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第一章 ”始まり”
10話 「月と踊る」
「……誰? あなた」
 ルナのその一言に、この場にいる誰もが息を飲んだ。
「え? あの、俺を呼んだんじゃ……?」
「呼んだのはあなたじゃないわ。マロ・バーンよ」
 そんなルナの哲学的な物言いに、誰しもが動揺を隠せない。
 それはそうだろう。この状況を正しく理解しているのは何を隠そう世界中で僕ただ一人だ。
「あの、ルナ様、この者がマロ・バーンです」
 状況を理解できずに目を白黒させているマロに代わってアリスがそう進言する。
「…………ふふ、なるほど。そういう事ね」
 ルナはそう言って一人笑みを浮かべると、アリスへと体を向けた。
「アリス、あなたの知り合いに黒い髪の男はいないかしら? 身長はあなたより少し高くて、顔はそれなりなのだけれど、目は濁っていてスケベそうな男よ。けれど、どこか憎めない……心当たりは?」
「黒い髪……スケベ……まさか……っ!」
 アリスの視線が猛烈な勢いで僕へと突き刺さる。
 既に退路はたたれた、ならばと僕は鼻の穴を広げ、顔の中心にシワを寄せ唇をすぼめた。
 変顔というやつだ。僕とルナは今それなりに離れた位置にいる。しかも僕たちが会ったのはもう一週間も前の事だ。僕の顔など細かくは覚えていないだろう。
「……アイツよ。つれてきて」
 駄目でした。
 僕は少し怒った様子のアリスに手を引かれてルナの前へとやってくる。
「アリス。こいつの名前は?」
「……ユノです。ユノ・アスタリオ」
「へぇ……意外ね。有名人じゃない」
 ルナはそう言って楽しそうに笑うと、僕を射貫くように見つめた。
「ユノ、あなたにチャンスを与えるわ。今すぐ忠誠を誓い、私の騎士になりなさい」
 場は喧騒に包まれた。
「ちょ、ちょっと待て! これは一体どういう事だ!」
 マロはしびれを切らしたのか、そう言って声を荒げるとルナにつめよる。
「あら、まだいたの? もういいわよ。下がりなさい」
「なっ……! ふざけるな! この俺を誰だと思っている!」
「バーン伯爵家の次男、マロ・バーンでしょ? 安心しなさい。覚えておいてあげるわ。それとこの間、私の父上が催したお茶会であなたの父君が大変な粗相をしたようだけれど、あれから壮健かしら?」
「が……」
 マロの顔がみるみるうちに青ざめていく。
「そう。それでいいの。少し黙っていなさい」
 ルナはそう静かにマロへと告げると再び僕へと視線を向けた。
「それで? 返事が聞こえないのだけれど」
「ルナ様! まってください! 何故、ユノなのですか!?」
「何故もなにも簡単な話よ。私、ユノ・アスタリオが気に入ったの」
 ルナの有無を言わせぬ物言いにアリスは肩を震わせる。
 そんな中、またしても口を開いたのは、マロだった。
「お、恐れながら……ルナ様も知っている筈です。こいつ、ユノはあの無能で有名のアスタリオ家の三男ですよ!? そんな無能を騎士にしようというのですか!?」
「誰が口を挟んでいいと許可したのかしら? それにその無能にあなたは模擬戦で敗れた……違うかしら?」
「そ、それはユノが新入生で唯一の神との契約者だからです! 事実コイツはその時獲得した《槍術》のスキルの関係で槍しか扱えません! 槍をもっていないユノなどただの無能! 雑魚です!」
 マロがそう興奮しながら語気を荒げると、ルナは何かを考えるように優雅に手を口元へと持っていく。
「へぇ、それは興味深いお話ね。その話でいうとこのユノ・アスタリオは槍しか扱えないという事になるわね……それは本当の事なの? アリス」
「……それは」
 僕に気を使っているのだろう。アリスはその問いに答える事無く、ただ黙って唇をかんだ。
 だがその沈黙は肯定と同義だろう。
「ふふ……そう……最高ね……では、たとえばこの短刀なんかでは、この男は何もできないと?」
 ルナはそう言って懐から取り出した短刀を持って見せると、マロへと問いを投げかける。
「と、当然です! 《槍術》のスキルは長物を持った時でしか発動しません! だからそんな得物じゃ、ゴブリン相手にも歯が立ちませんよ」
 ルナはそれを聞くと、とても面白い話が聞けたとばかりに嗜虐的な笑みを浮かべる。
 まずい。マロの説明では僕がルナを助けた状況の筋が通らない。
「さぁ、ユノ? 早く返事を聞かせてちょうだい」
 ルナは有無を言わせぬ声色で僕を見つめる。
 さて、どう切り抜けるべきか……。
 ここにきて僕の予想は確信へと変わっていた。やはりルナとは関わり合いになるべきじゃない。
 僕は助けを求めるようにアインへと視線を向ける。
 ……目を逸らされた。
 これでは『実はもう相手がきまっていました』作戦が成り立たない。
 いや、まてよ……。
「ルナ様、申し訳ありません。実は僕には既に決まった相手がおりますれば」
 僕がそう言うとこの日初めて、ルナの顔に焦りが見えた。
「……へぇ、それは意外ね。では私に紹介してくれないかしら?」
 そうくるのは想定済みだ。
 僕は神様をみるとパチリと片目を閉じてウィンクをする。
 ――『神様! 僕に話を合わせてください!』
 神様はそんな僕を少しの間見つめると、『まかせてください』とでも言いたげな、得意気な顔で胸をはった。
 よし、いける!
 僕は神様の隣にいくと肩を抱き、自信満々にこう告げる。
「この方が僕のお相手です」
「ご機嫌麗しゅう。ルナ様。この度、ユノさんとお付き合いすることになりました。以後お見知りおきください」
 アテナはそう言ってぺこりと頭をさげる。
 少し違うが……まぁ、なんとかなるだろう。
 アリスなんかは僕を怖い顔で睨んでいるがどうやら口を挟むつもりは無いらしい。
「あら、綺麗な子ね。見ない顔ですけど、どこのクラスかしら? 少なくとも私のクラスメイトではないようだけど。一組? それとも二組かしら?」
 神様は少しのあいだ『むむむぅ』と唸ると――
「い、一組です!」
 満点の笑顔でそう言った。
 すると、ルナは美しい顔に浮かべた笑みを更に深くする。
「そう。一組ですの。でもおかしいですわね。私たちのクラスは、花組、鳥組、風組、月組の四つですのに」
 この女……! 謀りやがったな!
「もういい加減、諦めなさい。それとも貴族の名を騙った不敬罪で、入学そのものを取り消されたいのかしら? そうなると少し困った事になるのではなくて?」
 ……万事休す。
 恐らく僕の事情など筒抜けなのだろう。それを分かっていてそんな事を言ってのける目の前の少女に僕は恐怖する。
 ルナ……恐ろしい子……。
 これはもう詰みだろう。この数の人の目だ。この先粘ってみせても僕ばかりか神様の印象を下げかねない。
 僕は潔く片膝を地に着くと頭をたれる。
「……ルナ様。教えてください。ユノが私より優秀だと、そうお思いなのですか?」
 アリスはこれが最後の質問と前置くと、真面目な顔をしてそうルナへと尋ねた。
「さぁ。それは分からないわね。けれど私にはコイツがただの無能だとは思えないわ」
「……そうですか」
 アリスは神妙な面持ちでそう言って頷くと、僕の方を向いて満足気な笑みを浮かべる。
「まったく。まさかあなたが私の前に立ちふさがるとは思わなかったわ。……ルナ様を頼んだわよ。ユノ。怪我なんてさせたら承知しないんだから!」
 ……アリス。きっと君がこの学園へときたのは僕が知りえないルナとの約束が関係しているのだろう。それなのに君は……君は本当に素敵な幼馴染だ。
「ではユノ? 宣誓を」
 ルナはそう言って勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
 まったく、大変な事になったものだ。
 僕は片膝をついたままルナを見上げると、どうせならと覚悟を決める。
「アスタリオ家が三男、ユノ・アスタリオは今日よりルナ・フレイム様の剣となりて、御身を害するそのことごとくを切り裂き、撃ち滅ぼす事をここに誓います」
 こうなってしまっては割り切るしかない。
 僕を取り巻く環境が変わろうとも、目標は変わらないのだから。
 嬉しそうに微笑む神様の笑顔を目に焼き付けながら、僕はこれから巻き起こるであろう困難に頭を悩ませる。
「ふふ……きっと退屈はさせないわ……ユノ?」
 この日。僕は、《孤高の月》ルナ・フレイムの騎士となった。


IP属地:河南来自Android客户端1楼2021-06-07 19:00回复
    好耶坐等大佬考


    IP属地:贵州来自Android客户端2楼2021-06-07 22:11
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