変革を通じて
「学び続ける技術者」を育てる
学長 成田 健一
我が国の高度成長期の真っただ中、昭和42年に、工業高校生が日本で唯一、推薦で進学できる大学として本学はスタートしました。建学の精神には「わが国工業技術の高度化に資しうる有為な人材を育成する」とあり、工業高校卒業生に対して、専門的な実験・実習・製図科目を初年次から履修させるなど、工業高校生の学習履歴を活かした本学独自の「実工学」の学びを展開してきました。多くの大学が工業高校生を受け入れるようになった今日でも、工業高校生がまったくハンディキャップを感じず伸び伸び学ぶことができるカリキュラムは、日本で唯一といっても過言ではありません。機械実工学教育センターの工作機械群をはじめ、学生の実験・実習のための充実した設備は本学の誇りです。工業科出身と普通科出身の学生がほぼ半々となった現在は、実験・製図などの科目では工業科出身生が手本となり、数学や英語などでは普通科出身生が手本になるという、互いの能力・得意分野を認め合い、不得意な部分を教え合うという良い環境を生んでいます。
昨年(平成30年)、本学はかつてない学部学科改組を行いました。これまでの工学部1学部体制から、機械工学科・電気電子通信工学科・応用化学科からなる基幹工学部、ロボティクス学科・情報メディア工学科からなる先進工学部、そして建築学科(建築コース・生活環境デザインコース)からなる建築学部の3学部6学科2コース体制となりました。今回の改組では、学生一人ひとりの知識や能力がより多様化する中、「実工学教育」という伝統を継承しつつ、これからの社会の変化にも適応できる人材を育成するために本学が進化すること、『継承と進化』を基本コンセプトとしました。
学部学科改組に合わせて、共通教育の大改革にも踏み切りました。入学直後のプレースメントテストで学生一人ひとりの能力を把握し、工学の基礎となる「数学」「物理」「英語」については「習熟度別クラス編成」とし、これらについては1年を4期に分ける「クォータ制」を導入しました。近年、工業科・普通科、どちらの出身学生についても多様性が拡大しています。そこで今回の改組では、これまでのカリキュラムを発展改組し、出身高校によらず一人ひとりの学生に適切なレベルの講義からスタートし、確実にハードルを越えながら順次基礎力を身に付けられるシステムとしました。各科目で質保証に必要と考えたレベルの科目を必修化し、またレベル順に下位科目の修得を条件とする「履修縛り」を設けました。学生にとっては、わかるまで繰り返し学べるが、「やらないでは済まされない」環境、いい意味での「修羅場」を創りだしました。その一方で、学修支援センターのスタッフを増員するなどセーフティネットも充実させ、わかるまで教えるという覚悟を教職員に共有してもらいました。
その結果、例えば数学では、入学生の58%が最も基礎となる科目からのスタートでしたが、第3クォータが修了した時点で、その内の2/3は3クォータ連続で合格し必修レベルをクリアーしました。一方で、上位層の23%は大学院入試レベルの応用解析を第3クォータまでに修得しています。すべてのレベルの学生を確実に成長させるという目的が達成されつつあるという手応えを感じています。
昨年12月には、学生が共に学び合う自主学習のためのオープンスペースを中心とした多目的講義棟が竣工しました。今年7月には新設した「応用化学科」の実験室などが入る「応用化学実験棟」も完成します。
平成29年度には、私立大学研究ブランディング事業「次世代動力源としての全固体電池技術の開発と応用」が採択されました。これは、日本工業大学が得意としてきた薄膜合成や金属加工などの基盤技術を、先進科学技術に生かした結果です。さらに高齢化社会のサポートを多職種連携で担う、障がい者教育のためのソフトやリハビリのための義足を作るなど、社会の課題に対応するプロジェクトをロボットや情報工学の分野で連携しながら推進しています。次世代社会において工学ができることを探り、産学が連携しながら、社会と幅広につながっていく。「実工学教育」のさらなる深化を武器に、「生涯学び続ける技術者」の育成にむけ、日本工業大学はこれからも進化しつづけます。
「学び続ける技術者」を育てる
学長 成田 健一
我が国の高度成長期の真っただ中、昭和42年に、工業高校生が日本で唯一、推薦で進学できる大学として本学はスタートしました。建学の精神には「わが国工業技術の高度化に資しうる有為な人材を育成する」とあり、工業高校卒業生に対して、専門的な実験・実習・製図科目を初年次から履修させるなど、工業高校生の学習履歴を活かした本学独自の「実工学」の学びを展開してきました。多くの大学が工業高校生を受け入れるようになった今日でも、工業高校生がまったくハンディキャップを感じず伸び伸び学ぶことができるカリキュラムは、日本で唯一といっても過言ではありません。機械実工学教育センターの工作機械群をはじめ、学生の実験・実習のための充実した設備は本学の誇りです。工業科出身と普通科出身の学生がほぼ半々となった現在は、実験・製図などの科目では工業科出身生が手本となり、数学や英語などでは普通科出身生が手本になるという、互いの能力・得意分野を認め合い、不得意な部分を教え合うという良い環境を生んでいます。
昨年(平成30年)、本学はかつてない学部学科改組を行いました。これまでの工学部1学部体制から、機械工学科・電気電子通信工学科・応用化学科からなる基幹工学部、ロボティクス学科・情報メディア工学科からなる先進工学部、そして建築学科(建築コース・生活環境デザインコース)からなる建築学部の3学部6学科2コース体制となりました。今回の改組では、学生一人ひとりの知識や能力がより多様化する中、「実工学教育」という伝統を継承しつつ、これからの社会の変化にも適応できる人材を育成するために本学が進化すること、『継承と進化』を基本コンセプトとしました。
学部学科改組に合わせて、共通教育の大改革にも踏み切りました。入学直後のプレースメントテストで学生一人ひとりの能力を把握し、工学の基礎となる「数学」「物理」「英語」については「習熟度別クラス編成」とし、これらについては1年を4期に分ける「クォータ制」を導入しました。近年、工業科・普通科、どちらの出身学生についても多様性が拡大しています。そこで今回の改組では、これまでのカリキュラムを発展改組し、出身高校によらず一人ひとりの学生に適切なレベルの講義からスタートし、確実にハードルを越えながら順次基礎力を身に付けられるシステムとしました。各科目で質保証に必要と考えたレベルの科目を必修化し、またレベル順に下位科目の修得を条件とする「履修縛り」を設けました。学生にとっては、わかるまで繰り返し学べるが、「やらないでは済まされない」環境、いい意味での「修羅場」を創りだしました。その一方で、学修支援センターのスタッフを増員するなどセーフティネットも充実させ、わかるまで教えるという覚悟を教職員に共有してもらいました。
その結果、例えば数学では、入学生の58%が最も基礎となる科目からのスタートでしたが、第3クォータが修了した時点で、その内の2/3は3クォータ連続で合格し必修レベルをクリアーしました。一方で、上位層の23%は大学院入試レベルの応用解析を第3クォータまでに修得しています。すべてのレベルの学生を確実に成長させるという目的が達成されつつあるという手応えを感じています。
昨年12月には、学生が共に学び合う自主学習のためのオープンスペースを中心とした多目的講義棟が竣工しました。今年7月には新設した「応用化学科」の実験室などが入る「応用化学実験棟」も完成します。
平成29年度には、私立大学研究ブランディング事業「次世代動力源としての全固体電池技術の開発と応用」が採択されました。これは、日本工業大学が得意としてきた薄膜合成や金属加工などの基盤技術を、先進科学技術に生かした結果です。さらに高齢化社会のサポートを多職種連携で担う、障がい者教育のためのソフトやリハビリのための義足を作るなど、社会の課題に対応するプロジェクトをロボットや情報工学の分野で連携しながら推進しています。次世代社会において工学ができることを探り、産学が連携しながら、社会と幅広につながっていく。「実工学教育」のさらなる深化を武器に、「生涯学び続ける技術者」の育成にむけ、日本工業大学はこれからも進化しつづけます。