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【mothy】《紙の悪魔と秘密の書庫》全文翻译

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这是前几年入手的mothy小说(日语原版),今年趁空闲的时候把整本都抄录+翻译了。
全部做完以后还是不太了解这本小说位于哪个时间线,世界观是什么样子的。有艾维里奥斯的恶魔出场,有网名叫艾尔露卡的神秘人物,是发生在第四世界的故事吗?
这本小说应该还有一本续作,但是我没有入手,所以也不知道后续的剧情发展与设定补充。如果有人手里有相关资源的话,不知道能否提供给我呢?


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1話
古いなあ。
好旧啊。
そのマンションを外から見た時、イツキが最初に思った感想がそれだった。
这是逸月从外面看向那栋公寓时的最初感想。
よく言えば古風。
说好听点是古风。
悪く言えば古くさい。
说难听点就是陈腐。
別におんぼろってわけじゃない。きちんと手入れはされているみたいで壁には目立ったよごれはないし、穴があいたりもしていない。
并不是破破烂烂的意思。看起来保养得很不错,墙壁上没有明显的污渍,也没有破洞。
それでもやっぱり、イツキの心には少しだけ、不満な気持ちがあった。本当ならこんな中古のマンションの一室じゃなく、真新しい一軒家に引っこす予定だったのだから。
尽管如此,逸月的心里还是有一点不满。本来他并没有打算住在这栋二手公寓里,而是要搬到一栋全新的房子里去的。
「いいじゃないか。レトロな感じで」
“不是挺好的嘛。复古的感觉。”
イツキとはちがい、父さんはわりとここのことを気に入ったようだった。
和逸月不同,爸爸好像很喜欢这里。
引っこし先の住まいを今日初めて見たのはイツキだけじゃない。父さんもだ。普通ならありえない話だが、これにはいろいろと事情がある。
今天不只有逸月一个人第一次看到搬家后的住处。爸爸也在。这在一般情况下是不可能的,但其中有很多原因。
「まあ、夏休みの間だけだから」
“算啦,只是暑假期间而已。”
イツキの気持ちに気がついたのか、父さんはなだめるようにそう言ったあと、さっさとマンションの中に入っていってしまった。
爸爸似乎注意到了逸月的心情,安慰似的说了这句话后,就迅速走进了公寓。
すぐそのあとについていく気になれなかったのは、まだ昼なのにもかかわらず一階の窓のカーテンが全て閉まっていたからかもしれない。
逸月不想跟着进去,或许是因为一楼窗户的窗帘全都关上了,而现在还是中午。
中が見えないことが、イツキの心にわずかな不安をいだかせていた。
看不见里面的东西,让逸月的心里隐隐感到不安。
……もちろん、この中にゆうれいやモンスターがいるだなんて思っているわけじゃないけど。
……当然,他并不认为这里面有幽灵或怪物。
そのカーテンの一つが勢いよく開いた。
其中一扇窗帘猛然拉开。
「やあ、イツキくん。よく来たね」
“呀啊,逸月君。欢迎光临啊。”
さらに窓を開けて話しかけてきたのは、このマンションの持ち主でもある伯父さんだ。
接着打开窗户跟他说话的,是身为这栋公寓主人的伯父。
「こんにちは」
“你好。”
近づいてあいさつすると、うす暗い部屋の中にたくさんの本棚が立ち並んでいるのに気がついた。父さんもいる。
他走上前打招呼,发现昏暗的房间里排列着许多书架。爸爸也在里面。
「そんなところにいないで、早く中に入ってきなさい」
“别待在那里了,快进来!”
父さんにうながされたので、イツキはかけ足でマンションの玄関に入った。
在爸爸的催促下,逸月跑进了公寓的玄关。
すぐ目の前に上に向かうための階段が見えたがそれは無視して、父さんたちの声が聞こえてくる左の部屋の扉を開ける。
眼前就是向上的楼梯,但是他没有理会,而是打开了左边房间的门,那里能听到爸爸他们的声音。
その部屋は、予想していたよりもずっと広かった。たぶんマンション一階の左半分は全て、この部屋だ。イツキが入ってきたもの以外にもいくつかの扉があり、その間をうめるように本棚が置かれていた。
那个房间比预想的要大得多。公寓一楼的左半部分大概都被这个房间占据了。房间除了逸月进来的那扇门以外还有好几扇门,房间中间的位置放着书架。
それらの中には無数の本がしきつめられている。マンションの見た目と同様、古めかしくて地味なデザインの本だ。
那些书架里面塞满了无数的书。和公寓的外观一样,都是一些设计陈旧而朴素的书本。
「図書館みたいですね」
“就像图书馆一样呀。”
イツキが素直な感想を述べると、伯父さんは少しはにかむように笑った。
逸月坦率地说出感想之后,伯父有点害羞地笑了。
「壁を取りはらって一部屋にしたんだ。こちらだけじゃなく反対側も同じようにね。一階は全部、本の置き場所になっている」
“把墙壁拆掉,改成了一整个房间。不光是这边,对面也一样。一楼全部都是放书的地方。”
父さんが部屋を見回しながら、伯父さんにたずねる。
爸爸一边环视房间,一边询问伯父。
「これ、全部マサキさんのコレクションですか?」
“这些都是正树你的收藏品吗?”
「今はね。だがもともとは親父の物だよ。このマンションといっしょにおれが相続したんだ」
“现在是呢。不过原本是我爸的东西哦。和这栋公寓一起被我继承了。”
伯父さんのお父さん――つまりイツキにとってはお祖父さんにあたる人のことだ。
伯父的父亲――对逸月来说就相当于是祖父。
イツキにはお祖父さんに関する思い出はほとんどない。
逸月几乎没有关于祖父的回忆。
六歳の時、一度だけ入院しているお祖父さんに会いに行ったことはあった。
他只在六岁的时候去见过一次住院的祖父。
その時は母さんと一緒に駅まで行って、そこで赤い自動車に乗った母さんのお兄さん――マサキ伯父さんと待ち合わせして。
那时他和妈妈一起去了车站,在那里和坐着红色汽车的妈妈的哥哥――正树伯父碰头。
病院で見たお祖父さんはずっとねむったままで、結局その日は一度もお祖父さんと会話するとなく帰ったことを覚えている。
他记得在医院看到祖父一直睡着,结果那天没有和祖父说过一句话就默默回去了。
お祖父さんが亡くなったという電話が母さんにかかってきたのは、それから数か月後のことだった。
几个月后,妈妈接到了祖父去世的电话。
「――本のいくつかはキョウコにゆずるつもりだったんだけどね。あいつ、じゃまになるからいらないって」
“――我本来打算把几本书让给恭子的。可是那家伙说跟我会碍事,不要了。”
伯父さんがそう言いながら、ため息をついた。
伯父边说边叹了口气。
キョウコというのは、イツキの母親の名前だ。
恭子是逸月母亲的名字。
その母さんは先にこのマンションに着いて、今は二階の部屋で荷物の整理をしているはうだった。
他的母亲先到了这栋公寓,现在正在二楼的房间整理行李。
「イツキくん、本は好きかい?」
“逸月君,你喜欢看书吗?”
ふいに伯父さんがそう聞いてきた。
伯父突然问道。
「うん。でも……ちょっと見てもいい?」
“嗯。不过……我可以看一下吗?”
適当な本を指さしイツキがたずねると、伯父さんが無言でうなずいたので、その本を棚からぬき取ってページを開いてみる。
逸月适时地指着书问道,伯父无言地点了点头,于是他从书架上抽出那本书开始翻看起来。
「……やっぱり。ぼくにはちょっと難しくて読めそうにないや」
“……果然,对我来说有点难,看不懂。”
「ハハハ。それは洋書だからな。さすがに小学生に英文は厳しいか。でも、この中には日本語で書かれた本もちゃんとある。子供向けの童話集なんかもね……これなんかどうだろう?」
“哈哈哈,那是外文书嘛。对小学生来说,英文还是太苛刻了。不过,这里面也有日语书,可能是给小孩子看的童话集……这本怎么样?”
そう言って伯父さんは別の本を棚から取り出し、イツキにわたしてきた。
说着,伯父从书架上取出另一本书,递给了逸月。
「……『ヘンゼルとグレーテル』って。さすがにちょっと子供向け過ぎるよ」
“……《汉塞尔与格蕾特》。有点太孩子气了吧。”
「お、そうか?うちのハルトなんかはこのレベルでも放り出してしまうけどね」
“哦,是吗?我家的阳斗就连这种水平的书也会放弃呢。”
「『ハルト』?」
“『阳斗』?”
「おれの息子だよ。そういえばイツキくんはまだ会ったことがなかったか。今はサッカーの練習に行っているから、帰ってきたら紹介するよ。夏休みが明けたら同級生になるだろうしな」
“是我儿子哦。这么说来你还没见过他啊。他现在去练习足球了,等回来以后我给你介绍吧。暑假结束后,你们就是同学了。”
つまり、その「ハルト」くんはイツキと同じ小学五年生ということのようだ。
也就是说,那个“阳斗”君和逸月一样都是小学五年级的学生。
伯父さんが話を続ける。
伯父继续说道。
「まあともかく、夏休みの間はイツキくんも何かとたいくつだろうからな。こっちにはまだ友達もいないわけだし。ハルトと遊んでやってくれてもいいし、もしあいつと気が合わないようなら……ひまつぶしにここを図書館代わりにしてくれてもいい」
“总之,暑假期间逸月君也会很无聊吧。你在这边还没有交到朋友。虽然可以和阳斗一起玩,不过你要是和那家伙合不来的话……就把这里当作图书馆来消磨时间吧。”
「勝手にここの本を読んでもいいの?」
“我可以随便看这里的书吗?”
「ああ。正直な話、おれもここにある本の大半はほとんど手に取ることすらしていないんだ。せっかくの本も、読まれないままではかわいそうだからな。ただ、どれも大事な本だ。ここから持ち出したりはしないでくれ」
“嗯。老实说,这里的书大部分我都没有看过。就算是很难得的书,如果没人看的话也会很可怜的。不过呢,因为每一本书都是很珍贵,不可以从这里拿出去哦。”
「うん。わかった」
“嗯,我知道了。”
「……あ、それと」
“……啊,还有。”
伯父さんは奥にある扉を指さす。
伯父指了指里面的门。
構造上、この部屋の扉のほとんどは外のろうかへとつながっているみたいだが、その黒い扉だけはちがうようだった。
从构造上看,这个房间里面的门几乎都通向外面的走廊,只有那扇黑色的门不一样。
「あそこは、また別の小さな書庫への入口だ。そこにはとっても貴重な物が保管されているから、入らないでほしいんだ」
“那里是通往另一个小书库的入口。里面保管着非常贵重的东西,请你不要进去。”
「何があるの?やっぱり本?」
“有什么东西呢?果然还是书吗?”
「……それは秘密だ」
“……这是秘密。”
そんな言い方をされると、余計に気になってしまう。
这种说法反而更让人在意了。
だけどあまり変に探りを入れて、常識のない子だと思われるのもいやだったので、イツキは「わかった」とだけ答えた。
但是逸月又不想做太多奇怪的试探,被当成没有教养的孩子,所以只是回答了一句“知道了”。
「――さて、そろそろ行こうか、イツキ」
“――好了,差不多该走了吧,逸月。”
父さんがイツキのかたに手を置いた。
爸爸把手放在逸月的肩上。
「母さんのきげんが悪くなる前に、荷物の整理を手伝わないとな」
“趁妈妈还没有不高兴,我们要帮她整理行李啊。”
イツキはうなずいたが、本音ではあまり気が進んでいなかった。
逸月点了点头,但是内心并不怎么情愿。
――どうせ九月になれば、また荷造りをやり直すことになるっていうのに。
――反正到了九月,又要重新打包行李了。
「では……マサキさん、また」
“那么……正树,回头见。”
父さんがろうかへの扉のノブに手をかけながら、伯父さんにそうあいさつする。
爸爸一边握住通往走廊的门把手,一边向伯父打招呼。
「おう。何か困ったことがあったら気軽に声をかけてくれ。おれの部屋は201号室――君たちの部屋のとなりだから」
“嗯,有什么困难尽管找我。我的房间是201号房――就在你们房间的隔壁。”
イツキは父さんと一緒に頭を下げた後、図書室を出た。
逸月和爸爸一起鞠躬行礼后,走出了图书室。


2025-06-07 04:28:52
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2話
引っこしの日から三日ぐらいは近所を散歩して、新しい町の景色を眺めた。
搬家那天起,逸月花了三天左右的时间在附近散步,眺望新城市的景色。
夏休み明けから通う予定の、学校への通学路も覚えた。
也记住了暑假结束后要走的上学路线。
その後は引っこし直前に買ったテレビゲームをやったりしていたが、それもすぐにあきてしまった。新しいゲームを買うにしても、おこづかいが足りない。
之后他就玩起了搬家前买的电视游戏,但是很快就玩腻了。就算想买新游戏也没有足够的零用钱。
(はあー。もっと別のゲームソフトにしておけばよかった)
(哈啊——。要是多买点其他游戏软件就好了)
後悔しても使ったお金はもう、もどってこない。
即使后悔,花出去的钱也不会再回来了。
お金に意思とつばさがあって、自分のところへ飛んできてくれるなら別だが、そんなことはありえないのだ。
如果金钱有自己的意志和翅膀,会飞到自己身边那就另当别论了,但那是不可能的。
次第にイツキは、マンション一階の「図書室」でひまをつぶすことが多くなっていった。
渐渐地,逸月去公寓一楼“图书室”消磨时间的次数多了起来。
ここにある本は古いものばかりだが、イツキの興味をひくような内容の小説なんかも、少しだけだがあった。
这里的书都是旧书,但好歹也有一些小说的内容能引起逸月的兴趣。
その中の一冊を手に取り、近くの椅子に座って昨日の続きから読みはじめる。
他拿起其中一本,坐在旁边的椅子上开始继续阅读昨天的内容。
本が日焼けしてしまうので、カーテンは開けないように伯父さんからは言われている。
为了防止书被晒坏,伯父叮嘱他不要拉开窗帘。
それでもカーテンのすきまからは、八月の強い日差しがわずかに入りこんできていた。エアコンはちゃんと効いているので快適だ。
尽管如此,八月份强烈的阳光还是透过窗帘的缝隙照了进来。好在空调的效果不错,让人很舒服。
本の中でめしつかいがとなりの国の商人と話しはじめたころ、イツキの背後で扉が開く音が聞こえた。
书中的侍从开始和邻国的商人交谈,就在这时逸月的背后传来了开门的声音。
「よう。ひまそうだな」
“哟。你看起来很闲呢。”
話しかけてきたのはハルトだった。今日はサッカーの練習が休みのようだ。
搭话的人是阳斗。今天他好像没有练习足球。
ボールではなく真新しいノートを一冊、右手に持っている。
右手拿的不是球,而是一本崭新的笔记本。
「こんにちは」
“你好。”
イツキは少しよそよそしい態度で、あいさつを返した。
逸月回应道,态度有些冷淡。
たぶん自分とはタイプのちがう人間、というのがイツキのハルトに対する印象だ。活発でスポーツが得意――おそらくサッカーでのポジションもファワードとかなんだろう。
大概是和自己类型不同的人,这是逸月对阳斗的印象。性格活泼,擅长运动——恐怕在足球场上的位置也是前锋之类的吧。
一方のイツキは、たまに遊びのサッカーに参加したとしても、たいていディフェンスかキーパーをやらされるタイプなのだ。
另一方面,逸月即使偶尔参加足球比赛,也大多被安排当防守队员或者守门员。
ハルトは窓ぎわにある椅子にドカッといきおいよく座った後、机にひじを置きながらイツキにこうたずねてきた。
阳斗扑通一声用力坐在窗边的椅子上,一边把胳膊肘放在桌上,一边询问逸月。
「本とか読んでて楽しい?」
“看书开心吗?”
「……うーん、まあ、それなりには」
“……嗯ーー,哎呀,还好吧。”
「ゲームとかやんないの?」
“你不玩游戏机吗?”
「やるよ。でも、あきちゃって」
“玩啊。不过,已经玩腻了。”
「じゃあ、スマホは?」
“那,智能手机呢?”
「持ってない」
“我没有。”
「ふーん」
“哼唔——”
そこで会話がとぎれた。
对话就此中断。
「……」
“……”
しばらくするとハルトは気まずさをごまかすかのように、持っていたノートを机に広げた。
过了一会儿,阳斗像是要掩饰尴尬似的,把他拿着的笔记本摊在桌上。
「だるいよなあ、日記とか」
“写日记真累啊。”
「……」
“……”
「お前は?宿題とか早めに終わらせちゃうタイプ?」
“你呢?你是那种提前完成作业的类型吗?”
「宿題は……出されてないんだ」
“作业……没布置。”
「そうか……いいなあ。夏休みに引っこしたやつの特権ってやつだ」
“这样吗……真好啊。这是暑假搬家的人才有的特权啊。”
学校によってはちがうのだろうが、イツキの場合は夏休みの宿題をしなくてもいいことになていた。ラッキーではあるけれど、それがひまでひまで仕方ない現状をつくっている。
虽然每个学校的要求不太一样,不过像逸月这种情况,暑假作业就算不做也没关系了。幸运归幸运,但也造成了闲得没事干的现状。
ハルトの質問は続く。
阳斗的提问还在继续。
「でもさ、夏休みが終わったら、このマンションからは出ていくんだろ?」
“可是,暑假结束后,你就要离开这个公寓了吧?”
「……うん」
“……嗯。”
「それでも行く学校はおれと同じなんだ?」
“你和我上同一所学校?”
「次の家も、ここから近い場所にあるから」
“因为我之后的新家也在这附近。”
「そもそもさ。なんでそんなめんどくさいことになってんの?一か月だけここで暮らすなんてさ」
“话说回来啊。为什么要弄得这么麻烦呢?只在这里住一个月。”
「なんか、不動産屋さんだか大工さんだかの手ちがいがあったみたいで、まだ新しい家が完成していないんだって」
“好像是房产中介还是木匠弄错了,新家还没盖好。”
「じゃあそれまで、前の家にいればいいじゃん」
“那,盖好之前,你待在以前的房子里不就好了。”
「それがわかる前に売っちゃっただ。新しい人たちがもう住んでいるから……」
“老房子在搞清状况之前就卖掉了。已经有新的住户住了进去……”
「……なるほどねえ」
“……原来如此。”
正しく言えばこれは父さんの確認ミスが原因で起こったことで、そのせいで父さんは母さんからこっぴどく怒られた。
准确地说,这是因为爸爸确认错误而造成的,为此爸爸还被妈妈狠狠地骂了一顿。
その後、いろいろと考えた末に母さんが思いついたのが、伯父さんの経営するこのマンションの一室を一か月だけ借りることだったわけだ。
后来,妈妈左思右想,最后想到的办法就是在伯父经营的公寓里找个房间,借住一个月。
親類であること、そして空き部屋があったこともあって、特別に家賃ははらわなくていいことになったらしい。
因为是亲戚,而且还有空出来的房间,所以好像不用特别支付房租。
「家を建てたばかりでお金ないんだから、少しでも節約した方がいいでしょ?」
“房子刚盖好,没钱,还是节约一点吧?”
母さんがまだ半分怒りながら、父さんにそう言ったのを覚えている。
我还记得妈妈半生气地对爸爸这么说。
引け目のある父さんは、母さんのこの提案を断ることができなかったのだろう。
爸爸的自卑感挺严重的,没法拒绝妈妈的提议吧。
「……はあー」
“……哈啊——”
ハルトはため息をつきながら、日記を書きはじめた。
阳斗叹了口气,开始写起了日记。
だがすぐに手を止めるとポケットから取り出したスマートフォンをいじりはじめる。
但是很快就停下笔,从口袋里拿出智能手机摆弄起来。
「……ハルトくんちってさ、お金持ちだよね」
“……阳斗家,很有钱呢。”
「うん?なんで?」
“嗯?为什么?”
「スマホと持ってるし」
“你有智能手机。”
「いやいや、スマホ程度で金持ちとか言われても」
“不不,因为智能手机就被说成有钱人也太过了吧。”
まあたしかに、イツキも別に家がびんぼうだからスマホを買ってもらえないわけではない。
不过确实,家里也不是因为穷才不给逸月买智能手机的。
単純に両親の「小学生にスマホなんてまだ早い」という教育方針によるものだ。
这纯粹是父母“小学生玩手机还为时过早”的教育方针所致。
イツキがハルトの家を「お金持ち」だと言ったのには、他にも理由があった。
逸月说阳斗家是“有钱人”还有其他理由。
「伯父さん――ハルトくんのお父さんってさ、スゴイ脚本家なんでしょ?」
“伯父——阳斗君的父亲,是个很厉害的编剧吧?”
「それは半分だけ正解だな。『脚本家』なのは事実だけど、『スゴイ』ってのは間違いだ」
“这句话只说对了一半。‘编剧’是事实,但‘厉害’是错的。”
「でも、父さんが言ってたよ。伯父さんは昔、大ヒットしたドラマの脚本を書いたんだ、って」
“可是我爸爸说,伯父以前给一部很红的电视剧写过剧本。”
「知らないよ。おれが赤んぼうのころの話だもん。それに当てたのはその一発だけで、最近は全然みたいだし」
“我不知道啊。当时我还是婴儿呢。而且只遇上了那一次,最近好像完全没有了。”
ハルトはスマートフォンの画面を見ながら、こう続ける。
阳斗看着手机屏幕,继续说道。
「このマンションもさ。古くさいせいであんまり借り手がいないみたいだし。今だって半分以上が空き部屋だもん。なんたって築百年近いんだぜ」
“这栋公寓也是啊。因为老旧好像没什么人租。现在也有一半以上是空着的。毕竟房子都快有一百年了。”
「築百年……それはそれですごいね。でもさすがにそこまで古いようには見えないけど」
“一百年的房子……这也太厉害了。不过看起来也不像那么古老的样子。”
「何度か増築とかリフォームとかしたみたいだからな」
“因为貌似有扩建或者改建过好几次啊。”
そりゃそうか、とイツキは思った。そんな大昔に建てられた建物が最初から四階建てだというのも、あまりない話だろうし。
是这么回事啊,逸月想着。那么久以前建造的建筑物,如果是一开始就有四层楼高的,应该不多见吧。


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「見た目が今どきっぽくないのは、まあ別にいいんだけどさー」
“外表不像现代倒是无所谓啦——”
ハルトが不満げにそうつぶやく。
阳斗不满地嘟囔着。
「たまにネズミとか入りこんでくるんだよな。お前――ええと、名前なんだっけ?」
“这里偶尔还会有老鼠跑进来呢。你——呃,叫什么名字来着?”
「イツキ、遠藤イツキ」
“逸月,远藤逸月。”
「ああ、そうだった。イツキはさ、ここに来てからネズミの鳴き声とか聞かなかった?」
“啊,对了。逸月啊,你来这里之后没有听到老鼠的叫声吗?”
ネズミの鳴き声……そう言えば一度だけ、聞いたことがあったような気がする。
老鼠的叫声……这么说来,好像有听过一次。
それは借りている部屋でじゃなくて――。
不是在出租的房间——。
イツキは奥にある黒い扉を指さした。
逸月指了指里面的黑门。
「あそこの中から。ちょっと前の日の話だけど」
“从那里面传来的。是前几天的事了。”
「マジかよ!あそこかー。父ちゃんもほとんど立ち入ってないみたいだし、ありえるかもなー」
“真的假的!是那里吗——。老爸好像几乎没有进去过,说不定有可能啊——”
「ハルトくんもあの部屋には入ったことないの?」
“阳斗也没进过那个房间吗?”
「そうだな。あの『秘密の書庫』に入っていいのは父ちゃんだけだ。理由はわからないけど……
“是啊。只有老爸可以进入那个‘秘密书库’。虽然不知道理由……
たぶん、エッチなDVDでもかくしてるんじゃねえかな」
大概是藏了色情DVD吧。”
「……」
“……”
「興味ある?」
“你有兴趣吗?”
「いや……別に」
“不……并没有。”
ハルトの言った「興味」の対象がエッチなDVDのことなのか、それともあの部屋自体のことなのかわからなかったので、とりあえず否定しておいた。
因为不知道阳斗说的“兴趣”是对于色情DVD还是那个房间本身,所以先否定再说吧。
「まあ、ネズミ退治の業者を呼んだ方がいいって、父ちゃんに言ってみるわ」
“算了,我去跟老爸说,最好找个专门对付老鼠的人来。”
ハルトは立ち上がり、黒い扉に近づくと、そのノブをガチャガチャと回す。
阳斗站起身走到黑色的房门旁,咔嚓咔嚓地转动门把手。
「鍵がかかっているから、おれらには確かめようもないし」
“门锁住了,我们也没法确认。”
そして机の近くにもどると、置いてあったノートを拾い上げた。
然后他回到桌边,捡起放在桌上的笔记本。
「そろそろ夕飯の時間だし、おれもう行くわ」
“差不多到晚饭时间了,我先走啦。”
「うん……じゃあ、また」
“嗯……那,再见。”
ハルトはノートを手に、図書室から出ていった。
阳斗拿着笔记本,走出了图书室。
……結局、日記は書き終えていないようだったが、だいじょうぶなんだろうか?
……到头来,他的日记好像还是没有写完,不要紧吗?
そんなことを思いながら、イツキは読書を再開した。
这样想着,逸月继续看起了书。


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3話
それから数日たった、ある日の夜。
接着又过了几天,某天夜里。
「おや、まだいたのかい」
“哎呀,你还在啊。”
図書室の扉をあけた伯父さんが、イツキに話しかけてきた。
伯父打开图书室的门,对着逸月说道。
「すみません。どうしてもきりのいいところまで読んでおきたくて」
“抱歉,我无论如何都想读到最后一段。”
イツキは持っていた本を指さした。
逸月指着手里的书。
「そうかい。熱心なのはけっこうだけど、ほどほどにね」
“是吗?有热情是好事,但也要适可而止呢。”
そう言った伯父さんの手には、鍵の束がにぎられいてた。
伯父这么说着,将钥匙串握在手里。
「そのつもりだったんだが……まあいいや。じゃあ鍵を預けるから、ここを出る時に代わりに鍵をかけておいてくれ」
“我本来想这么跟你说的……算了。那我就把钥匙给你保管,离开这里的时候帮我锁门吧。”
「わかりました」
“知道了。”
イツキは伯父さんから鍵の束を預かり、それを机の上に置いた。
逸月从伯父那里接过钥匙串,放在桌上。
「くれぐれも忘れないようにね。おれはもうねるから、これを返すのは明日の朝でいい」
“千万别忘了啊。我要去睡觉了,明天早上再把这个还给我就行。”
「ずいぶんと早くねるんですね」
“睡得真早呀。”
「明日は、朝早くから仕事の打ち合わせがあってね」
“因为明天一大早就有工作上的商谈嘛。”
「そうですか……出かける前に、鍵を返した方がいいですよね?」
“这样吗……那我还是在你出门前把钥匙还给你比较好吧?”
「いや、打ち合わせ自体はこのマンションの中でするから、昼前くらいに返してくれたらだいじょうぶだよ」
“不,我们会在这栋公寓里开会,中午之前还我就行了。”
それを聞いてイツキは安心した。
听了这话逸月就放心了。
伯父さんに合わせて早起きする必要はないというわけだ。
也就是说没必要配合伯父早起。
「それじゃあ、おやすみ。夏休みだからといってあまりよふかしはしないようにね」
“那么,晚安。虽说是暑假,可也不要熬夜哦。”
伯父さんは図書室から出ていった。
伯父离开了图书室。
「……」
“……”
イツキは読書を再開する。
逸月继续看书。
物語はクライマックスにさしかかっている。王宮から逃げ出し、身分をかくして修道院に入りこんでいた王女様が、その正体を修道女に気づかれてしまったところだ。
故事进入了高潮。从王宫逃出,隐瞒身份潜入修道院的王女大人,被修女发现了真实身份。
――チュウ。
——吱。
ネズミの鳴き声らしきものが、どこかから聞こえた。
不知从哪里传来了老鼠的叫声。
イツキは後ろをふり向く。
逸月回头看去。
そこにあるのは――あの黒い扉。
那里是——那一扇黑色的门。
秘密の書庫への入口だ。
通往秘密书库的入口。
(……そういえば)
(……这么说来。)
イツキは伯父さんから預かった鍵の束を見た。
逸月看了看伯父交给他的钥匙串。
「この中に、あの扉を開ける鍵も……あるのかな」
“这里面……也有打开那扇门的钥匙吧。”
入ってはいけないことはわかっている。
他知道不能进去。
でも……やっぱり少しだけ、気になる。
但是……果然还是,有一点点在意。
(エッチなDVDのことじゃないぞ。あの中に何があるのか、だ)
(不是色情DVD吧。那里面会有什么呢。)
イツキは自分にそう言い聞かせながら、扉の先から聞こえてきた。
逸月这样自言自语的时候,声音从门对面传来了。
今度は、さっきよりもはっきりと。
这次比刚才还要清楚。
(あんなふうに鳴かれていたんじゃ、気になって読書に集中できないもんな)
(让它那样叫下去,就没法专心看书了。)
心の中で言い訳をしながら、扉の前に立つ。
他一边在心里找借口,一边站在了门前。
鍵束の鍵にはそれぞれ、どこ用のものであるのかがわかりやすいよう、ラベルの上に文字が書かれている。
钥匙串的钥匙都有写着文字的标签,让人很容易分清它们是用在哪里的。
図書室用……管理人室用……屋上用……。
图书室用……管理员室用……屋顶用……。
しかし、一つだけラベルのはられていない鍵があった。
但是,有一把钥匙没有贴标签。
(これかな?)
(是这个吗?)
その鍵を鍵穴にさし、回してみる。
他把钥匙插进钥匙孔,试着转动。
カチャリ
咔嚓。
どうやら正解だったようで、みごとに鍵が開いた。
看样子是正确的,门锁被顺利打开了。
「ちょっと……どんな感じか見てみるだけ……」
“稍微……看看里面是什么样子就行了……”
一度、耳をすます。
他侧耳倾听了一会儿。
伯父さんはもう部屋に戻ったのだろう。ろうかに人の気配はない。
伯父应该已经回房间了吧。走廊上没有人在。
ゆっくりと、イツキは黒い扉を開けた。
慢慢地,逸月打开了黑色的门。
――あまり人が出入りしていないからなのか、少しほこりっぽい。
——或许是因为很少有人进出,里面有些灰尘。
電灯のスイッチは、入ってすぐに壁にあった。
电灯开关就在刚进门的墙上。
ひかえめな光が部屋の中を照らす。
微弱的光线照亮房间。
そこには……やはり本棚があった。
那里……果然有书架。
(当たり前だよね。書庫だって言っていたんだから)
(当然有啦。都说这里是书库了。)
だけど、そこにおさめられているのは……本じゃない。
但是,里面放的……却不是书。
紙だ。
而是纸。
色あせた紙の束が、びっしりと棚の中にしきつめられているのだ。
一叠叠褪色的纸张密密麻麻地堆在书架上。
その本棚の他には、小さな机と椅子が一組、あるだけだった。
除了书架之外,只有一张小桌子和一把椅子。
ネズミらしい生き物の姿は、どこにも見えない。
到处都看不到类似老鼠的生物。
鳴き声も、もう聞こえなくなっていた。
叫声也听不见了。
いなくなったのか、それとも部屋のすみにでもかくれているのかはわからないが、とりあえず今は気にしないでおこう。
不知道他是消失了,还是藏在房间的角落里,总之现在先不要在意。
見たところ、わざわざ人の出入りを禁止する必要があるほど、高価な品物があるわけでもなさそうだった。
看起来并没有什么特别需要禁止人员出入的贵重物品。
ということは、やはり「秘密」なのは――あれらの紙束に書かれている、何かなんだろうか。
也就是说,“秘密”果然是——那一叠叠纸上写了什么东西吗?
「財宝のありかとか?……そんなわけないか」
“比如说宝藏在哪里?……怎么可能啊。”
これ以上、勝手に探るのは良くないことかもしれない。
再擅自探索下去或许不太好。
イツキだって、自分の部屋を知らないうちに母さんにそうじされた時なんかは、いつだってふきげんになるものだ。
比方说,自己的房间在不知道的情况下被妈妈打扫时,逸月总是会不高兴的。
「好奇心はねこを殺す」なんて言葉もある。
有句话叫“好奇心害死猫”。
これはたしか……イギリスのことわざだったっけか。
这个好像是……一句英国的谚语吧。
(だけど『好奇心を失ってはならない』って格言もあった気がするぞ)
(不过记得还有一句格言叫‘不能失去好奇心’)
だれの言葉だったかは、忘れてしまったけれども。
至于是谁说的就想不起来了。
たしかなのは、イツキはイギリス人ではないということだ。
可以确定的是,逸月不是英国人。
(だから別に、イギリスのことわざに従う必要はないよね)
(所以没必要遵从英国的谚语吧)
イツキは意を決して、紙束の一つを手に取った。
逸月下定决心,拿起其中的一叠纸。
「ちょっとだけ……何が書いてあるのか確認するだけ……」
“只是稍微……确认一下写了什么而已……”
紙を束ねているひもをほどき、一番表にある紙をめくってみる。
他解开捆纸的绳子,翻开最正面的那张纸。
そこには――ミミズがはっているような文字が、手書きで書き連ねてあった。
上面是——手写的,像蚯蚓一样的文字。
「英語じゃあ……なによな。縦書きだし。でもなんて書いてあるのか、読めないや」
“英语啊……什么嘛?还是竖着写的。不知道写了什么,看不懂呀。”
イツキは改めて、棚の紙束を見る。
逸月再次看了看架子上一叠一叠捆着的纸。
紙の質は束ごとにちがうみたいだが、いずれも古いものであることにまちがいはなさそうだ。
每捆纸的质量都不一样,但应该都是旧的。
それならば、伯父さんがここに入らないように言ったのも納得だ。
既然如此,伯父不让进入这里也就可以理解了。
手に持っている紙を、破いたりしないようていねいにめくっていく。
他小心翼翼地翻着手中的纸,以免撕破。
やはり読めそうにない。きっとこれは暗号とかではなく、昔の文字なのだろう。
还是看不懂。这一定不是暗号,而是以前的文字吧。
江戸時代とか、あるいはもっと大昔の。
江户时代,或者更久以前的文字。
(――あ。文字だけじゃなくて、イラストもあるぞ)
(——啊。不仅有文字,还有插图哦)
それはスミでえがかれた、動物の絵だった。
那是一幅用墨汁画成的动物画。
「これは……ネズミかな?まさかさっきの鳴き声は、この絵のネズミのものだったりして」
“这……是老鼠吗?刚才的叫声,该不会是这幅画里的老鼠发出来的吧?”
もちろん、じょうだんで言ったつもりだった。
当然,逸月只是在说玩笑话。
だが。
但是。
――チュウ。
——吱。
また鳴き声だ。
叫声再次响起。


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しかも、それが聞こえてきたのは――。
而且,能听到这声音是——。
まちがいなく、この絵の中からだった。
错不了,就是这幅画里传出来的。
それだけじゃない。
不仅如此。
次のしゅんかん、今度は鳴き声じゃなく、人の話し声が聞こえてきたのだ。
下个瞬间声音再次响起,这次听到的不是叫声,而是人的说话声。
「我はネズミなどではない……ハムスターだ!」
“我不是老鼠……是仓鼠!”
「うわっ!?」
“呜哇! ?”
おどろきのあまり、思わず紙束を落としてしまった。
由于太过惊讶,逸月不小心把整叠纸都弄掉了。
やがてゆかに散らばった紙のうち、一枚だけがゆっくりとうかびはじめる。
不一会儿,散落在地板上的纸张中,有一张开始慢慢地漂浮了起来。
それはネズミ――いや、ハムスターか――が、えがかれたあの紙だ。
那是老鼠——不,是仓鼠吗——总之就是画着它的那张纸。
次にその紙は、空中で折り紙のように折れ曲がりはじめた。
接着那张纸在空中像折纸一样开始折叠起来。
「……」
“……”
その様子に、思わず見入ってしまう。
那个样子让他不由得看得入迷了。
紙は最終的には、立体的なハムスターの形へと変形していた。
纸张最终变成了立体的仓鼠形状。
紙のハムスターは、クルクルと回りながらゆかへと降り立つ。
纸仓鼠骨碌骨碌地旋转着降落到地板上。
「こうして人間に会うのも久しぶりだな。礼を言うぞ、人間の子よ」
“好久没有像这样见到人类了。我要向你道谢哦,人类的孩子。”
「……別に、感謝されるようなことをしたつもりはないけど」
“……不用,我并没有做什么值得感谢的事情。”
「我を解放してくれたではないか」
“你不是解放了我嘛。”
「いや、そんな覚えは――」
“不,我不记得有做这种……”
「我をとらえていた、いまわしき封印……貴様はわれの呼び声に応え、それをほどいた」
“困住我的,不祥的封印……你回应我的呼唤,将它解开了。”
「まさか……このひものこと!?」
“难道……说的是这根绳子!?
イツキは手に持ったままのひもに目を移した。
逸月看向手里的绳子。
よく見るとひもには、とても小さな文字でじゅもんのようなものが書かれていた。
仔细一看,绳子上用非常小的字写着类似咒语的东西。
「さあ、人の子よ!この『ごうまんの悪魔』マリー様に何を望む?我とけいやくし、その心を委ねるのだ!!」
“来吧,人类之子!你对我“傲慢的恶魔”,玛丽大人有何期望?与我建立契约,将你的心交给我吧!!”
「悪魔?ハムスターじゃなくて?」
“恶魔?不是仓鼠吗?”
「見た目はな。だがその正体は、人の欲望を満たすべく存在する、まぎれもない悪魔なのだ!ハーハッハッハ!!」
“表面上是的。不过我其实是为了满足人类欲望而存在的,不折不扣的恶魔!哈——哈哈哈!!”
……なんか、よくわからないけど……いろいろとヤバそうだ。
……总觉得,不太明白……但是各种意义上都很不妙。
……よし。
……好。
逃げよう。
逃走吧。
――とはいえ散らばった紙と、このハムスターをそのままにしてはおけない。
——话虽如此,散落一地的纸,还有这只仓鼠也不能置之不理。
「さあ、願いを言うのだ、人の子よ!!」
“来,说出你的愿望吧,人类之子!”
とりあえず、声がでかい。
总之,声音好大。
「……あの、もう少し小さな声でしゃべってもらえますか?」
“……那个,你说话能不能稍微小声一点?”
「ん?なんでだ?」
“嗯?为什么?”
「今、もう夜なんで」
“现在已经是晚上了。”
「そうか、わかった」
“这样啊,我明白了。”
悪魔というのは、意外と聞き分けが良いようだ。
恶魔似乎意外地懂事。
「それと……いったん、元の姿にもどってもらってもいいですか?」
“还有……你可以暂时让我变回原来的样子吗?”
「なんでだ?」
“为什么?”
「えっと……あのイラストを、もう一回ちゃんと見たいかな、って」
“那个……我想再好好看看那张插画。”
「――まあ、よいだろう」
“——哎呀,好吧。”
ハムスターは再びうかび上がると、あっという間に一枚の紙きれへともどった。
仓鼠再次浮了起来,转眼间又变成了一张纸。
イツキはそれを手に取ると、急いで他の紙もかき集め、持っていたひもで一つに束ねた。
逸月拿起纸,急忙把其他的纸也收集起来,再用手上拿着的绳子捆成一叠。
順番は元通りではないだろうが、この際仕方ない。
虽然顺序不可能和原来一样,但是这种时候也没有办法。
「なっ!?貴様、我をだましたな!」
“什!?你小子骗我!”
おどろいたのは悪魔だけではなく、イツキの方もだった。
吓了一跳的不只是恶魔,就连逸月也一样。
よくもまあ、こんな簡単にひっかかってくれたものだ。
亏你这么轻易就上钩了。
紙束を元あった場所におしこんだ後、イツキは電気を消しつつ急いで外に出て、扉に鍵をかける。
把纸捆塞回原处后,逸月关了灯急忙走到外面,锁上了门。
ハムスターの鳴き声が扉の向こうから聞こえてきていたが、それを無視してイツキは図書室を飛び出し、階段をかけ上がり、202号室――自宅へと帰った。
门对面传来了仓鼠的叫声,但是逸月毫不理会,冲出图书室,跑上楼梯,回到202号房——自己的家。
母さんがイツキをでむかえてくれる。
妈妈上前迎接逸月。
「お帰り。ずいぶんとおそかったじゃない」
“你回来了。怎么这么晚呀。”
「うん……」
“嗯……”
「まあ、読書は悪いことじゃないわ。でもそろそろねなさい」
“算了,读书不是什么坏事。不过差不多该睡觉了。”
イツキは無言でうなずき、自分の部屋にもどると鍵の束を勉強机の上に放り投げ、そのままベッドにもぐりこんだ。
逸月无言地点了点头,回到自己的房间,把钥匙串扔到书桌上,然后直接钻进了被窝。
胸がドキドキしていたが、それもしばらくの間だけだった。
心跳加速,但也只是短暂的。
やがてそのまま、イツキはねむりについた。
不久,逸月就这样睡着了。


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4話
翌朝、まず昨夜のことは夢だったんじゃないかとイツキは考えた。
第二天早上,逸月的第一想法是昨晚发生的会不会只是一场梦。
だが、そうではないことにすぐに気がついた。
但是,他马上意识到并非如此。
……あるいは、まだ夢から覚めていないのかもしれない。
……或者,还没有从梦中醒来。
「目覚めたか、イツキよ」
“醒了吗,逸月啊。”
あの紙のハムスターが、まくら元にいた。
那只纸仓鼠就在枕边。
「……ええと、いくつか質問があるんだけど」
“……呃,我有几个问题。”
「言ってみよ」
“说说看。”
「なんでここにいるの!?それと、どうしてぼくの名前を知ってるの!?」
“你怎么会在这里!?还有,你怎么知道我的名字啊!?”
「ふむ。まず一つ目の問いについてだが、我は貴様とけいやくしたのだから、そばにいるのは当然のことだ。貴様は我を再び封印したつもりだったかもしれないが、一度けいやくが成立した以上、あんなひもはもう、無意味だ」
“嗯唔。首先关于第一个问题,我和你建立了契约,在你身边是理所当然的。你或许是打算再次封印我,但是契约一旦成立,那种绳子就没有意义了。”
「けいやくしたつもりなんてないけど」
“我没打算建立什么契约啊。”
「貴様は我にお願いごとをしたではないか。『小さな声でしゃべれ』『いったん元の姿にもどれ』とな。ぜいたくなことに二つもだ」
“你不是拜托过我吗?‘小声点说话’啦,‘先变回原样’啦。很奢侈地许了两种愿望呢。”
「まさか……あれでけいやくが成立しちゃったって言うの!?」
“难道说……契约就这样成立了!?”
おどろくイツキを無視して、悪魔は話を続ける。
无视吃惊的逸月,恶魔继续说道。
「もう一つ。貴様の名前だが、この部屋にある物のあちこちに書いてあったからな。それで覚えた」
“至于另一个问题。关于你的名字,这个房间里的东西到处都写着呢。所以我就记住了。”
「……えっと、君の方は……なんて名前だっけ?」
“……呃,你……叫什么名字来着?”
「マリーだ!」
“叫玛丽!”
「もしかして、メスのハムスターなの?」
“该不会是母仓鼠吧?”
「メスと言うな!女の子と言え!……まあ、性別としてはそういうことになるな」
“什么母不母的!要说女孩子!……算了,从性别上来说应该是这样的。”
「はあ……」
“哈啊……”
このマンション、ペットを飼うのはOKだっただろうか?
这个公寓允许养宠物吗?
(いやいや、問題はそんなことじゃないぞ)
(不不,问题不在这里)
まず、紙のハムスターが意思を持ってしゃべっていること自体、もういろいろとありえない。
首先,纸仓鼠有自己的意志还会说话,这件事本身就已经不可能了。
――そう、ありえない話なのだが、こうして現実にそれが起こっている以上、とりあえず受け入れなくては。
——没错,这应该是不可能发生的事,但是它既然真的发生在现实当中了,也只能选择接受。
できればだれかに相談したいところだけど……現状では難しい。それは、イツキが許可なくあの秘密の書庫に入ったという事実を白状することにもつながるからだ。
可以的话想找个人商量一下……但是现在的情况下很难办到。因为这样一来,就等于坦白了逸月未经许可进入那个秘密书库的事实。
伯父さんは優しいが、ああいう人が怒った時ほどものすごく怖かったりするものだ。
虽然伯父很温柔,但越是那样的人生气的时候就越可怕。
(……謝ってすむ問題じゃなさそうだし)
(……这不是道歉就能解决的问题。)
マリーがここにいるということは、つまりイツキは秘密の書庫から紙を一枚、勝手に持ち出したということになる。しかも現状、戻し方もわからない。
玛丽在这里,也就意味着逸月擅自从秘密书库拿了一张纸出来。而且现在也不知道怎么恢复。
そのことを伯父さんが知ったら――。
如果伯父知道了这件事——。
「あ、そうだ。鍵を返さないと」
“啊,对了。我得把钥匙还回去。”
ベットから降り、机の上に置いてある鍵を束を手に取る。
他下了床,拿起放在桌上的钥匙串。
「外に出るのか?イツキ」
“要外出吗?逸月。”
ドアノブに手をかけたイツキの背後から、マリーが話しかけてきた。
把手伸向门把手的逸月背后,玛丽开口问道。
「うん」
“嗯。”
「ならば、我もつれていけ。久びさに外の世界も見てみたい」
“那么,我也一起去吧。好久没去外面的世界看看了。”
「え?……いや、伯父さんに君の姿を見せるわけには――」
“诶?……不,我不能让伯父看到你的身影——”
「貴様に断る権利はないぞ。これはけいやくの対価と心得よ」
“你没有拒绝的权利。这是契约的代价和心得哦。”
「『対価』?」
“‘代价’?”
「悪魔がタダで望みをかなえると思ったか?それには必ず、対価が必要となるのだ。つまり、我が貴様の願いをかなえるのと引き換えに、貴様も我の願いをかなえなければならないということだ」
“你以为恶魔可以免费实现你的愿望吗?那一定是要付出代价的。也就是说,作为实现你愿望的交换,你也必须实现我的愿望。”
なるほど、たしかに物語に登場する悪魔というのは、たいていがそんな感じだ。
原来如此,故事中登场的恶魔,大多都是这种感觉。
もっともそういう場合は大体、巨万の富を得る代わりに命をうばわれる、みたいに大きな取引が行われるものだが。
当然,这种情况下,一般都是以牺牲性命换取巨万财富的大交易。
とりあえずこの小さな紙の悪魔に、イツキの命をうばう力があるようには見えなかった。
总之,这个小小的纸恶魔看起来并没有夺走逸月性命的力量。
(……見た目だけで判断しちゃいけないかもしれないけど)
(……也许不能光看外表来判断)
イツキはふり返り、マリーをなだめるようにこう言った。
逸月回过头,安抚玛丽说。
「わかった、わかったよ。……でも君を外に連れていくのは、もうちょっと後でもいいかな?」
“知道了,知道了……不过,我可以稍后再带你出去吗?”
「なぜだ?」
“为什么?”
「今は伯父に鍵を返しにいくだけなんだ。それが済んだらすぐここにもどってくる。朝ごはんも食べなきゃいけないからね。時間にしたらたぶん数分だ」
“我现在只是去把钥匙还给伯父而已。等事情办完以后我马上就回来。因为我还要吃早饭才行啊。按时间算的话大概也就几分钟吧。”
「……」
“……”
「というか、マンションの外にも出ないで、となりの部屋に行くだけだからね。君もそれじゃあつまらないだろう?」
“或者说,我不会离开公寓,只是去隔壁的房间。这么一会儿你不至于无聊吧?”
「たしかにな」
“的确。”
「鍵を返して、ごはんを食べ終わってから――改めていっしょに出かけようよ」
“等我把钥匙还回去,吃完饭以后——再一起出门吧。”
「……よかろう。では我はしばらくここで待っている」
“……好吧。那我就在这里等一会儿。”
どうやら納得してくれたようだ。
看样子接受了。
このマリーという紙のハムスターは自分を悪魔だと言っているが、正直イツキは彼女のことをあまり怖いとは感じていなかった。
这个叫玛丽的纸仓鼠说自己是恶魔,但说实话,逸月并不觉得她很可怕。
不思議な存在ではあるけど。
虽然是个不可思议的存在。
幸い、伯父さんはイツキが秘密の書庫に入ったことに、まだ気がついていないようだった。
幸运的是,伯父似乎还没有注意到逸月进了秘密书库。
(まあ……鍵もちゃんと閉めたし)
(哎呀……毕竟门锁也锁好了)
鍵の束を返し、適当に一言二言の会話をした後、自宅にもどって朝ごはんを済ませた。
把钥匙串还回去,随便聊了一两句之后,他就回到自己家吃了早饭。
そして……約束通り、マリーと町に出かけることになった。
然后……按照约定,和玛丽一起去了街上。


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5話
マリーはあまり近づいたりしない限りは、その身体が紙であることすわからない、ふつうのハムスターに見える。それでもやはり、ハムスターを持ちながら散歩するのは不自然だと彼女に言ったが、マリーにはちゃんとその対策があった。
玛丽看起来就像一只普通的仓鼠,只要不太靠近,就不会知道它的身体是一张纸。尽管如此,逸月还是对她说拿着仓鼠散步很不自然,但是玛丽也有自己的对策。
――イツキは今、少し変なうで時計を左うでにつけている。
——现在逸月的左臂上戴着一块有点奇怪的手表。
紙製のうで時計だ。これもまた遠目に見る限りは特に問題がない代物だが、その針はまったく動いていない。これはマリーが変形した姿なのだ。
纸制手表。从远处看没有什么问题,但是指针完全没有动。这是玛丽变形后的样子。
「マリーはなんにでも変身できるの?」
“玛丽可以变成任何东西吗?”
町を歩きながら、小声でうで時計にたずねる。
逸月走在街上,小声地询问手表。
「見たことがある物ならば、大体は可能だ。あまり大きかったり、小さかったりする物は無理だが」
“只要是见过的东西,基本上都可以。太大或太小的东西就不行。”
「じゃあ、うで時計も見たことがあるんだ。外に出るのは久しぶりだって言ってたけど」
“那么,你也见过手表吧。你还说好久没有出去呢。”
「そうだな。およそ……二十年ぶりくらいか」
“确实啊。大概……有二十年了吧。”
「あ、意外と最近なんだね。もっと大昔から閉じこめられているのかと思ってた」
“啊,意外的近呢。我还以为是很久以前就被关起来了。”
「最初に封印されたのは、あの建物が作られた時だがな」
“我最初被封印,是在那栋建筑物刚建成的时候。”
たしか……築百年くらいだって、ハルトが言っていた。
记得……这建筑快有一百年了吧,阳斗说过。
じゃあ、イツキ以外にも、かつてマリーを解き放ったものがいた――ということなのだろうか?
那么,除了逸月以外,曾经还有人解放了玛丽——是这样吗?
「ふうむ……しかし、思ったほど外の景色は変わっておらんな」
“嗯……不过,外面的景色变化并没有想象中那么大。”
マリーは不満そうにそうつぶやく。
玛丽不满地嘀咕着。
「いや……道路は昔より広くなったか。それに車の数も多い」
“不……道路比以前宽了吧。而且车也多了。”
「そう。なのに横断歩道には信号がないところも多いんだ。少し危ないよね」
“是啊。可是很多人行横道都没有信号灯,有点危险啊。”
実際、イツキは引っこしの翌日に、マンションの前の道であやうく自動車にひかれそうになったことがあった。
实际上,在搬家的第二天,逸月就在公寓前的路上差点儿被汽车撞到。
「あと……なんだかじめじめしておる」
“还有……总觉得潮乎乎的。”
「夏だからね。やっぱり紙だから、しめっているのは苦手なんだ?」
“夏天嘛。毕竟你是纸,受不了潮湿的地方吧?”
「まあな。それに火もダメだ。この身体はよく燃える」
“算是吧。而且火也不行。这身体很容易燃烧。”
そんな簡単に、自分の弱点を言ってしまってよいものなのだろうか?
这么轻易就说出自己的弱点,真的好吗?
どうにもこの悪魔には、けいかい心というものが足りていないように思える。
总觉得这个恶魔缺乏警戒意识。
「そもそもさ……なんでマリーは紙なの?」
“说起来……为什么玛丽是纸呢?”
「――逆に問おう。貴様はなぜ、悪魔が紙でないと思っている?」
“——那我就要问你了。你小子为什么就认为恶魔不是纸呢?”
「いや……それは。紙の身体を持つ悪魔が出てくる本なんて読んだこともないし」
“不……这个嘛,我看的书里没见过哪个恶魔是纸做的身体。”
「そう。我ら悪魔は空想上の生き物だ。本の中にしかいない存在なら、その身体が本と同様、紙製であったとしてもなんら不思議ではあるまい」
“没错,我们恶魔是幻想出来的生物。如果是只存在于书中的东西,那就算身体和书一样是纸做的也没有什么不可思议的。”
……よくわかったような、わからないような。
……好像懂了,又好像没懂啊。
「マリーを封印したのはだれ?なんであのマンションに?」
“封印玛丽的人是谁?为什么会在那个公寓里?”
「それは……話せば長くなる。かつて、あのいまわしき陰陽師たちが――」
“那就……说来话长了。过去那些讨厌的阴阳师们——”
「しっ!……ちょっと、話すのやめて」
“嘘!……等等,不要说话。”
女の子が一人、こちらに向かって歩いているのが見えた。
逸月看见一个女孩子正朝这边走。
ここは自動車の行き来こそ激しいが、歩行者の数はあまり多くない通りだ。
这里汽车来往频繁,但是行人不多。
それでもこうして人とすれちがうことは、当然ある。
尽管如此,像这样与人擦肩而过的情况当然还是有的。
うで時計と会話しているところを見られたら、確実に変なやつだと思われるだろう。
如果被人看到他和手表对话,肯定会被认为是个奇怪的家伙。
そのあたりはマリーも心得ているのか、素直にだまりこむ。
玛丽似乎也明白这一点,老实地保持沉默。
イツキと同い年くらいに見えるその女の子が、無表情のままで横を通り過ぎていった。
看上去和逸月差不多年纪的女孩面无表情地从他身边走过。
――と、思ったのもつかの間。
——逸月这么想着,也没多久。
「……ちょっと、あなた」
“……等一下,你。”
とつぜん女の子は立ち止まり、イツキに話しかけてきたのだ。
女孩突然停下脚步,向逸月搭话。
「え!?あ、はい。なんですか?」
“诶!?啊,好的。什么事?”
知り合いではない。初めて見る顔だ。
不认识这个人。是第一次见到的面孔。
イツキより少し背が高く、かみの毛の長さはこしくらいまであった。
她比逸月稍微高一点,头发的长度及腰。
女の子はしばらくの間、にらみつけるようにイツキの顔を見ていた。
女孩盯着逸月的脸看了好一会儿。
次に彼女が視線を落とし、うで時計を見つめだしたのでイツキは思わずドキッとする。
接着她垂下视线,盯着手表看,让逸月不由得吃了一惊。
「……」
“……”
だが、何かを不審に思ったのは、女の子の方だけではなかった。
但是,感到奇怪的不只是女孩。
(……なんだろう?この子。少し――不思議な感じがする)
(……是什么呢?这孩子。有点——不可思议的感觉)
目の前にいるのは彼女一人。
眼前只有她一个人。
だけどまるで、他にもだれか――いや。
但是,好像还有其他人——不对。
何かが、いるような。
好像有什么东西。
「……なんでもないわ。ごめんなさいね、急に話しかけたりして」
“……没什么。不好意思,突然跟你说话。”
イツキの思いをよそに、そう言って女の子はふり返り、向こうへと歩いていこうとした。
女孩不顾逸月的想法,说着就转过身,准备朝对面走去。
「ちょっと待って!」
“等一下!”
思わずイツキは、彼女を呼び止めてしまっていた。
逸月不禁叫住了她。


2025-06-07 04:22:52
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「……なに?」
“……什么?”
「あの……えっと……」
“那个……呃……”
なんと説明してよいか、わからなかった。
不知道该怎么解释才好。
でもやっぱり――なんか、変だ。
但是——总觉得很奇怪。
無言の時間がしばらく続いた後だった。
沉默持续了一段时间。
向こうから黒ぬりの自動車がやってきて、二人のそばで止まった。
对面开来一辆黑色汽车,停在两人身边。
運転席から中年の男性が一人、降りてくる。
一名中年男子从驾驶座上下来。
「ツグミおじょう様!こんなところおられましたか」
“鸫小姐!你在这种地方吗?”
あわてた様子で女の子にそう話しかけた。
那个人慌慌张张地对女孩说道。
「大変です。お父様が事故にあわれて……近くの病院に運ばれました」
“不好了。您的父亲出了车祸……被送到附近的医院了。”
「……へえ、そう」
“……诶,是吗。”
ツグミと呼ばれた女の子は冷静な顔で応じた後、こう聞きかえした。
被称为鸫的女孩一脸冷静地回答后,反问道。
「で、あなたはだれ?」
“那么,你是谁?”
「私はお父様の部下です。仕事で同行している途中で――」
“我是您父亲的部下。因为工作和他同行的途中——”
「あなたみたいな人、パパの職場で見たことないわ。それに……パパは今、海外出張中よ。なんでアメリカにいるはずのパパが、この近くの病院に運ばれるのかしら?」
“我从来没见过像你这样的人,而且……爸爸现在正在国外出差呢。为什么应该在美国的爸爸会被送到这附近的医院呢?”
「!?……」
“!?……”
「私をゆうかいするつもりなら、ちゃんと下調べをしておくべきだったわね」
“如果你打算绑架我,就应该事先调查清楚呢。”
その言葉を聞いて、イツキはハッとなる。
听到这句话,逸月恍然大悟。
そうだ――これはテレビとかでよく見る、ゆうかいシーンそのものじゃないか!
没错——这不就是电视上经常看到的绑架场面吗!
「……連れといっしょみたいだから、あらっぽいことはやめとこうかと思っていたが……こうなりゃしょうがねえ!」
“……因为你好像和同伴在一起,所以我还想着不要乱来呢……这样的话就没办法了!”
急に言葉づかいがあらくなった男は、ツグミのかたをつかみ、無理やり車の中におしこもうとした。
男人说话突然变得粗暴起来,抓住鸫的肩膀就要强行把她塞进车里。
助けなきゃ――イツキがそう思った直後だった。
要救人——就在逸月这么想的时候。
「ぎゃあ!!」
“呀啊!!”
男が悲鳴を上げながら、右手をおさえていた。
男人一边惨叫,一边按住右手。
「こいつ……かみつきやがった!」
“这家伙……咬人了!!”
女の子がこの男の手を?
是女孩抓住了这个男人的手?
そんなふうには見えなかったが。
看起来不像。
――グルルルル……。
——咕噜噜噜噜……。
かみついたのは、ツグミではなかった。
咬人的不是鸫。
彼女の胸元から、子犬らしき動物が頭を出し、キバをむいていたのである。
一只小狗模样的动物从她的胸口探出头来,露出獠牙。
(いつの間にあんなところに!?)
(什么时候钻到那种地方去的!?)
イツキがおどろき、男が顔をゆがめる中、ツグミはさけんだ。
在逸月大吃一惊,男人表情扭曲的时候,鸫叫道。
「行け!トモゾウ!!」
“去吧!友藏!”
それを合図に子犬は飛び出し、男におそいかかる。
以此为信号,小狗跳了出来,扑向男人。
「クソ!何が起こってる!?」
“可恶!发生什么事了!?”
不思議なことに、どうやら男には子犬の姿が見えていないようだ。
不可思议的是,男人似乎看不到小狗的身影。
「これは――シキガミか!」
“这是——式神吗!”
男がさけぶ。
男人叫道。
シキガミ?
式神?
「ほほう。これは……」
“嚯嚯。这是……”
マリーが興味深そうに、そうつぶやく。
玛丽兴致勃勃地小声嘀咕着。
「こんなところで仲間と出会うとはな」
“没想到会在这种地方遇到同伴。”
(仲間?)
(同伴?)
あの子犬のことを言っているのだろうか?
是在说那只小狗吗?
(そう言われてみれば――よく見るとあの犬、少し生き物っぽさがないというか……)
(这么说来——仔细一看,那只狗有点不像生物……)
身体の質感が、マリーと同じように……紙っぽい感じがする。
身体的质感和玛丽一样……感觉像纸。
子犬のこうげきにひるんだ男は、やがて車に乗りこみ――。
被小狗的攻击吓到的男人,终于坐进了车里——。
そのまま逃げ出してしまった。
就那样逃走了。
「ふう……」
“呼……”
息をはいた後、ツグミはイツキの方にふり向いた。
吐了一口气后,鸫转向逸月。
「危なかったね……大丈夫?」
“好危险啊……没事吧?”
イツキが声をかけると、彼女は平然とした感じでこう応じる。
逸月向她搭话,她若无其事地回答。
「別に……よくあることよ」
“没什么……常有的事。”
これがよくあることって……この子は一体、何者なんだろうか?
这也叫常有的事……这孩子到底是什么人?
子犬は、いつの間にかいなくなっていた。
小狗不知什么时候不见了。
「さっきの犬は?」
“刚才那只狗呢?”
イツキがたずねると、ツグミはおどろいた顔をする。
逸月询问后,鸫露出了惊讶的表情。
「あなた――トモゾウが見えたの!?」
“你——看到友藏了吗!?”
「え?まあ……うん」
“诶?哎呀……嗯。”
「やっぱりあなた、私と同じ……これね!」
“你果然和我一样……就是这个!”
ツグミはいきなり、イツキのうで時計を乱暴につかんだ。
鸫突然粗暴地抓住了逸月的手表。
「ひゃあ!?」
“呀啊!?”
マリーがびっくりしたような声を上げ、イツキのうでからはなれる。
玛丽像是受惊了一样叫出声,离开了逸月的手臂。
道路に落ちたうで時計は、本来の姿――紙のハムスターにもどっていた。
掉在路上的手表,变回了原本的样子——纸仓鼠。
「それが……あなたのシキガミなのね」
“那……是你的式神吧?”
「さっきの人も言っていたけど、そのシキガミってなんなの?」
“刚才那个人也说了类似的话,那个式神是什么?”
イツキがたずねると、ツグミは一枚の紙きれを取り出した。
听到逸月的询问,鸫拿出一张纸片。
真ん中に何か文字が書かれている。
中间写着某种文字。
――それはあの書庫にあったひもに書いてあったものと似ているようにも見えた。
——看起来和那个书库里写在绳子上的东西很像。
「『式神』のこと、知らずに使役しているの?紙に神を宿し、操る陰陽師の術――」
“你连‘式神’都不知道,就在使役它了?让神明寄宿在纸上,然后操作阴阳师的术——”
「『カミにカミ』を?ダジャレで言っているわけじゃあ……ないよね」
“‘神明(kami)在纸(kami)上’?你不是……在说冷笑话吧?”
「……」
“……”
「そんなんじゃないよ。このハムスターは――」
“不是的那样的啦。这只仓鼠是——”
「我は神などではない!紙ではあるが。我は悪魔だ!!」
“我不是神明!虽然是纸,但我是恶魔!!”
話の途中で、マリーがわりこんできた。
话没说完,玛丽就插嘴道。
「悪魔?……式神は鬼神だから、時にそう呼ばれることもあるけど……」
“恶魔?……式神是鬼神,所以有时也会被这么称呼……”
ツグミが首をひねる。
鸫歪着头。
「まあ似たようなものではあるな。……そうか、娘よ。式神を操るということは貴様、にっくき陰陽師の者だな!」
“算了,差不多吧。……对了,小姑娘。既然你能操纵式神,那就说明你是可恶的阴阳师啊!”
「よくしゃべる式神ね」
“好唠叨的式神呀。”
「式神ではない、悪魔だ!」
“不是式神,是恶魔!”
「……私は正式な陰陽師ではないわ。子孫ではあるけど、もう私の一族は陰陽師の仕事はしていないの。一応、その術法や知識を受けついでいるだけ」
“……我不是正式的阴阳师。虽然是他们的子孙,但我们一族已经不做阴阳师的工作了。我只是继承了他们的术法和知识。”
「ふん。だからあのような弱っちい犬ころぐらいしか操れんのか」
“哼。所以才会操纵那么弱的狗吗。”
「トモゾウは犬じゃないわ。オオカミよ」
“友藏不是狗。是狼哦。”
「なるほど、オオカミか。ちなみに我もネズミではなく、ハムスターだからな!」
“原来如此,是狼吗。顺便说一下,我也不是老鼠,是仓鼠啊!”
「――ねえ、あなた」
“——对了,你。”
ツグミがイツキの方に向き直る。
鸫重新转向逸月。
「式神でないというのなら、この子とはどうやって知り合いになったの?」
“既然它不是式神,那你是怎么认识这孩子的?”
「ええと……」
“呃……”
秘密の書庫でのことについて話してもいいものか、イツキはためらった。
该不该把秘密书库里的事说出来呢,逸月犹豫了。
「――まあいいわ。あなた、お名前は?」
“——算了,你叫什么名字?”
「遠藤イツキ」
“远藤逸月。”
「私は日比野ツグミ。今日はもう用事があって行かなくちゃいけないから、また今度ゆっくりお話しましょう。お住まいは?」
“我叫日比野鸫。今天有事先走一步,下次再慢慢聊。你住在哪里?”
「……あそこだよ」
“……在那里哦。”
イツキは遠くに見えるマンションを指さした。
逸月指着远处的公寓。
「あら、素敵な建物じゃない」
“哎呀,很漂亮的建筑嘛。”
ツグミの目にはそう見えるようだ。
在鸫的眼里似乎是这样的。
「あのマンションの202号室に住んでるんだ。……九月には引っこすけど」
“我住在那栋公寓的202号房……九月就要搬家了。”
「あらそう。じゃあそれまでに一度、お訪ねするわ。――じゃあね」
“哎呀是吗。那我在你搬家前会拜访一次的。——再见。”
ツグミはイツキとマリーに軽く手をふりながら、去っていった。
鸫向着逸月和玛丽轻轻挥手,离开了。
昨日の夜から、ずっと不可思議なことばかり起きている。
从昨天晚上开始,就一直发生着不可思议的事情。
悪魔、式神――そんなものには生まれてからこれまで、出会ったことがなかった。
恶魔、式神——有生以来还从没有遇到过这种东西。
この町が特別なのだろうか?
这个城市很特别吗?
それとも本当はこれがふつうで、これまでのイツキに知識がなさすぎただけなのだろうか?
还是说这是很普通的事,只是逸月以前的知识不足呢?
いろいろと考えながらも、しばらくイツキはマリーと共に町を散歩しつづけた。
尽管想了很多,逸月还是和玛丽一起在街上散步了一段时间。
途中、本屋を見つけてその前でいったん、立ち止まる。
途中,他看到一家书店,于是在前边停了下来。
(本……か。悪魔のことについて、あのマンションの本に何か書いてないかな?)
(书……吗。关于恶魔,那栋公寓的书里有没有写着什么呢?)
昼ごろになると、次第に暑さが厳しくなってきた。
到了中午,天气渐渐炎热起来。
マリーのぐちが増えはじめ、イツキもお腹がすいてきたのでマンションにもどることにした。
玛丽的抱怨开始增多,逸月的肚子也饿了,于是决定返回公寓。


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6話
母さんの手料理(昨日の夕飯の残り物だったが)を食べ終えたあと、イツキは一回の図書室へと向かった。
吃完妈妈亲手做的料理(虽然是昨天晚饭的剩菜)后,逸月前往一楼的图书室。
マリーもいっしょだ。
玛丽也在一起。
念のため、黒い扉も確認してみたが、やはりちゃんと鍵はかけられていた。
为了保险起见,他还确认了一下黑色的门,果然锁着。
悪魔について、この中にある紙になら詳しく書いてあるのかもしれないが、鍵はもう伯父さんに返してしまったし、たとえ入れたとしても、そもそもあそこにあった紙の文字、イツキには読めなかった。
关于恶魔,这里面的纸上或许写得很详细,但钥匙已经还给伯父了,而且就算能进去,逸月也看不懂里面那些纸上的文字。
今いるこの図書室にある本にも、古いものが多い。
现在这个图书室里的书也有很多是旧的。
そして秘密の方もそうじゃない方も、図書室になる本はもともとはイツキの伯父さんのものだったと伯父さんは言っていた。
而且伯父说过,不管是不是秘密的书,图书室里的书原本都属于逸月的祖父。
(お祖父さんが……マリーをふうじこめた『陰陽師』ってやつだったのかな?)
(祖父他……是封住玛丽的“阴阳师”吗?)
いや、それはないな。
不,不可能。
おじいさんがたとえ今も生きていたとして、さすがに百歳を超えるような年じゃなかったはずだ。
就算祖父现在还活着,也应该没有超过一百岁。
(とにかく、悪魔を関する本を探してみよう)
(总之,去找找关于恶魔的书吧)
――それらしきタイトルの本をいろいろとあさってみたが、その成果はたいしたものにはならなかった。
——找了很多类似标题的书,但是都没有什么成果。
あまりにも難しい内容の本や、英語で書かれた本はイツキには読めない。
内容太难的书,或是用英语写的书,逸月都看不懂。
小学生にもわかる範囲で探したところで、たかがしれていたのだ。
在小学生能看懂的范围内找了一遍,结果不过如此。
悪魔については、イツキがもともと持っている知識以上のことは得られなかった。
关于恶魔,逸月获得的全都是原本就拥有的知识。
だけど陰陽師に関しては、少しだけ詳しく書いてある本を見つけることができた。
不过他还找到了一本详细介绍阴阳师的书。
……「陰陽師」とは、もともとは大昔の日本における役職の一つだったようだ。
……“阴阳师”原本是很久以前日本的职位之一。
彼らは中国から伝わった「陰陽五行思想」を元に、独自のうらないや政を行い、時の権力者の信頼をえていたらしい。
他们以中国传来的“阴阳五行思想”为基础,进行独立的占卜和政治活动,似乎得到了当时掌权者的信赖。
その陰陽師が使役していたのが「式神」だ。
那些阴阳师使役的就是“式神”。
式札と呼ばれる和紙に鬼の神様を宿し、それを使うことで大きな力を操っていた。
鬼神寄宿在被称为式牌的和纸上,通过使用它可以操纵巨大的力量。
式神は使役されるとき、さまざまな動物や化け物へと変身し、敵をたおしたり奇跡を起こしたりする。
式神被使役的时候,会变身成各种各样的动物和怪物,打倒敌人或引发奇迹。
……まさにイツキが先ほど目撃した、ツグミの行動がそれだったわけだ。
……正是逸月刚才目击到的,鸫的行动。
「ねえ」
“我说啊。”
イツキはマリーにたずねる。
逸月问玛丽。
他の人が周りにいないので、今のマリーはハムスターの姿だ。
周围没有其他人,所以现在的玛丽是仓鼠的样子。
「マリーのそのからだも……その式札ってやつなの?」
“玛丽的身体……也是那个式牌吗?”
「似たいようなものではあるな。だが先ほども言ったように、我は式神ではなく、悪魔だ。特別な力を持った陰陽師に命令されずとも自由に動けるし、姿を変えることもできるのだ。」
“差不多吧。不过我刚才也说过,我不是式神,而是恶魔。不需要拥有特别力量的阴阳师的命令就可以自由行动,也可以改变姿态。”
「ただ、あの犬――小さなオオカミは、ツグミさんをおそった男にはみえれいなかったようだった」
“不过,那条狗——小狼,对那个袭击鸫的男人来说好像是看不到的。”
「ふつうの人間には、式札は見えてもそこに宿る式神の姿まで見ることはできん。ちなみに貴様だ今、見ているこの我の姿も本来のものではない。貴様はあくまで我が宿った紙をみているにすぎないのだ」
“一般人即使看得到式牌,也看不见寄宿在那里的式神。顺便一提,你现在看到的我的样子也不是本来的样子,你只是在看被我寄宿的纸而已。”
「でも、ぼくには……あのオオカミの姿が見えた」
“可是,我……看到了那只狼的身影。”
「それこそ、我とけいやくした証なのだ。貴様は悪魔と関わったことで「見えないモノを見る力」を手にれた、というわけだな」
“这正是你和我建立契约的证明。你因为和恶魔有关系而获得了力量,‘能看见看不见的东西’,就是这么回事了。”
ツグミを初めて見た時に感じた変な感じは、きっとその力のせいだったのだろう。
第一次看到鸫时感受到的奇怪感觉,一定是因为那个力量吧。
……マリーも、その気なら彼女の言う「本来の姿」になれるのだろうか。
……玛丽如果愿意的话,也能变成她所说的“本来的姿态”吗?
それはどんな姿なのだろう?
那是什么样的姿态呢?
やっぱり悪魔らしく、おそろしい見た目なのか。それとも――。
果然很像恶魔,看起来很可怕吗?还是——。
「誰と話しているんだい?」
“你在和谁说话?”
とつぜん、伯父さんが図書室に入ってきた。
突然,伯父走进了图书室。
考え事をしていたせいで足音が近づいてくるのに気が付けなかったのだ。
因为在想事情,所以没有注意到脚步声的接近。
とっさにマリーは、机の下にかくれる。
玛丽立刻躲到了桌子底下。
「あ……いやその、独り言です」
“啊……那个,自言自语。”
そう言ってごまかそうとしたが、伯父さんの視線はイツキが持っている本に向いていた。
虽然想用这句话蒙混过去,但伯父的视线已经落在了逸月手里的书上。
「『陰陽師の歴史と方術』……ずいぶんと難しそうな本を読んでいるね」
“《阴阳师的历史与方术》……你看的书挺难懂的啊。”
「ええと、この前見た映画に、この陰陽師っていうのが出てきたので」
“呃,因为之前看的电影里有这种阴阳师出场。”
「そうかい。たしかに陰陽師は、日本の歴史物やファンタジーにはよく登場するからね」
“是吗?阴阳师确实经常出现在日本的历史书和幻想小说里。”
そう応じる伯父さんの顔は、こころなしかいつもより険しいように思えた。
不知是不是心理作用,总觉得伯父的表情比平时严肃。
「ても――本当の理由はちがうんじゃないかい?」
“可是——真正的理由应该不是这个吧?”
伯父さんは鍵の束を取り出し、次に奥の黒い扉を指さした。
伯父取出钥匙串,接着指了指里面的黑门。
「イツキくん。君は……昨夜、あの中に入ったね?」
“逸月,你……昨天晚上进了那里面吧?”
「え!?」
“诶!?”
なんでばれたんだろう?
为什么会暴露呢?
その理由を伯父さんは言わず、代わりに机の下に向かってこう呼びかけた。
伯父没有说明理由,而是对着桌子下面这样喊道。
「マリー、出てくるんだ。そこにいるのはわかっている」
“玛丽,快出来。我知道你在那里。”
「……フン。マサキか。相変わらず目ざといヤツだ」
“……哼。正树吗。你还是那么眼尖。”
マリーは机の下から飛び出し、そのままイツキの肩の上に乗った。
玛丽从桌子下面跳了出来,就那样骑在了逸月的肩膀上。
彼女と伯父さんは、どうやら知り合いのようだ。
她和伯父好像认识。
別におかしいな話でもない。伯父さんはあの書庫に入れる、唯一の人間なのだから。
这并不是什么奇怪的事。毕竟伯父是唯一能进那个书库的人。
それでもイツキはこれまで、伯父さんはマリーの存在に気がついていないんじゃないかと、どこかで思っていた。
尽管如此,直到刚才为止,逸月还是觉得伯父说不定没有注意到玛丽的存在。


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7話
伯父さんはイツキをしかったりはしなかった。
伯父没有责备逸月。
むしろ黒い扉の鍵を開けて、秘密の書庫の中へと導いてくれたのだ。
反而打开黑门的锁,带他进入了秘密书库。
「――君が見た通り、ここには数多くの『紙』がおさめられている」
“——正如你所看到的,这里有很多‘纸’。”
伯父さんは紙束の一つを取り出す。
伯父拿出一叠纸。
「これらは、まだ『本』になっていない物語なんだ」
“这些都是还没有出版成‘书’的故事。”
「物語?」
“故事?”
イツキはそこに書かれている文字が読めなかったことを、伯父さんに話した。
逸月跟伯父说自己看不懂写在上面的文字。
「この中には昔の文字で書かれているものもあるからね……でも、これならどうだい?」
“这里面也有一些是用古代文字写的……不过,这个怎么样?”
伯父さんは持っていた紙束のひもをほどき、イツキに手わたしてきた。
伯父解开手上那叠纸的绳子,把它递给了逸月。
「ひも、取っちゃってだいじょうぶなの?」
“绳子拿掉了不要紧吗?”
「ああ。君はもう――けいやくをしてしまっているようだからな」
“啊啊。因为你——好像已经建立了契约啊。”
紙を一枚、めくってみる。
逸月试着翻开一张纸。
それはやはり手書きの文章だったが、前に見たものとはちがって今風の言葉で書かれていたので、ちゃんと読むことができた。
那同样是手写的文章,但与之前看到的不同,是用时下流行的语言写的,所以能够很好地读懂。
難しい漢字などもない、子供が書いたような文字だ。
就连难写的汉字都没有,就像小孩子写的一样。
その内容は、いわゆる「ぼうけんもの」だった。主人公の勇者が悪魔を打ちたおすため、さまざまな困難を乗りこえていく――森からモンスターを追いはらい、悪い国王をこらしめる……そんな感じの物語だった。
内容是所谓的“冒险家”。主人公勇者为了打败恶魔,克服了各种各样的困难——从森林中驱逐怪物,惩罚邪恶的国王……就是这样的故事。
主人公がたおすべき悪魔は、どうやら合計で七体いるらしい。
主人公应该打倒的恶魔,好像总共有七个。
そのうち一体の姿が、さし絵でえがかれていた。
其中一只的样子用插图画了出来。
角の生えた、ヤギのイラスト――マリーの絵とはちがい、それはスミではなく鉛筆でえがかれているようだった。
画着一只长着角的山羊——与玛丽的画不同,那似乎不是用墨笔画的,而是用铅笔。
そして――
然后——
メエー。
咩——。
絵から聞こえてきた鳴き声。
从画里传来了叫声。
直後にその絵がえがかれた紙が宙にうきあがり、変形していく。
紧接着,画着那幅画的纸飘到空中,开始变形。
やがて紙は、マリーより少し大きいくらいの、ヤギの姿になった。
不一会儿,纸变成了一只比玛丽稍大的山羊。
「――マサキか。久しいな。お前がいながら我をこの少年に呼び出させるとは、どんな気まぐれだ?」
“——正树啊,好久不见了。有你在却让这个少年把我叫出来,这是怎样的心血来潮啊?”
「こんにちは、ジル。いろいろと事情があってね」
“你好,吉尔。因为发生了很多事情。”
「まあよい。さて……少年よ」
“算了没事。那么……少年。”
ジルはイツキの方を向く。
吉尔转向逸月。
なんとなくマリーよりも悪魔らしい、いかめしさが感じられるような気がした。
总觉得他比玛丽更像恶魔,更严肃。
「よくぞ我を呼び出してくれた。今こそ我とけいやくし――夜の銀座へとくり出すのだ!」
“太好了,把我叫出来,现在就和我建立契约——出发去夜晚的银座吧!”
「ぎ、銀座!?」
“银,银座!?”
「そうだ!そこで可愛らしい女の子たちと飲んでさわいで歌って、その後は――」
“没错!在那里和可爱的女孩子们喝酒唱歌,然后——”
イツキの肩に乗っていたマリーが大声で笑い出す。
坐在逸月肩上的玛丽大声笑了起来。
「ハハハ!あいにくだったな、ジルよ。こいつはもう、我が先にもらったのだ!」
“哈哈哈!真不巧啊,吉尔。这家伙已经被我抢先得到的了!”
(もらった、って……人を持ち物みたいな言い方しないでほしいな)
(得到了……不要把人说得像所有物一样啊)
イツキの思いを無視して、悪魔たちの会話は続く。
无视了逸月的想法,恶魔们的对话还在继续。
「なん……だと!?ならばなぜ、わざわざ我を呼び出した?」
“你说……什么!?那为什么还特地把我叫出来?”
「さあ。そうやってくやしがる、お前のみじめな姿を見物するためかもな」
“谁知道。可能是为了看你那不甘心的悲惨模样吧。”
「クッ、あいかわらず生意気な小娘だ。あらゆる女性に愛を注ぐのが『しきよくの悪魔』たる我の心構えだが、お前だけは別だ、マリー!」
“呜,你还是那个自大的小丫头。对所有女性倾注爱情是身为‘色欲恶魔’的我应有的觉悟,但只有你不一样,玛丽!”
「それはありがたい。我も貴様のような老人の相手はごめんだからな」
“那太好了。我也不想和你这样的老人打交道。”
にらみあう二体をながめながら、伯父さんがイツキに話しかける。
望着互相瞪视的两只,伯父对逸月说道。
「どうだい?悪魔といっても、たいして怖いものでもないだろう?」
“怎么样?恶魔也没什么可怕的吧?”
「ええ……まあ」
“哎哎……算是吧。”
「たとえ封印を解かれても、彼らは本来の力を発揮できない。紙にえがかれている悪魔たちは想像上の存在にすぎないんだ。そんな彼らが現実にえいきょうをおよぼすような能力を使うことはできないし、けいやくしたからといってすぐに何か害があるわけでもない」
“即使封印被解除,他们也无法发挥本来的力量,纸上描绘的恶魔们只不过是想象中的存在。这样的他们不能使用影响现实的能力,即使契约也不会立刻造成什么伤害。”
そこで伯父さんの顔が、またわずかに険しくなる。
这时伯父的表情又变得有些严峻。
「すぐには――だけとね」
“不过——只是立刻呢。”
その言い方に、イツキは急に不安な気持ちになった。
听了他的说法,逸月突然感到不安。
「じゃあ、いずれ何かが起こるってことですか?」
“那么,总有一天会发生什么事吗?”
「君も本をよく読むならわかると思うが……、古今東西、悪魔とけいやくした人間の行く末というのは――」
“如果你也经常看书的话,应该就会明白……古今中外,与恶魔建立契约的人的结局——”
「……大体が、不幸な決末になりますね」
“……基本上都是不幸的结局呢。”
「悪魔とはそういうものなんだ。少なくとも人にとって悪魔というのは、不幸を呼ぶ存在として語りつがれている。そしてそれは、人の書いた物語の中から生まれた『紙の悪魔』であっても例外じゃない」
“恶魔就是这样的东西。至少在人类的传闻中,恶魔都是招来不幸的存在。就算是从人类所写的故事中诞生的‘纸恶魔’也不例外。”
「つまり……ぼくにもいずれ、何らかの不幸が訪れるかもしれない、ってことですか?」
“也就是说……我总有一天也会遭遇不幸,是吗?”
「それがどのようなものかは、おれにもわからない。命にかかわるようなことかもしれないし、石につまずいて転ぶ程度ですむ可能性もある。だが、悪魔とのけいやくを解除しない限り、不幸は必ず訪れるんだ。そして――」
“我也不知道会是什么事。有可能会危及生命,也有可能只是被石头绊倒而已。但是,只要不解除与恶魔的契约,不幸就一定会降临。而且——”
「……」
“……”
イツキはゴクリとつばを飲みこんだ。
逸月咽了一口唾沫。
「――『裁き』を受けることになる」
“——会受到‘审判’。”
「裁きって……だれにですか?」
“审判……被谁?”
「……『冥界の主』。悪魔たちの王だとも言われているが、どんな姿をしているのかはだれも知らない。おれも、君のお祖父ちゃんも先祖代々、その話を受け継いできただけで、実際に冥界の主を見たことはないんだ」
“……‘冥界之主’。据说他是恶魔之王,但谁也不知道他长什么样子。我和你祖父都只是一代代传承着这个传说,并没有真正见过冥界之主。”
伯父さんの顔はまじめそのものだ。
伯父的表情很认真。
けっして冗談を言っているようには見えなかった。
看起来绝不像在开玩笑。
「マ、マリー!」
“玛、玛丽!”
怖くなったイツキは、まだジルとにらみあっていたマリーに話しかける。
害怕起来的逸月,向还在和吉尔瞪眼的玛丽搭话。
「何か用か?」
“有什么事吗?”
「今すぐけいやくを解除して!ぼく、不幸になんかなりたくないよ!」
“现在马上解除契约!我不想变得不幸!”
「――それはできぬ」
“——办不到。”
「なんで!?もう望みの対価ははらったはずだろう?」
“为什么!?我不是已经支付了愿望的代价吗?”
「……」
“……”
マリーの代わりにイツキの質問に答えたのは、ジルだった。
吉尔代替玛丽回答了逸月的问题。
「少年よ。残念だがけいやくの解除は、悪魔一体だけでは行えないのだ」
“少年啊。很遗憾,单靠恶魔是无法解除契约的。”
「どうして!?その理由は!?」
“为什么!?总有个理由吧!?”
「理由も何もない。それが――冥界の主の定めた『ルール』なのだ」
“没有任何理由,这就是——冥界之主定下的‘规则’。”
「……じゃあ、どうすればいいのさ?」
“……那我该怎么办?”
「けいやく解除の方法……それは、紙に宿りし七体の悪魔がそれを認める必要がある」
“解除契约的方法……就是必须要寄宿在纸上的七个恶魔承认才行。”
七体の悪魔……。
七个恶魔……。
ジルが出てきた紙束に書かれていた物語にも、その存在についての内容があった。
吉尔出现的那叠纸上所写的故事里,也有关于他存在的内容。
「つまり……マリーとジル以外にもあと五体、悪魔が必要ってこと?」
“也就是说……除了玛丽和吉尔之外,还需要五个恶魔?”
「そのうち三体は、我らと同様にこの書庫にいる。ブタの『ウラド』、サメの『ラハブ』、それにミミズクの『セイラム』だ」
“其中三个和我们一样在这个书库里,分别是猪‘乌拉德’、鲨鱼‘拉哈布’和猫头鹰‘塞勒姆’。”
「全員、動物の姿なんだね。残り二体はどこに?」
“全部都是动物的样子啊。剩下的两只在哪里?”
「……わからぬ。というよりも――『まだ物語に書かれていない』と言った方が正しいのかもしれんな」
“……不知道。应该说——‘还没写进故事里’比较正确吧。”
「それじゃあ……解除はできないってこと!?」
“那就是……无法解除了!?”
「そういうことだ。いさぎよくあきらめ、冥界の主の裁きを待つことだな。クックック……」
“就是这样。干脆放弃,等待冥界之主的制裁吧。哼哼哼……”
おし殺すような笑い声をあげるジル。
吉尔发出的笑声好像能把人压死一般。
そこ横っ腹向いてしまったジルの代わりに、伯父さんがその方法について説明しはじめた。
伯父代替侧过身去的吉尔,开始说明这个方法。
「たしかにジルの言う通り、解除のための悪魔は足りていない。だけどそれを補うための手段もまた、おれたちの一族には伝えられているんだ」
“的确如吉尔所言,用来解除的恶魔还不够。但我们一族也传承着用来弥补的手段。”
伯父さんはいったん秘密の書庫を出ると、しばらくして新しい紙束を持ってもどってきた。
伯父离开了秘密书库,不一会儿又带了一叠新纸回来。
それは真新しい、何のへんてつもない白紙の束のようだった。
那是一捆崭新的、毫无特色的白纸。
「けいやく者自身が、この書庫の紙に新たなページを加えること――君が物語の続きを書くんだ、イツキくん」
“契约者自己在书库的纸上添加新的一页——你来写故事的后续,逸月君。”


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「え!?」
“诶!?”
「ページ数は自由だ。多くても少なくても、そのこと自体は問題にならない。重要なのは……その内容を、悪魔たちに認めてもらうことだ」
“页数是自由的。多也好少也好,这本身都不成问题。重要的是……要让恶魔们承认内容。”
「でも、その悪魔の数が足りないって、さっき――」
“可是,刚才说那个恶魔的数量不够——”
「この条件ならば、悪魔は五体でいい。ただ内容に関しては別に二つ、決まりごとがあるんだ」
“如果是这个条件的话,恶魔只要五个就可以了。不过关于内容,还有两个规定。”
「……」
“……”
「まず一つ目は、書く物語はけいやく者の体験にもとづいた内容でなかければならない。そしてもう一つは、その内容が以前の話とつながっていることだ」
“第一点,写的故事必须基于契约者的体验。还有一点,内容必须和以前的故事联系起来。”
「以前の話、っていうのは――」
“以前的故事,指的是——”
「もちろん、この書庫にある紙に書かれた物語だ。これらは全て、作者はちがえどちゃんとひとつながりのストーリーとなっているんだよ」
“当然是这个书库里的纸上写的故事。这些故事虽然作者不同,但都是一个连贯的故事。”
だとしたら――イツキにとって困った問題が、一つあった。
如果是这样的话——对逸月来说,还有一个棘手的问题。
「まずはここにある紙の物語を全部読めってこと?でも、ぼくには読めない文字も書かれてるし……」
“你的意思是先把这里的纸上所写的故事全部读一遍?但是,上面也写着我看不懂的文字……”
「それについては――伯父さんに任せておきなさい」
“这件事——就交给伯父吧。”
伯父さんは自分の胸をぽんと軽くたたいてみせた。
伯父轻轻拍了拍自己的胸脯。
「いい物を用意してあげるから」
“我给你准备好东西。”
「……あの、ですね」
“……那个,就是说啊。”
「なんだい?」
“什么事?”
この状況を解決するための別の方法を今、イツキは思いついたので、それを提案してみることにした。
刚才,逸月想到了另一个解决这个状况的方法,决定试着提议一下。
「ここにある紙を、そこに宿る悪魔たちもふくめて……全部燃やしたりしたら、けいやくも解除できたりしませんかね?」
“如果把这里的纸,包括寄宿在那里的恶魔们……全部烧掉的话,契约不就可以解除了吗?”
それを聞いたマリーとジルが、同時にびっくりした表情になった。
听到这句话的玛丽和吉尔同时露出惊讶的表情。
「な、なんとばち当たりな……」
“真,真是遭天谴的想法啊……”
「貴様、我らを焼き殺そうというのか!?この……恩知らずが!!」
“混蛋,你想烧死我们吗!?你这个……忘恩负义的家伙! !”
そんなふうに言われても、今のところは迷惑しかかけられていない気がする。
虽然这么说,但是她现在给人感觉就是只会添麻烦。
伯父さんも少し困った顔をしていた。
伯父也露出有点为难的表情。
「イツキくん……それはさすがに彼らがかわいそうだよ」
“逸月……那他们也太可怜了。”
「悪魔相手に同情する必要もないと思いますが」
“我觉得没必要同情恶魔。”
「いやはや、今どきの子はドライだね。……それとも、やっぱりキョウコに似たのか……」
“哎呀哎呀,现在的孩子都很冷漠呢。……还是说,果然很像恭子吗……”
ポリポリと頭をかきながら、伯父さんは次にこう言った。
伯父一边刷刷地挠着头,一边继续说道。
「……実は、先ほど言いそびれたんだが――けいやく者はそのけいやくを解除するまで、ある『のろい』を受けてしまうんだ」
“……其实,刚才没来得及说——契约者在解除契约之前,会受到某种‘诅咒’。”
「のろい!?」
“诅咒? !”
ヤバそうな言葉がとつぜん出てきたぞ。
突然冒出这么一个很不妙的词。
そういうのこそ、まっさきに忠告してくれるべきじゃないんだろうか。
这种事,难道不应该在最开始就提出忠告吗?
「マリーとけいやくしてから、これまでとはちがう……不思議なことがあったんじゃないか?」
“和玛丽建立契约之后,是不是发生了和以前不一样的……不可思议的事?”
伯父さんの問いに対し、イツキは首を横にふろうとした。
面对伯父的问题,逸月摇了摇头。
……が、途中で思い直した。
……但是,中途改变了想法。
「――式神」
“——式神。”
「ん?」
“嗯?”
「他の人には見えないものが見えるようになったみたいです。というか、マリーみたいな特別な存在を感じ取れるようになった感じで……」
“我好像能看见别人看不见的东西了。或者说,能感觉到玛丽那样特别的存在……”
「それを知ることになった、具体的な何かがあったということかな?」
“知道这件事,是有什么具体的原因吗?”
イツキはツグミと出会ったことについて話した。
逸月说了和鸫相遇的事情。
伯父さんはフムフムとうなずきながら、それを聞いていた。
伯父一边“嗯嗯”地点着头,一边听着。
「そうか。日比野さんのおじょうさんと会ったんだね」
“这样吗。你遇到了日比野先生家的小姑娘啊。”
「!ツグミさんと知り合いなんですか?」
“!你和鸫小姐认识吗?”
「正確には、ツグミちゃんのお父さんと、だな。彼とは同じ大学に通っていた仲でね。なるほど、君が陰陽師のことを調べていたのは、それも理由だったわけか」
“准确地说,是和鸫的父亲。我们是上同一所大学的关系。原来如此,你调查阴阳师的事情,也是因为这个原因吗?”
「まあ、そういうことです」
“哎呀,就是这么回事。”
「……だがね、おれが言った『のろい』というのは、そのことじゃないんだ」
“……但是,我所说的‘诅咒’,并不是指那个。”
「ちがうんですか!?」
“不是吗!?”
じゃあ、何だというのだ。
那到底说的是什么?
伯父さんは持っていた束から紙を一枚、引きぬいてイツキにわたした。
伯父从手里的纸叠里抽出一张,递给了逸月。
「試しにだ。それを破いてもらってもいいかな?」
“试一试,可以把它撕碎吗?”
「いいんですか?」
“可以这样做吗?”
「構わんよ」
“没关系的。”
イツキは言われた通り、紙をたてに引きさいてみようとした。
逸月照他说的,试着把纸竖着撕开。
……が、できなかった。
……但是,做不到。
「――あれ?なんだろ、すごく固いですね、これ」
“——咦?什么情况,这纸好硬啊。”
「そんなことはないさ」
“没那回事。”
伯父さんは紙をイツキから取り上げると、いとも簡単にそれを破り捨ててみせる。
伯父从逸月手里拿起纸,轻而易举地撕碎扔掉给他看。
「別におれが力持ちってわけじゃない。どこにでもあるふつうの紙さ」
“我并没有用力。这只是随处可见的普通纸张。”
「じゃあ、どうして――」
“那为什么——”
「それが『のろい』なんだ。君は悪魔とけいやくしている間、あらふる紙を傷つけたり
、燃やしたりすることはできない」
“这就是‘诅咒’。你在和恶魔缔结契约的期间,不能伤害或者焚烧任何纸。”
イツキはおどろいたが、同時に少し安心もした。
逸月吃了一惊,同时也稍稍安心了一些。
思ったよりも、たいした「のろい」じゃなかった!
不是想象中那么不得了的“诅咒”!
でも、なんでそんな「のろい」があるんだろう?
但是,为什么会有这样的“诅咒”呢?
(……あ、そうか!)
(……啊,是吗!)
その理由には、すぐに気がついた。
他立刻意识到了其中的原因。
悪魔たちは紙製だ。
恶魔们都是纸做的。
だから、けいやく者が自分たちを傷つけたりしないように――。
所以,为了不让契约者伤害自己——。
そんな「のろい」をかけた、というわけだ。
就施加了这样的“诅咒”。
たいしたことはない、とは思ったが、やはり不便なことに変わりはない。
虽然觉得没什么大不了的,但终归还是不方便。
新学期になったら、図工の時とかに困りそうだ。
到了新学期,做手工的时候会很困扰。
それと――書庫の紙を燃やすことはできそうにない。
而且——也不能烧掉书库的纸张。
伯父さんの様子を見る限り、それを代わりに引き受けてもくれないだろう。
看你伯父的样子,应该也不会替他去做吧。
ともかく、伯父さんの言う通り物語の続きを書くこと以外に解決方法はなさそうだ。
总之,除了照伯父说的继续写故事之外,似乎没有其他解决方法。
だが、イツキは本を読むのは好きでも、物語を書いたことなんてなかった。
但是,逸月虽然喜欢读书,却从未写过故事。
自分にできるだろうか――少し心配になっていた、その時だ。
自己能行吗——他有点担心,而就在这个时候。
「フフフ……面白そうな話をしているじゃない」
“呵呵呵……听起来挺有趣的嘛。”
マリーでも、ジルでも、伯父さんでもない。
不是玛丽,不是吉尔,也不是伯父。
別の新たな声が、棚の紙束から聞こえてきた。
另一个新的声音从架子上的纸叠里传来。


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(だれ!?)
(谁!?)
イツキが声を上げるよりも前に、一枚の紙が棚から飛び出してくる。
在逸月出声之前,一张纸从架子上飞了出来。
それは先ほどのジルと同じように、変形をはじめ――。
它和刚才的吉尔一样,开始变形——。
サメの姿になった。
变成了鲨鱼的样子。
「ズドラーストヴィチェ!」
“兹德拉斯特维切!”
な、なんだ?
什,什么?
何かのじゅもんだろうか?
是什么咒语吗?
混乱するイツキに、伯父さんが説明してくれた。
伯父向混乱的逸月解释道。
「ロシア語で『こんにちは』って意味だよ」
“在俄语里是‘你好’的意思哦。”
このサメが他の悪魔たちとちがうのは、変身後も宙にういたままでいることだ。
这条鲨鱼与其他恶魔的不同之处在于,它在变身后仍然漂浮在空中。
空飛ぶサメ……。
飞翔的鲨鱼……。
気になることは、もう一つあった。
还有一件事让他很在意。
「また、悪魔が出てきた!?ひもをほどいたりしてないのに!」
“恶魔又出来了!?明明没有解开绳子!”
「わたくしめをそこのネズミやヒツジといっしょにしないでいただきたいわね」
“请不要把我和那边的老鼠还有绵羊相提并论呢。”
マリーとジルが同時に反応する。
玛丽和吉尔同时做出反应。
「ネズミじゃない、ハムスターだ!」
“不是老鼠,是仓鼠!”
「我もヒツジではない、ヤギだ!あのような家畜といっしょにするでない!」
“我也不是绵羊,是山羊!不要把我和那种家畜相提并论!”
それを無視して、サメは話を続ける。
鲨鱼无视它,继续说着。
「わたくしめはずっと、封印などされておりません」
“我一直都没有被封印。”
「じゃあ、なんでここに――」
“那你为什么会在这里——”
それに答えたのは伯父さんだった。
回答逸月的是伯父。
「ラハブは変わった悪魔でね。自らの意思でここに居続けている。人間とのけいやくも望んでいないみたいだ」
“拉哈布是个奇怪的恶魔,她是靠自己的意志一直待在这里的,似乎也不希望与人类订下契约。”
ラハブはまた「フフフ」と上品な笑い声をあげる。
拉哈布又发出“呵呵呵”的优雅笑声。
この悪魔もメス――女性のようだが、マリーよりもずっと大人っぽい感じだ。
这个恶魔也是雌性——虽然看起来像女性,但是感觉比玛丽更成熟。
「よく見たら、昨晩もここに来たぼうやではありませんか。二日連続でやってくるとは……よほどこの場所が気に入ったようですねえ」
“仔细一看,这不是昨晚也来过这里的小鬼吗?连续两天都来……看来很喜欢这个地方呢。”
伯父さんが少しあきれながらため息をつく。
伯父有点吃惊地叹了口气。
「これで三体が出てきたわけだな。もういっそのこと、他の二体も呼んでしまおうか」
“这下出来三个了啊。干脆把另外两个也叫来吧。”
しかし、ラハブは目を閉じて首を横にふった。
但是拉哈布闭上眼睛摇了摇头。
……魚が目を閉じるのも、首をふるのもイツキは初めて見た。
……鱼闭上眼睛也会,摇头也好,逸月都是第一次看到。
「ウラドはこのままねかせておきましょう。彼を起こすといろいろとめんどうです」
“就让乌拉德继续睡吧。叫醒他会有很多麻烦。”
「たしかに。また、食えない食べ物を求めて暴れ出したらかなわんからな」
“没错。要是再为了吃不了的食物而发狂,那可就惨了。”
「それを……フフフ、セイラムも無理ですよ。だって彼は――ここにいませんもの」
“这个……呵呵呵,塞勒姆也不行啊。因为他——不在这里嘛。”
「……何だと!?」
“……你说什么!?”
伯父さんの顔つきが変わった。
伯父的脸色变了。
あわてた様子で棚に近づき、紙束を一つ取り出し、ひもをほどく。
他慌慌张张地走到架子前,取出一叠纸,解开绳子。
そして紙をパラパラとめくり、あるところで手を止めた。
哗啦哗啦地翻着纸,在某个地方停下了手。
「……ない!セイラムのページが!」
“……没有!塞勒姆的页面没了!”
青ざめた顔で、イツキの方にふり返る。
他脸色苍白地回头看向逸月。
「ぼ、ぼくは知らないです!本当に!」
“我,我不知道!真的!”
「そのぼうやはうそはついていませんよ。彼が来た時には、すでにセイラムは持ち出されていたのですから」
“那个小鬼没有说谎哦。因为他来的时候塞勒姆已经被拿走了。”
イツキをかばってくれたラハブに、伯父さんはつめ寄る。
面对袒护逸月的拉哈布,伯父逼问道。
「ラハブ。お前は犯人を知っているな?だれだ?だれがセイラムを持ち出した!?」
“拉哈布,你知道犯人是谁吧?是谁?是谁把塞勒姆带出去的!?”
「フフフ……さあ、だれだったでしょうかねえ」
“呵呵呵……这个嘛,会是谁呢。”
伯父さんはなおもラハブにせまったが、彼女が犯人の名前を言うことはなかった。
伯父继续逼问着拉哈布,但是她却没有说出犯人的名字。
それを見ていたマリーがボソッとつぶやく。
看到这一幕的玛丽小声嘀咕。
「相変わらず性格悪いなあ……ラハブおばさん」
“性格还是这么恶劣啊……拉哈布阿姨。”
おばさん、という言葉に反応したのか、ラハブがマリーをキッとにらみつけた。
不知道是不是对“阿姨”这个词有所反应,拉哈布狠狠地瞪了玛丽一眼。
「あ……あの、すみません。ラハブお姉さん」
“那……那个,不好意思,拉哈布姐姐。”
ジルは関わりたくないのか、無言のままずっとめをそらしていた。
吉尔似乎不想扯上关系,一直沉默地移开视线。
ラハブから聞き出すことをあきらめた伯父さんは、ふうっと深いため息を付いた。
伯父放弃了从拉哈布那里打听消息,深深地叹了一口气。
「やれやれ。問題が一つ、増えてしまったな」
“哎呀哎呀,又多了一个问题啊。”
「……あのう」
“……那个。”
「ん?なんだい、イツキくん」
“嗯?什么事,逸月君。”
「このマンション、防犯カメラとかはついてないんですか?」
“这栋公寓没有安装监控摄像头吗?”
「……一応は、あるね。玄関前と、それに……庭に二つ。ただこの書庫はもちろん、マンション内にはつけてないんだ」
“……大概有吧。玄关前和……院子里有两个。不过这间书库还有公寓里当然是没有的。”
「そうですか……」
“这样啊……”
「どろぼうが映っていたらセキュリティ会社から連絡が来るはずだしなあ……まあとりあえず、担当の人に問い合わせてみるか」
“要是拍到小偷,保安公司应该会联系我的……总之先问问负责人吧。”
イツキ以外に、悪魔を持ち出した人がいる――。
除了逸月以外,还有人取出了恶魔——。
ならばその人もまた、悪魔とけいやくしたのだろうか?
那么,那个人也和恶魔建立了契约吗?


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8話
翌日から、イツキは図書室で新たな読書にいそしむことになった。
从第二天开始,逸月在图书室埋头于新的阅读。
今読んでいるのは、書庫にある本ではない。
现在读的不是书库里的书。
伯父さんの持っているパソコン内の原稿をプリントアウトしたものだ。
而是把伯父电脑里的原稿打印出来的版本。
秘密の書庫の紙束に書かれている物語を、伯父さんは前にパソコンに入力したのだという。
据说伯父之前把秘密书库里写在一叠叠纸上的故事输入了电脑。
文章を全て、今風の言葉に直して、だ。
把文章全部改成了现在流行的语言。
おかげてイツキも、こうして秘密の書庫の物語を知ることができるというわけだ。
因此,随时都能像这样了解秘密书库的故事。
ただ、全体を通して見ても、物語の内容はジルの絵があった紙束に書かれていた内容と、たいして差はないようだった。
不过,通篇看来,故事的内容和那一叠有吉尔图画的纸上写的内容并没有太大差别。
勇者が悪魔をたおすため、ぼうけんをする話――その道中がいろいろと書かれている、というだけのことだ。
勇者为了打倒恶魔,展开冒险的故事——途中写了各种各样的情节,仅此而已。
「これの続きを書け、って言われてもなあ……」
“就算让我继续写下去……”
それ自体は、がんばればなんとかなるかもしれない。
这件事本身,努力一些也许会有办法。
だが問題は、もう一つの条件の方だ。
但问题在于另一个条件。
「書く物語は、けいやく者の体験にもうづいた内容でなければならない」
“所写的故事,必须是基于契约者体验的内容。”
当然ながら、イツキは勇者なんかじゃない。
当然,逸月不是什么勇者。
ごくふつうの小学生だ。
而是个极其普通的小学生。
そんなイツキが、海や山をこえるぼうけんをした経験なんかあるはずもないし、モンスターと戦ったことだってない。
这样的逸月,不可能有越过海和山的冒险经验,也没有和怪物战斗过。
(ゲームの中でならあるけど……それじゃあダメだろうしなあ)
(游戏里倒是有……可是那样应该不行吧)
物語の最終目的は、悪魔をたおすことだ。
故事的最终目的是打倒恶魔。
「悪魔は……まあ、いることはいるね。目の前に」
“恶魔……哎呀,存在是存在啦。就在眼前。”
イツキは机の上でひまそうにしているマリーをチラリと見た。
逸月扫了一眼在桌子上闲得无聊的玛丽。
(マリーをたおして、それを紙に書く?)
(打败玛丽,把这件事写在纸上?)
道徳的なことを無視したとしても、それもやっぱり無理だ。
即使无视道德,也还是办不到。
今のイツキは紙を傷つけることができない。
现在的逸月已经无法破坏纸张了。
紙の悪魔であるマリーにも、手を出せないのだ。
对纸恶魔玛丽也无法下手。
……仮に、物語を無事、書き終えたとしても、だ。
……就算故事顺利写完了。
次にそれを、五体の紙の悪魔に認めてもらう必要がある。
接下来,还必须让五个纸之恶魔承认。
ところが、そのうちの一体が今、行方不明になっているのだ。
然而,其中一个现在下落不明。
セイラム……ジルはそいつが、ミミズクの姿をしていると言っていた。
塞勒姆……吉尔说过那家伙长得像只猫头鹰。
「ミミズクって――フクロウの一種だよね、たしか」
“猫头鹰——是鸮的一种吧?”
フクロウなんて、こんな都会で見かけることはめったにないだろうな。
猫头鹰什么的,在这种城市里应该很少见吧。
ペットショップとかにならいるだろうけど。
虽然宠物店应该会有。
そもそも、悪魔たちが物語を認める基準というのも、よくわからない。
说起来,恶魔们认可故事的标准也不太清楚。
それについて伯父さんは「悪魔たちがその内容を気に入れば、それでいい」と言っていた。
对此,伯父说:“只要恶魔们喜欢那个内容,就没问题。”
だけど、彼らがどんな話を好むかなんて、イツキにはわかりっこないのだ。
但是,他们喜欢什么样的故事,逸月是不知道的。
「よう。なんかなやんでそうだな」
“哟,你好像有什么烦恼啊。”
ハルトが書庫に入ってきた。
阳斗走进书库。
また、ノートとスマートフォンを手に持って。
手里还拿着笔记本和智能手机。
「おれで良かったら、相談に乗るぜ」
“如果可以的话,跟我商量一下吧。”
そんなふうに言いながら、気さくそうな笑顔を見せてくる。
他一边这样说着,一边露出爽朗的笑容。
どうも彼は、こうして人にちょっかいを出すのが好きな人間のようだ。
看样子,他那种爱管别人闲事的类型。
……そんなところも、イツキとは反対のタイプだった。
……这一点也和逸月相反。
イツキは机の上を見たが、マリーはいつのまにかいなくなっていた。
逸月看了看桌子,玛丽不知何时已经不见了。
ハルトが来たので、また机の下にでもかくれたのだろう。
因为阳斗来了,又躲到桌子下面去了吧。
秘密の書庫の中にあるもの――つまり紙の悪魔のことについて、ハルトは知らないはずだ。
关于秘密书库中的东西——也就是纸之恶魔,阳斗应该不知情。
彼にそのことを話してもだいじょうぶなのだろうか?
跟他说那件事没关系吗?
(……伯父さんに聞いてからの方が、いいよね)
(……还是问问伯父比较好吧)
イツキは適当に話をぼかすことにした。
逸月决定适当地模糊话题。
「――ちょっとさ、物語でも書こうかと思ってて」
“——就是啦,我想写个故事什么的。”
「なんだ?うちの父ちゃんから悪いえいきょうでも受けたのか?やめとけやめとけ。物書きなんてろくなもんじゃないぞ」
“什么?你被我爸带坏了吗?别写了,别写了。写作可不是什么好东西啊。”
「別におかしいな小説家や脚本家になろうってわけじゃないよ。ただ……ちょっとしたしゅみとして」
“我并不是想当什么奇怪的小说家或者编剧,只是……一点业余爱好而已。”
「今どき、本なんてだれも読まないだろうに」
“现在这个时代都没人看书了吧?”
ハルトに悪気はないのだろうが、何となく自分のことをばかにされたような気がして、イツキは少しムッとなる。
虽然知道阳斗没有恶意,但是总有一种自己被当成了傻瓜的感觉,逸月有点生气。
そんなイツキの気持ちにまったく気がついていない様子のハルトは、スマートフォンをいじりはじめた。
完全没有注意到逸月心情的阳斗,开始摆弄起手机来。
「前にも思ったんだけどさ……ハルトくんって、スマホで何してるの?やっぱりゲーム?」
“之前我也想过……阳斗君,你在用手机做什么呢?果然还是玩游戏吗?”
「ゲームもやるけど――今はもっぱら、メッセージのやり取りとか、あとはSNSだな」
“虽然也玩游戏——但现在主要是发短信,还有SNS啊。”
「SNS……ネットで交流ができるサイトのことだね」
“SNS……是可以在网上交流的网站啊。”
正式な名前は――たしか「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」だ。
正式名称——应该是“社交网络服务”。
それを略してSNS。
简称SNS。
「イツキはネットもやらないの?」
“逸月你不上网吗?”
「うん……たまに父さんのパソコンを借りて見るくらい」
“嗯……偶尔有借爸爸的电脑看看。”
「ま、ネットも良し悪しだからな。変なことを書くとえんじょうすることもあるし」
“哎呀,网络也有好有坏吧。写了奇怪的东西也会引起轩然大波。”
「そういうサイトを見ているってことは……ハルトくんも文章を読むのはきらいってわけじゃないよね?」
“你会看那种网站……也就是说阳斗你不讨厌读文章吧?”
「当たり前だ。おれを文字も読めない原始人だとでも思ってたのか?」
“那还用说。你以为我是不识字的原始人吗?”
「それなら、本を読むのとあんまり変わらない気もするけど……」
“那样的话,感觉和看书没什么区别……”
「ちがう。全然ちがうよ。本に書かれた文章はずっと同じままだ。時がたてばどんどん古くなっていく。このマンションみたいにな。でもネットには『生きた情報』がある。サイトがこうしんされるたびに、どんどん新しいなっていくんだ」
“不对。完全不对啊。书里写的文章一直都是一样的。随着时间的流逝渐渐变得陈旧,就像这栋公寓一样。但是网络上有‘活着的信息’。网站每次更新都会变得越来越新。”
「そういうもの……なのかね」
“是……这么回事嘛。”
「そういうものさ。イツキも本ばっかり読んでると、すぐに時代に取り残されちゃうぞ。お前も親にお願いして、スマホを買ってもらえよ。そしたらおれのネット友達も紹介してやるからさ」
“就是这样。老是看书的话,很快就会被时代淘汰的。你也拜托父母给你买个智能手机吧。到时候我也会介绍我的网友给你认识的。”
「……今度相談してみるよ」
“……下次再和他们商量看看。”
でもまあ、やっぱり母さんは買ってくれないだろうな、とイツキは思った。
不过,妈妈还是不会买的吧,逸月想。


2025-06-07 04:16:52
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そんなやりとりをしていると、外から足音と伯父さんの話し声が聞こえてきた。
就在两人像这样对话时,外面传来了脚步声和伯父的说话声。
「……はい、そうですか……いえいえ、それはまだ……まだどろぼうかどうかもはっきりしていませんし……もちろん、その時はよろしくお願いします……はい、それではまた。ありがとうございました、高萩さん」
“……是的,这样啊……不不,这个还没……还没确定是不是小偷……当然,到时候还请多多指教……好的,再见。谢谢你,高萩先生。”
携帯電話を持った伯父さんが書庫に入ってきた。
拿着手机的伯父走进书库。
どうやらついさっきまで、だれかと電話で話をしていたようだ。
看样子刚才还在跟谁打电话。
「おおイツキくん。それに、ハルトもいたのか」
“噢噢,逸月君。而且阳斗也在啊。”
「何かあったの?父ちゃん。高萩さんって、セキュリティ会社の人だよね?それにどろぼうって――」
“发生什么事了?老爸。高萩先生是保安公司的人吧?还有小偷——”
「……なんでもない。ちょっとしたことだ。それより宿題はもうやったのか?」
“……没什么。一点小事而已。倒是你的作业,做完了吗?”
「これからやるつもりだったんだよ」
“我本来打算现在就做的。”
ハルトはノートの表紙を伯父さんに見せた。
阳斗把笔记本的封面拿给伯父看。
「別にここじゃなく、自分の部屋でやればいいじゃないか」
“别在这里做,去自己房间做不行吗?”
「そんなのおれの勝手だろ」
“这是我的自由吧。”
「悪いが、父さんはちょっとイツキくんに話がある。宿題は部屋でやってくれないか?」
“不好意思,爸爸有话跟逸月君说。你去房间里做作业可以吗?”
だが、ハルトは首を横にふった。
然而,阳斗摇了摇头。
「やだね。おれだけ仲間外れにすんなよ」
“不要。别把我一个人排挤出去啊。”
「……あのな、ハルト――」
“……那个,阳斗——”
二人が険悪な感じになりどうだったので、イツキはとっさに口をさんでいた。
看到两人的关系变得紧张起来,逸月赶快插嘴。
「どろぼう、カメラに映ってたんですか?」
“摄像头拍到小偷了吗?”
伯父さんは少し困った表情でハルトとイツキの顔を順に見たが、仕方ないとあきらめたのか、セキュリティ会社の人に問い合せた結果を教えてくれた。
伯父带着有点为难的表情依次看了看阳斗和逸月的脸,大概是没办法只好放弃了吧,于是把询问保安公司的结果告诉了他们。
「――いや、映っていなかったそうだ。もちろん、カメラの死角から侵入した可能性は否定できないそうだが……なくなったのも紙きれ一枚だけだし、それで警察にひがい届けを出しても取り合ってはくれないだろうな」
“——不,听说没拍到。当然,也不能否定从摄像头死角侵入的可能性……丢失的也只有一张纸片,就算报警也不会被人理睬吧。”
「なに?やっぱマンションにどろぼうが入ったの?」
“什么?公寓里果然进了小偷?”
ハルトが興味深そうな顔で伯父さんにたずねる。
阳斗问伯父,脸上是一副很感兴趣的表情。
「まだわからん。単にうっかりなくしてしまっただけかもしれん」
“还不清楚,可能只是不小心弄丢了。”
「紙が一枚なくなっただけで、どうしてセキュリティ会社に問い合わせまでするのさ」
“只是丢了一张纸,为什么还要去找保安公司呢?”
「念のためだ。マンションを管理している者のつとめとしてな」
“以防万一。这是公寓管理者的义务。”
二人の会話を聞きながら、イツキは犯人について考えていた。
逸月一边听着两人的对话,一边思考着犯人的事。
仮に、外から入ってきたどろぼうでなかったとしたら……。
假设那不是从外面进来的小偷……。
セイラムをぬすんだのは、マンションに住むだれかということになる。
偷走塞勒姆的应该就是住在公寓里的人。
……いや、もしかしたらぬすむつもりだったのではなく、イツキと同じようにうっかり悪魔とけいやくをしてしまったのかもしれない。
……不,搞不好他并不是打算偷东西,而是和逸月一样不小心和恶魔建立了契约。
そうだとしたら。
如果是这样的话。
(その人も、放っていたらいずれ何か不幸が……)
(要是放任不管,那个人迟早也会遭遇不幸……)
イツキ自身のけいやく解除のためにも――。
即使是为了解除逸月自身的契约——。
どうにかして、セイラムを見つけ出さねばならない。
也无论如何都要找到塞勒姆。


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