアが裏切ったと闻き、ああ、やっぱり、となんの违和感も覚えなかった。
                        あの人ならそんなことをしそうだ。
                        父に见る目がなかったのだろう……
                        「お父さま……」
                        そっとため息を吐(つ)き、シェルファは亡き父の颜を思い出そうとした。
                        だが记忆がぼやけ、どうしてもよく思い出せない。父亲はシェルファにほとんど会おうとせず、一年に一度くらい颜を合わせればいい方だったからだ。
                        たまに会えば、嫌悪の目で见られた记忆しかない。话した忆えすらほとんどない。
                        正直、シェルファは彼が死んだからといって、あまり悲しくもなかった。わたしは冷たいのかもしれない、と多少は落ち込んでいたけれど。
                        レインに会いたい……
                        そんな思いが、シェルファの心のほとんどを占めていた。レインが生きていてくれて、心底ほっとしている自分がいる。
                        三年前、シェルファは初対面だったレインの优しさに触れ、彼に心を开いた。
                        独りぼっちだったシェルファはあの日以来、自分がもう一人ではないと信じることが出来たのだ。
                        もちろん、あの日の出来事は片时も忘れたことがない。
                        瞳をそっと闭じる。
                        たちまち、懐かしい记忆が苏った……


                        IP属地:上海92楼2012-05-29 15:24
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                          ――☆――☆――☆――
                          ガルフォート城の裏手にある広々とした庭园は、シェルファの数少ない『お気に入りの场所』の一つである。
                          季节ごとに大量の花が花坛を彩り、奥の小さな池のほとりには、水面に向かって长く枝を伸ばしたジュラの木が生えている。
                          シェルファの唯一の楽しみは、ここで一人で絵を描くことなのだ。
                          その日は、「ぶとうかい」とやらで、家庭教师が彼女を早々に解放してくれたため、いつもよりずっと长く、好きな絵に取り组めるはずだった。
                          晩夏とはいえ、まだまだ眩(まぶ)しい日差しに目を细め、シェルファはトコトコと歩いて、いつも来るジュラの木の根本に腰挂けた。さすがに日阴はだいぶ凉しい。豪奢(ごうしゃ)な金髪を背中へと払ってから、画板を膝の上に置き笔を手にする。ちょっと小首を倾(かし)げた。
                          きょうはなにを描きましょうか……风景はもうなんども描いたし……
                          ではきれいな鸟でもと思ったが、辺りには一羽も见当たらない。
                          しばらく迷い、何となく今日は人物像を描くことにした。
                          もちろん、城内の谁かをモデルにする気はない。一人でいるのが当たり前のシェルファにとって、他人と関わりを持つのは苦痛以外の何ものでもないのだ。それに、描きたい人も特に居はしない。
                          唯一の例外は三年前に亡くなった母だが、描けばつらくなるだけなのでやめておく。
                          代わりに、想像の人物を描くことにした。ちょうどこのところ、シェルファは见知らぬ男性の梦をよく见るのだ。
                          おぼろげに脳裏(のうり)に浮かんだ男の人を、シェルファは热心に描き出した。
                          いつにもまして、笔がなめらかに纸の上を滑っていく。
                          うん、いい调子……なぜかしら、自然に手が动く感じ……こんなこと、はじめて。
                          ところが、しばらく梦中になって絵に取り组んでいると、どこからか人の声がしたような気がした。
                          はっとして手を休めた。
                          気のせいではない。
                          やはり声がする。それも歌声だ。
                          男女の恋爱模様について、谁か男の人がおそろしく下手くそな歌を口ずさんでいた。しかも、段々こちらへ近づいてくる。
                          と、ふいにその歌声が小さくなった。近くに人がいることに気づいたのかもしれない。それでも歌うのを止めたわけではなく、相変わらず接近してくる。
                          いつものシェルファだったら、こんな时はすぐに姿を消すことを考えるはずだった。他人と颜を合わすのがたまらなく嫌だからだ。
                          どうせ気まずい思いをするくらいなら、さっさと逃げた方が楽である。
                          だがこの时は、なぜかそんな気になれなかった。
                          理由はわからない。
                          歌声の主が、あまりにも堂々と気持ち良さそうに歌っていたのに(下手だが)惹(ひ)かれたせいかもしれないし、その低音の効(き)きすぎた声が気に入ったせいかもしれない。后になって考えても、シェルファ自身にもよくわからなかった。
                          いずれにせよ、逃げる机会は失われ、问题の人物は花坛の向こうから姿を现した。
                          一目见て、シェルファは真っ青な瞳を见张った。
                          「おっ!」
                          机嫌良く歌っていた歌を止め、男はまじまじとシェルファを眺めた。
                          黒いシャツに黒いズボン、しかも黒髪|黒瞳(くろめ)の黒ずくめの格好で、かなりの长身である。
                          雕(ほ)りの深い精悍(せいかん)な颜つきに、锐い目つきをしている。ただその目の奥に、どこか悪戯(いたずら)好きな子供のような光がチラチラしていた。
                          见知らぬ男の人だった。……现実には会ったことがないという意味だ。
                          惊いたことにこの男の人は、たった今絵に描いていた人物そのままであり、つまり、シェルファが最近よく梦で见る、まさにその人だった。
                          


                          IP属地:上海93楼2012-05-29 15:45
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                            「ううむ、こりゃ色々と意外だな。おいチビ。おまえ、无茶苦茶きれいだなあ」
                            シェルファの気も知らず、彼は底抜けに明るい声を张り上げた。
                            チビと言うのは多分、自分のことだろう。そんな呼ばれ方をしたのは初めてだが、不思议と腹は立たなかった。
                            きれいだと誉(ほ)められたせいかもしれない。
                            男の言い方には、よく闻かされるおべっか的な调子はみじんもなく、心からの赏賛が込められていた。だから悪い気はしなかった。
                            「俺はレインというんだが、おまえは」
                            「わ、わたくしですか……」
                            まさか名前を闻かれるとは思わなかった彼女は、ちょっと慌(あわ)てた。そういえば、この男の人はどうやってここへ来たんだろう。王家に関わりのある人以外はここへは来れないはずなのに。
                            「どうした? 名前くらい教えてくれてもいいだろう」
                            「はっ、はいっ。あの、わたくしはシェル――いえっ、ミシェールと申します」
                            とっさに、心の奥で闪(ひらめ)いた名前を名乗る。
                            なぜかシェルファは、正直に名乗る気にならなかったのだ。思えばこの时すでに、レインに心を夺われていたのかもしれない。
                            自分がサンクワール王家の一员だなどと告白して、会ったばかりのレインに敬远されたくない。
                            せっかく亲しげに话しかけてもらえたのに、その雰囲気を壊したくなかった。
                            「ほおう、ミシェールか。うん、なかなかかわいい名前だな。やっぱり外见がかわいいと、名前もそれなりだな。だけど……さっきの気配は……ま、いいか」
                            レインはちょっとだけ考え、しかしすぐに、うんうんと一人で颔(うなず)いた。そしてシェルファに兴味を覚えたのか、腰からこった造りの柄(つか)が目立つ长剣を外し、目の前にしゃがみ込む。
                            「で、歳は? 十二歳くらいかな? ちなみに俺は二十二だ」
                            「十三歳になったばかりです」
                            「そうかそうか。ここで会ったのも何かの縁だ。よろしく頼むぜ、チビ」
                            「はい。あの……こちらこそ」
                            「おう。で、こんなとこでなにしてたんだ」
                            それはこちらが讯(き)きたいことなのだが、シェルファは素直に伏せていた画板を掲げて见せた。谁かに自分の描いた絵を见せることなど、ついぞなかったのに。
                            「え……こりゃ俺の似颜絵じゃないか。へえっ、おまえ、これなら絵で饭が食えるぞ。うまいもんだ」
                            「饭がくえるって、どういう意味ですか?」
                            「生活が成り立つってこった。それよりおまえと俺、どこかで会ってたか。おまえの颜は灭多に忘れないと思うんだがなあ」
                            「レインさまとお会いするのは、今日がはじめてです」
                            シェルファはそう答え、この场所でよく一人で絵を描いていること、今日に限って人物画を描く気になり、しかもどうしてだかレインとそっくりになってしまったことなどを说明した。
                            ……梦でレインの姿を既に见ていたことは、耻ずかしいので黙っておいた。
                            闻くとレインは首をひねり、
                            「それはあれか、全くの偶然ってことか。にしてはやけに俺そっくりだな」
                            「はい……不思议です」
                            「ふうむ」
                            レインは急に空を见上げ、なにやら悩みだした。
                            しばらくして、大真面目な颜でとんでもないことを告げる……重々しい声で。
                            「もしかすると、これは运命かもしれん」
                            「运命?」
                            「そう、运命だ。ディスティニーだ。おまえと俺は、将来ただならぬ関系になる――やもしれん」
                            「たっ、ただならぬ関系って、あの?」
                            「つまり、想(おも)い人とか恋人ってこった」
                            ふざけている様子ではなかった。
                            たちまちシェルファは真っ赤になってしまう。言叶の内容も内容だが、自分が决して嫌がっていないことに内心あきれていた。
                            


                            IP属地:上海94楼2012-05-29 15:45
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                              2025-05-15 07:43:56
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                              この人とはまだ会ったばかりなのに。
                              「何だよ、その渋い颜は。贵族だもんで、身分差を気にしてんのか」
                              「えっ、ど、どうして贵族だと」
                              「あのな、金髪に青い目はこの国の贵族の印みたいなもんだろ。特に白目の部分まで青いその目は、えらく目立つもんな」
                              「あ、そうですね」
                              「まあそれはいいとして……俺とじゃ嫌か。おまえもやっぱり身分差は绝対ってクチか。平民なんか軽蔑(けいべつ)してるとか?」
                              「いいえっ。そんな……わたくし、むしろ贵族なんて嫌いです……」
                              シェルファは悲しげに颜を伏せた。
                              本音だった。
                              どうせ自分は、お父様の目には政略の道具くらいにしか映ってやしないのだ。适齢期(てきれいき)になれば他国に嫁(とつ)がされる、単なる道具。
                              それ以上の物ではない。だからこそ、谁からもまともに相手にされないのだろう。
                              お母様が亡くなってからは、お父様も一段と冷たくなったもの。
                              「おいミシェール」
                              突然、レインの大きな手が、シェルファの頬を暖かく挟み込んだ。
                              「あっ」
                              「子供がそんな颜しちゃいかんなあ」
                              「レインさま?」
                              「レインと呼び舍てでいいって。とにかく、そんな颜はよせ。なっ」
                              嗫(ささや)くような、优しい声だった。
                              自分の頬を抚(な)でてくれる、大きな手――
                              そこから伝わるぬくもりが、ゆっくりと心の中にまで染みこんでくる気がした。
                              こんな风に呼びかけてもらえたのは、お母様が亡くなってから初めてのことではないだろうか。
                              シェルファは危うく涙ぐみそうになった。
                              それを悟られまいと无理に唇を引き结び、早口で寻ねた。
                              「レイン……は、どうしてここへ」
                              「ああ。俺は百人队长でね。この前の戦(いくさ)でちょこっと戦功(せんこう)を立てたんだが、信じられるかチビ?その恩赏(おんしょう)が舞踏会(ぶとうかい)へのお诱いときた。全く、んなことするくらいなら、身分を上げてくれた方が有り难いっての。付き合ってられなくてな」
                              「ああ、それで抜け出してここへ来られたのですね」
                              シェルファは颔(うなず)いた。同时に、この人はよほど优秀な骑士さまなんだなと思った。
                              あの身分にうるさいお父様が、贵族でもないのに骑士队长に据えているのだから。
                              と、レインが今度は、シェルファの头に手を置いた。
                              「で、おまえは?」
                              「わ、わたくしは、いつもここで、お絵かきをしているので……」
                              「ふーん」
                              レインは讶(いぶか)しそうに颜をしかめ、シェルファをじいっと见つめた。
                              もしかして自分の身分がわかってしまったのだろうか。
                              不安に包まれる……しかしレインが指摘したのは、全く别のことだった。
                              「それっていつも一人ってことか」
                              「ええ。一人が好きなんです」
                              ほっとして答えると、レインは力を込めて、
                              「そりゃいかん! たまには一人もいいかもしれんが、いつもはだめだ!」
                              「そう……でしょうか」
                              「そうなんだよ。よしっ、幸い今日は俺がここにいる」
                              レインはいきなり势いよく立ち上がり、シェルファに向かって手を差し出した。
                              「俺も舞踏会(ぶとうかい)なんぞより、未来の嫁さん候补の方が大事だ。できれば今じゃなく、十年后くらいに会いたかったけどな」
                              ニッと笑う。いつの间にか恋人候补から升格していた。シェルファはとまどい、レインを黙って见上げた。
                              「わからないか? 一绪に游ぼうぜっていってんだが。こう见えても俺は、ガキの顷は娯楽の殿堂って呼ばれてたんだぜ」
                              「わたくしを诱って下さるのですか」
                              「他に谁もいないだろ。ほらっ」
                              「でもわたくし……」
                              反射的に断ろうとして、シェルファは思わず息を呑んだ。
                              この男の人、なんてすんだ目をしているんだろう……透(す)き通(とお)るような、深くて黒い瞳。
                              それに、优しい目で私を见てくれる……とてもとても……かつてのお母様よりも。
                              见つめているうちに、ためらいが阳の下の雪のように溶けていった。
                              「よろしい……のですか?」
                              拒否する代わりに、シェルファは小さな声で寻ねた。
                              「……このようなわたくしを、ほんとうにお诱い下さるのですか?」
                              「ああ。おまえは嫌なのか」
                              「いいえ、レインさま。いえ、レイン。どうかよろしくお愿いします」
                              シェルファは、とうに忘れていたはずの辉くような笑颜を浮かべ、差し出された手を自分から握りしめた。


                              IP属地:上海95楼2012-05-29 15:45
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