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【完整补发】她所希望的我的世界(2011版本的)

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因为百度不知道何故吞掉了所有2017年之前的帖子,看到有人很在意这篇作品,所以帮忙补发一遍
原帖是2011发的,发帖人@遠山千雪
原帖有分01、02,这里的补发版本我就发到一起了


IP属地:湖北1楼2019-05-13 23:16回复
    仆が初めて本気で好きになった女の子には、他に好きな奴がいた。 .我第一次真心喜欢上的女孩子喜欢着另外一个家伙。
    もちろんそんなのはどこにでもある话だし、
    .当然 这是一个随处可见的故事。
    とてもありふれたことではあるけれど
    .虽然非常常见。
    でも、好きになった女の子が、真剣に世界を救おうとしていたとしたらならどうだろう?
    .但是,所喜欢的女孩子,正正经经地要你拯救世界的话会如何呢?
    それも、仆らがいるこの世界じゃない。ここではない、どこか别の世界の话だ。 .而且,那并不是我们所生活着的这个世界.并不是这里,是其它的什么世界的事情.
    初めにその话を闻いたとき、仆は彼女がちょっと痛い子なんじゃないかと疑った。
    .第一次听到这种话的时候,我怀疑她是不是秀逗儿童.
    当然だろう? 高二にもなって、真颜で世界を救いたいだなんて。
    .这是当然的吧?都已经高二了,还一本正经地说想要拯救世界什么的.
    それもその、救いたい世界はここではない、异世界だ
    .而且,想要拯救的世界并不是这里,是异世界啊.
    なんて言われた日には、なにか心の病気か、もしくは现実世界とゲームやアニメの区别がつかなくなってしまった
    .被这么告知的那一天,难道是有什么心理问题吗,又或者是完全分不清楚现实世界跟动画游戏(二次元世界)之间的区别了么.
    可哀想なオタクの成れの果てかなって、谁もが思うはずだ。 .真是可怜的御宅的悲惨下场啊,任谁都会这么想.
    そしてもちろん、仆もそう思った。彼女は间违いなく痛い子。もしくは心の病気だ。いや、実际にそう言ってみた。 .当然,我也这么想.她毫无疑问是个脑子秀逗的人.又或者是有心理问题.不不,实际上就是应该这么说.
    「つまりはあれかな。君は仆を、からかって游んでるのかな?」 .也就是说,是那啥吧.你这是在耍着我玩是吧?
    「……游ぶ? なんの话?」 .玩?你在说什么呢?
    「もしくは、ちょっとにわかには信じがたいけれど。いや、信じたくないけれど、本気の本気でこの话を信じてる?」 .又或者,稍微有点想要暂时地相信你.不不,虽然不想相信你啦,你会认认真真地相信这句话吗?
    「当然でしょう」 .当然呀
    「じゃあつまり、君は头が痛い子ってことか么心理问题吗,又或者是完全分不清楚现实世界跟动画游戏(二次元世界)之间的区别了么.
    可哀想なオタクの成れの果てかなって、谁もが思うはずだ。 .真是可怜的御宅的悲惨下场啊,任谁都会这么想.
    そしてもちろん、仆もそう思った。彼女は间违いなく痛い子。もしくは心の病気だ。いや、実际にそう言ってみた。 .当然,我也这么想.她毫无疑问是个脑子秀逗的人.又或者是有心理问题.不不,实际上就是应该这么说.
    「つまりはあれかな。君は仆を、からかって游んでるのかな?」 .也就是说,是那啥吧.你这是在耍着我玩是吧?
    「……游ぶ? なんの话?」 .玩?你在说什么呢?
    「もしくは、ちょっとにわかには信じがたいけれど。いや、信じたくないけれど、本気の本気でこの话を信じてる?」 .又或者,稍微有点想要暂时地相信你.不不,虽然不想相信你啦,你会认认真真地相信这句话吗?
    「当然でしょう」 .当然呀
    「じゃあつまり、君は头が痛い子ってことか」 .那也就是说,你是个秀逗儿童这件事情吗
    仆はそう言った。するとそれに、彼女は不思议そうに首を倾げた。
    .我就这么说出口了.这之后,她不可思议地歪了下头。
    どうやら痛い子、という言叶の意味を彼女は知らないようだった
    .不管怎么说也是个傻孩子呢,这种话的意思她是不会明白的.
    これは彼女のそばで、彼女を観察するようになって初めてわかったことだけど
    .这虽然是在她的身边,观察她的时候明白的第一件事.
    彼女はいまいち、新语というか、最近使われだした新しい言叶にはうといのだ。
    .她有些,疏远最近被使用的一些新词汇.
    それどころか、テレビやパソコンを见たり使ったりしたこともないらしい.
    .一边看电视或者电脑之类的,一边使用的情况也是没有的样子.
    そしてそういう意味では确かに、彼女が异世界からやってきたという言叶に纳得することもできる。
    .而且那也是确确实实的,能够认可”她是从异世界那里来的”这种话.
    いまどき、テレビも见たことがないなんて、デジタル渍けの仆にとっては异世界の人间だ。
    .在当今社会,连电视都没有看过什么的...对于离不开数码产品的我来说,的确是一个异世界人啊.
    とても価値観や话が合うとは思えない。
    .价值观跟谈吐完全无法契合.
    いや、彼女が仆が通っている高校に転校してきてからすでに四か月。
    .自从她转校到我所读的高中以来,已经四个月了.
    彼女には友达が出来たようには见えなかったから、他の奴らにとっても彼女は、异世界の人间なのだろう。


    IP属地:湖北2楼2019-05-13 23:17
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      2025-05-21 11:10:37
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      没有见过她交朋友,在其他的家伙看来,她应该也是属于异世界的一份子吧.
      もしくは、まともに会话が噛み合わない、痛い子
      .又或者是,无法进行正经对话的傻孩子.
      でもそれでも、その问题を差し引いたとしても余りあるくらいに、彼女は魅力的だった。 .但就算如此,将此问题放置一边也是足以这么认为的,她很有魅力.
      仆は彼女を见つめる
      .我注视着她.
      彼女が座っている席は教室の一番后ろにある、隅っこの席だった。
      .她的座位在教室的最后方,角落的这个位置.
      彼女はそこで独り。ずっと独り、窓の外を见ている。 她一个人呆在那里.一直一个人,望着窗外.
      二つくくりの茜色の长い髪に、世界を救うだなんて言いだしそうにない、理知的に澄んだ瞳。
      .系着两条暗红色的长发,不像是会说出”拯救世界”这种话的,充满理性的清澈双瞳.
      白い肌と、线の细い体。
      .洁白的肌肤,线条纤细的体形.
      见た目だけならすぐにでも学校中の评判になりそうなほどに整っているのだが、いかんせん彼女の周りには、强烈なバリアが张られている。
      .只是看一眼,就会马上受到学校里的审判(笨蛋召唤兽么..)什么的,被好好修理一顿,奈何她的周遭,正张开着一个强力的防御力场.
      痛い子オーラと言ってもいいかもしれない
      .或许可以称之为傻孩子的灵气也说不定.
      口を开けば世界を救うだの、私はここにいていい人间じゃないだのと素っ顿狂な言叶が飞びだし
      .将”张张嘴的话就能拯救世界”,”我不是生活在这里的人类”之类的发疯似得言论抛开不管.
      あげくに、にこりとも笑わない。
      结果,还是不能一笑而过啊.
      いつもどこか寂しげな瞳で外を见つめ、周りの奴らには兴味ないとばかりに小さくため息をつく。 .总是在什么地方用寂寞的双瞳望着外面,对周遭的家伙们完全没有兴趣似得小声地呼吸着.
      でもそれでも、仆は彼女が気になり始めた
      .但就算如此,我也已经开始在意起她了.
      「流韵って、そういうとこあるよね。なんか珍しいものに魅かれるっていうか」 .流韵的话,会有这样的吧.怎么说呢,被某种罕见的东西所吸引什么的.
      そう言ったのは、远山千雪だ。
      .曾经这么说过这话的,是远山千雪.
      エスカレーター式のこの宫阪附属高校は中高一贯教育で
      .自动扶梯似式的这个宫阪附属高校是中学高中同步教育的.
      どういうわけか千雪とは中一から高二まで同じクラスになりっぱなしなのだが、
      .就是如此,我跟千雪是从中学一年级开始到高二为止的同班同学.
      千雪は仆が谁かと付き合うたびにそんなことを言ってくる。
      .千雪问我是不是又跟谁在交往.
      いや、确かにそう见られがちなところはあるかもしれない。
      .不过,确实看起来是这么回事也说不定.
      なにせ仆が中二で初めて付き合った女の子には、リストカット癖があったのだ。
      .不管怎么说,我从初中二年级开始第一次交往的女生,是一个有自残癖好的人.
      次に付き合ったのは、十も年が上の主妇だった。
      .之后交往的是,比我大十年以上的家庭主妇.
      だから今回も、いつもの悪い癖で痛い子オーラ全开の女の子を好きになったと言いたいのだろう。
      .所以这次也,会被认为是喜欢上了一直以来具有不良癖好的秀逗灵气全开的女生的吧...
      千雪が眉根を寄せて、不快そうに言う
      .千雪皱了皱眉头,不快地说道.
      「でも流韵、そういうの、趣味悪いよ」
      .但是流韵,那样非常恶趣味哟.
      その、千雪の言叶は正しい。
      .千雪说的对.
      仆は趣味が悪い。ひどく趣味が悪い。
      .我很恶趣味,凶残的恶趣味.
      だからこんな、痛い子を好きになってしまった。 .所以,才完全地喜欢上了这样一个秀逗的孩子.
      世界を救う——なんて、马鹿げたことを言いだす女の子に、恋をしてしまった。 .完全喜欢上了说出拯救世界什么的,这种笨蛋才会说的话的女孩子.
      おまけにいま、仆は彼女が最も欲しがっているものを持っている。
      .顺带一提,现在,我掌握着她最想要的东西.
      彼女が、その命を舍ててもいいと思うほどに欲しているものを仆は持っている。 .她就算舍弃性命也想要拥有的东西,现在正被我所掌握着.
      そして彼女がそれを手に入れるには、仆と寝なければならない。
      而且她想要得到那个的话,就必须跟我一起睡.
      なぜそんなことになってしまったのかはもう、说明が长くなりすぎるからいまは省くけれど
      .为何会变成那样,现在说来话长,就省去不讲了.
      でも、彼女はとにかく、仆と寝なければそれを手に入れることができない。
      .但是,总之她,不跟我一起睡的话,就无法得到那个东西.
      でもきっと。いや、间违いなくきっと。 .但是一定,不,毫无疑问地.
      彼女が仆と寝るという选択をしたのなら、仆は彼女を嫌いになるだろう
      .她如果选择跟我一起睡的话,我就会开始讨厌她的吧.
      だって彼女は、决して仆のことを好きにならないから。
      .因为她,是绝对不会喜欢上我的.
      だって彼女には、他に好きな奴がいるから。
      .因为她,喜欢着另外一个家伙.
      だから仆は、彼女と寝ない
      .所以我,是不会和她一起睡的.
      彼女が仆を好きになるまで。
      .直到她喜欢上我为止.
      彼女が仆のことを、本当に好きになるまで。
      .直到她真真正正千真万确地喜欢上我为止.
      彼女が屈伏して、心の底から仆に平伏(ひれふ)すまで—— .直到她变得屈服,打心底里拜倒在我面前为止.
      翻译:エルカ


      IP属地:湖北3楼2019-05-13 23:18
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        02
        话は少し遡る。
        それは四か月前。
        初めてあの子に出会った日のこと。
        だから言うなればこれは、出会いの章だ。
        「なんか今日、転校生くるんだって」
        隣の席の远山千雪が唐突に言った。
        「転校生?」
        「うん」
        「こんな时期に?」
        「そう。こんな时期に」
        一学期も终わりかけの、七月。あと数日で夏休みに入る、という时期になってのその话に、仆は颜を上げた。
        千雪のほうを见る。
        千雪は中学までは黒髪おさげに眼镜という、もう、まったく男子を意识していないとしか思えない格好だったのだが、仆がリストカット好きな女の子と付き合ったのと同时に恋爱に兴味を持ったのか、眼镜を外した。それから主妇と付き合ったときに、髪をミディアムにして、高校デビューと同时に、ほんの少しだけ色を入れた。
        だからといって千雪が谁かと付き合ったという话は闻かないが、爱想がいいので男子たちの间ではけっこうな人気があるらしい。サッカー部の连中が何人も竞うように千雪に告白した、という话も闻いたことがある。だが、见ている限り彼女には浮いた话一つなくて。
        「なぁ千雪」
        「なに?」
        「彼氏作らないの?」
        「余计なお世话です」
        「もう高二の夏休み直前なんだけど」
        「だから余计なお世话だって言ってるでしょう」
        「相手いないなら、仆がなろうか? いま仆フリーだし」
        すると千雪の黒目がちな目が惊いたように大きく开く。こちらを见る。それからすぐに笑う。
        「ほんとに私のことが好きならいいよ?」
        「へ?」
        「だって流韵、好きじゃない子と平気で付き合うじゃん」
        「あー」
        「ほれほれ、私のどこが好きか言ってみなさいよ。その返答によったら、考えてあげなくもないよ?」
        目の前で両手を広げ、さあさあどうなのよとばかりに问いかけてくる千雪に、仆は答えた。
        「あー、うん。そうだな。セーラー服着てるとことか、かわいいと思う」
        「ばーか」
        「本気よ?」
        「だから、ばーか」
        そう言いながら、千雪は自分が着ているセーラー服を见下ろす。宫阪附属高校のセーラー服は、このあたりの学校の中ではかわいいと评判だった。ブラウスの部分が薄くぴんくがかっているのだ。そして仆もつられて、千雪の胸の部分を见る。それなりに膨らんだ胸を见る。すると视线に千雪が気づく。
        「えっち」
        「高二だし」
        「あ、开きなおるの?」
        「健全でしょう?」
        「体目当てな男とは绝対付き合ってあげないもんねー」
        千雪が舌をべーっとだす。けっこうかわいい。
        仆はそのべーっと出された舌をぼんやり见ながら、体目当てじゃない高二男子なんているのかなぁ? なんて、ちょっと思う。もちろんそういうコトに至るまでにはそれなりに恋や爱みたいな感情はあるだろうけれど、その中に、体をまるで意识しないなんてことがあるんだろうか、と思う。
        もしくはそいつは、贤者タイム中とか?
        「ははっ」
        「え、なんで突然笑ったの?」
        「いや、いまものすごく哲学的な悟りの境地に达してさ」
        「哲学的な悟りの境地?」
        「うん」
        「なにそれ?」
        「え? あー、千雪贤者って知っ……いや、まあ说明すると长いからいいや。それより」
        「途中で话やめるなー」
        不満そうに言う千雪を无视して、仆は话を戻した。
        「それより、転校生は男なの?」
        「え?」
        「転校生がくるんでしょう?」
        「あ、うん。そうだけど」
        「男? 女? そのへんのところ、夏休み直前にまだフリーな男女にとったら、けっこう重要なところじゃないの?」
        「あ、いまの私への告白は、そういう话の流れに繋がるのかぁ」


        IP属地:湖北4楼2019-05-13 23:19
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          少し寂しげな、がっかりしたような声で千雪が言う。なぜがっかりしたのかはわからない。体目当ての男とは付き合わないんじゃなかったのか?
          千雪が答えた。
          「女だってさ」
          「ほう」
          「美人らしいよ?」
          「へぇ」
          「狙っちゃだめだよ?」
          「仆、実は女には兴味ないんだ」
          「はーはーはー」
          「贤者なんで」
          「それ、だからなに?」
          「家帰ったら、ネットで调べてみ」
          「ふーん?」
          千雪は眉根を寄せて首を倾げ、ポケットから携帯を取り出し调べ始める。
          ちなみに贤者タイムというのは、主に男子が独りでコトに及び、终わったあとに、急に脱力して、冷静な気分になってしまうことを表す言叶だった。中学くらいのときだと、なぜか冷静になりすぎて、世界平和についてすら考えが及ぶことがあるのだが、それはさておき、まさか千雪がすぐに调べるとは思っていなかったので、仆は少しだけ戸惑う。
          千雪の颜はもう、真っ赤になっている。こちらをにらむ。拳を握る。
          「女の子に、こんなこと调べさせるなぁ」
          肩を殴ってこようとするが、あっさり仆はそれを手で受け止める。千雪の手は小さい。身长も152センチくらいしかないし、体重も軽そうなのでまるで冲撃もない。胸はそこそこあるのにな、なんて思いながら、仆は千雪の柔らかい手を受け止め、ぎゅっと握る。すると千雪の颜がさらに真っ赤になる。
          「な、な、なっ」
          教室中の视线が集まる。
          いまは六时限目が终わり、最后のHRが始まる前の、休み时间だった。放课后を目前にして、生徒たちの気が一番缓んでいる时间。おまけにいまは夏休み直前だ。なんというか、この夏休みを谁と过ごそうかな、なんてことをみんなが意识している时期。そんな中でおまえらなにじゃれてんだよ的な视线が一斉に集まってしまったので、仆は言った。
          「みんなの御想像通りです」
          「真颜で嘘つくなぁ~!」
          千雪が怒鸣った。そのまま思いっきり仆の手を振りほどく。
          それに仆は伤付いたような颜を作って、言う。
          「おまけにいま、フラれました」
          すると教室中が一斉に笑いだす。流韵っていっつもそうだよなとか言われる。かわいそうだから私が付き合ってあげるーだのと女子たちが言ってくる。仆はにっこり微笑んで、「体目当てでよかったらよろしくお愿いします」と答えるとまた爆笑が起こる。
          それでその场はおさまったようだった。だから仆は改めて千雪のほうへと目を向けて言った。
          「紧急回避成功」
          すると千雪はこちらを、やはり少し赤い颜で见ている。しかしなぜかその表情はどこか悲しげで。
          「流韵。そんなことばっかりやってちゃ、だめだよ」
          「ん?」
          「流韵のことずっと见てるけど」
          「へぇ~。ずっと见てるの?」
          「ちょっと、これ真剣な话」
          千雪が怒ったように言う。彼女は怒ると怖い。いや、怖いというより、しつこい。仆は话をそらすように颜をそむける。いつもの话が始まるからだ。
          しかし彼女はやはり、しつこい。
          「流韵、女の子と真剣に付き合わなきゃだめだよ」
          「彼氏いない奴に言われてもなぁ」
          「流韵がそうなったのって、やっぱりお母さんのせいなんでしょう?」
          「…………」
          「でも、みんながみんな、お母さんと同じになったりはしないんだよ?」
          心配するような颜で、千雪はそう言う。
          彼女が言っているのは、仆の母亲がどこぞの男と浮気して蒸発したあげくに、杀された事件のことを言っているのだ。母亲に男が出来た経纬はこう。というか、杀された、という事件の部分をのぞけば、别にひどくありふれた话だった。
          家计费が足りないと母亲はパートに出るようになり、そこで妙な男と知りあったせいで昼间から酒を饮むようになって育児放弃したあげく、蒸発。


          IP属地:湖北5楼2019-05-13 23:19
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            でもそんなのは仆が幼稚园のころの话で、状况を正确に覚えているわけでもない。父亲は大変だったらしいが、その父亲も亲に——つまり仆の祖父母に仆を预けっぱなしにしていなくなってしまった。だから仆は、祖父母に育てられた。祖父母は仆を不悯な子と呼んでかわいがってくれたが、でも、両亲のことをよく覚えていない仆が、どう不悯なのかはわからなかった。
            でも仆は不悯な子らしい。そして母亲が杀された事件は町内ではそれなりに有名なので、こちらから话してもいないのに、みんなが知っている。千雪に言わせれば、仆が女の子とまともな态度で付き合えないのは、母亲の一件があったから、ということになるらしい。なるほど。自分では気づいていなかったけど、もしかしたらそういうこともあるかもしれない。だから仆はもう一度千雪の少し膨らんだ胸のあたりを见て言った。
            「なら千雪が、仆を慰めてくれる?」
            「…………」
            真剣な话してるのに、と言わんばかりに、千雪はこちらを见つめてくる。彼女の黒目はやはり大きい。その瞳には、心配心配心配という言叶が浮かびあがっているかのようだ。そしてその、心配で溢れた瞳にじっと见つめられて、仆は困ったように肩をすくめる。
            「千雪が思ってるような反応は返せないよ。仆は真剣な话は苦手なんだ」
            「でも」
            それを遮って、仆は小さくため息をつく。千雪はとても敏感な子なので、その仆の様子に気づく。急にちょっと怯えたような颜になって、「あ、ごめん」と言う。
            「なにが?」
            「あの、私、立ち入った话、しちゃって」
            「别に。千雪ならいいよ」
            すると千雪は一瞬嬉しそうに笑い、それからまたしゅんとした颜になって、「でもごめんね」と言った。彼女のこういうところが人気があるのだと思う。どうでもいい他人のことをこんなにも热心に心配して、おまけにこんなかわいい反応。そりゃ告白の行列もできるだろう。
            だけど本当にこれは、立ち入るもなにもない话だった。仆にはテレビでよくあるような、トラウマのようなものはない。ただ、ちょっとした疑问や违和感があるだけだ。どうせ中学や高校で谁かと付き合ったところで、そんなものは长続きしないだろう? という疑问。なのになにをそんなに大袈裟に言う必要があるんだろう? こんなガキみたいな年齢で、爱だの恋だの騒いだって、そんなのは所诠たわごとで、三か月~半年もすればそれは、别の相手に言ってるような言叶なのだ。でもなら、真剣に付き合うっていうのはいったい、どういうことだろう? せめて三か月くらいは恋してるんだと口に出して言うことが、真剣に付き合うっていうことなのだろうか? それどころか、かすかな记忆の中の母亲は仆に、「あなたとパパのことが大好きだからね」といつも言っていた。だけど结局のところはあっさり他の男と——いや、この话の展开の仕方だと、トラウマがあるように见えるかな?
            それはまずい。とてもまずい。
            でもとにかく、仆は疑问を持っている。その疑问はごく普通の、当たり前のものだと思う。だからハタからは仆が女の子と真剣に付き合っていないように见えるのかもしれないが、仆からしたら、仆がやっていることと、他の奴らがやっていることに违いがないように思える。少なくとも、どうせどいつもこいつも三か月くらいしか「好きだ」と言っていない结果から见れば。
            いやそもそも人间という生き物は、自分の命を犠牲してもいいと思えるほどに、他者を爱すことなんてできないんじゃないだろうか? 少なくとも仆はそうだ。こんなに性格の良さそうな、千雪だってきっとそうだと思う。他者のために自分を犠牲にするなんて、とても无理だ。
            でもそれが普通のことだし、それが真実だと、仆はずっと、そう思っていた。


            IP属地:湖北6楼2019-05-13 23:20
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              その、転校生がくるまでは。
              教室の扉が开く。
              担任の狩野が入ってくる。
              「はい静かに。今日はホームルームを始める前に、ちょっと话がある」
              おそらく、転校生の话だ。
              千雪が、ほらねとばかりにこちらを见てくるので、仆は适当にうなずく。
              「このクラスに新しい仲间が入ることになった。もう一学期も终わるこんな时期だが、みんな仲良くするように」
              そう说明してから狩野は扉のほうへと目くばせする。すると教室に一人の少女が入ってくる。入ってきただけで、教室がざわつき、空気が変わったのがわかった。
              その少女が、美人だったからだ。
              ほどいたら腰まで届きそうな、二つにくくられた茜色の髪。白い肌に、华奢な体。千雪より胸はないな、なんて马鹿なことを仆は考える。でもそれでも彼女は、ひどく魅力的だった。一番の特徴は、目だ。まるでクラス全体を睥睨するような、目。见下しているのとも、冷めているとも违う。ただ全员を値踏みしているような目でこちらを见ていて。にもかかわらず、彼女の瞳には凛と透き通るような印象があった。
              「じゃ、自己绍介を」
              狩野にうながされて、少女は答える。
              「未见 葵音(みみあおね)です。よろしく」
              声は见た目の印象よりも高かった。しかし、自己绍介はそれだけ。しばらく狩野が未见の次の言叶を待ち、どうやらなにもないとわかると「みんな仲良くするように」とだけ言って、ホームルームを始めた。
              未见の席は、窓ぎわの一番后ろになった。クラスの奴ら全员が彼女に兴味津々で视线を送るが、彼女はそれを无视して、まるで马鹿どもには兴味ないと言わんばかりに窓の外へと目をやる。いきなりその态度はまずいだろう、と、仆は思うが、案の定、周りで女子たちのひそひそ声がする。
              「なにあれ」
              「感じわるーい」
              男子たちの声がする。
              「でもかわいいよな」
              「なんでこんな时期に転校してきたのかね?」
              また女子が答える。
              「いじめとか?」
              「あは、ありそー。あの态度じゃねー」
              そしてそれで、终わりだった。
              最后の言叶は、クラスの女子たちの中では一番権力を握っている、樋口彩が言ったから。その一言で、あっさりすべてが决まってしまった。クラス全体にほんの一瞬だけ、紧张したような雰囲気が広がる。教室中が静まり返る。担任の狩野は気づいていないが、生徒たちはそういうことに敏感に反応する。
              いじめが始まるのだ。
              いや、そもそもこのクラスには最初からいじめがあった。窓ぎわの一番后ろの席があいていたのは、いじめで学校にこなくなってしまって、つい最近退学した女の子がいたからだ。
              樋口彩(ひぐちあや)のたった一言で、クラスの男子たちも、女子たちも、未见のほうを见るのをやめてしまう。未见はきっと、なにが起きたのかすら気づいていないだろう。だが、明确になにもかもが変わった。このクラスでこれからなにが起きるのか、どうなっていくのか、すべてが変わってしまった。少なくとも未见は、このクラスでは谁とも友达になれない。
              そしてそんな未见を、仆はぼんやり见つめていた。机に肘を突き、手に頬を乗せて、彼女の绮丽な横颜を见つめる。つまらなそうな瞳を见つめる。彼女の瞳が见ている先を见つめる。
              彼女が见やる向こうの景色は真っ青で、夏らしく积云が大きく広がっている。でも、あるのはそれだけだ。ただ云があるだけ。そして彼女は、クラスの连中よりも、そのただの云のほうが価値があるとばかりに、清々しいほど周囲に注意を払わない。
              それを仆は见つめる。未见の横颜を见つめる。未见が见ている云を见つめる。
              すると背中を千雪が引っ张る。「もぉ」という声がする。でも、仆は振り返らない。


              IP属地:湖北7楼2019-05-13 23:20
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                「流韵」
                「…………」
                「またそれなの?」
                「…………」
                「だめだって。樋口さんの言叶闻いたでしょ?」
                千雪は小声で言ってくる。
                「流韵ってば」
                「…………」
                「流韵!」
                仆はそれに、答えた。
                「なあ千雪。あれ、ちょっとおかしくない?」
                「え?」
                「云だよ。窓の向こうの、云」
                「ん?」
                千雪が颜を出す。窓のほうを见る。
                「なにが?」
                と、闻いてくる。
                だが仆は、千雪がなんで、「なにが?」と闻いてきたのかがわからない。だって、あきらかにおかしいのだ。未见が见ている窓の外の景色が。云の轮郭が。
                夏の云は轮郭がはっきりしている。阳射しやら上升気流やらの问题で、なぜかそうなるらしい。だが、いま、窓の外にある云を縁取る色が、浓い紫色に见えていて。
                いやもちろん、外からの阳射しが强いのに仆はずっと未见のほうを见ていたから、目がおかしくなってしまったのかもしれないが。
                だから仆は确认するように、千雪に闻いた。
                「……云のまわり、紫色に见えない?」
                「云?」
                「うん」
                「见えないけど」
                千雪が不思议そうに答える。
                「あれ、じゃ、やっぱ目のせいかな」
                仆は目を闭じる。ぎゅっと目を闭じる。妙に目の奥が痛む。明るい场所を见つめ过ぎていたせいで、暗暗の中央に、光の残像が浮かぶ。星形のような、十字のような、そんな残像。それから仆は目を开く。云を见ようとする。だがそこで、
                「あっ」
                と仆は声をあげてしまった。
                さっきまであれほど教室のことに兴味なさそうにしていた未见が、真っ直ぐこちらを见てつめていたから。なにかを见つけたと言わんばかりにじっと、仆を见つめていたから。おまけにこちらを见ながら、笑みを浮かべる。その笑みの理由はわからない。席はそれほど近くないので、ここから声を出してそれを闻くわけにもいかない。だから仆も、彼女に笑ってみせようとする。が、そこで担任の狩野が言った。
                「これでホームルームは终わりだ。気を付けて帰るように。起立」
                一斉に生徒たちが立ち上がる。しかし未见は立ち上がらない。彼女は独り、立ち上がらない。
                「流韵」
                后ろの千雪に言われて仆は立ち上がる。その仆を、つまらないものを见るように未见が见上げてから、目を逸らしてしまう。
                教室の一番前の席に座っている挨拶系の佐久间が言う。
                「礼」
                『みなさん、さようなら』
                「解散」
                それでホームルームは解散になった。
                狩野が教室を出ていく。それを见计らうようにして、樋口彩が四人くらい、いつもつるんでいる女子たちを引き连れて未见のほうへと向かう。
                「ねぇ転校生さん、私たちと友达にならない?」
                「…………」
                未见はやはり无视だった。无言のまま、鞄から教科书のようなものを取り出す。それを机の引き出しに入れる。鞄の盖を闭じる。そしてその様子を、教室中の生徒たちが、言叶を失ったまま见つめている。
                樋口が表情を険しくてして、言う。
                「ちょっと未见さん?」
                「…………」
                「なによ、それ。もしかして私、马鹿にされてる?」
                そこでやっと、未见は颜を上げる。やはり澄んだ瞳で樋口の颜を见つめ、
                「……马鹿にするほどあなたに兴味ない」
                「なっ」
                「もういい? 私忙しいんだけど」
                未见が立ち上がる。その场を立ち去ろうとする。しかしその未见の前に樋口が引き连れていた女子四人が立ち塞がる。
                「ちょっと、せっかくあたしたちが声かけてやってんのに、なによその态度は」
                「感じ悪~い。どうせあんた、どっかの学校でいじめられて転校してきたんでしょ」
                「おかしいと思ったのよね。こんな时期に転校してくるなんて」


                IP属地:湖北8楼2019-05-13 23:21
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                  2025-05-21 11:04:37
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                  「ねーみんなー。こういう暗い奴って、むかつくよねー」
                  などと言って、女子たちは笑う。その横で、樋口も笑っている。そしてこれが、毎日続くのだ。学校をやめた女の子は、毎日马鹿にされて、笑われ続けていた。助けることはできない。仮にやめろよと男子が言ったところで、女子たちはそれを、隠れて続けるから。まあ、いじめなんてのはどれも一绪で、女子も男子も関系ないかもしれないけれど。
                  でも、こうなってしまってはもう、助けることができない。
                  未见は登校初日に孤立してしまった。
                  横で千雪が嫌そうな颜でそれを见ている。樋口と一绪に笑っているのは、クラスでは三分の一くらいのものだ。その生徒达の颜にも薄く、ほんの薄く、恐怖が浮いている。一绪になって笑わないことで、自分が次のターゲットにならないように、一生悬命笑う。
                  そしてその、笑う女子たちに囲まれて、未见は无表情のまま、ただ立ち尽くしている。
                  「こいつびびってるよー」
                  「ちょっと、いじめてるみたいだからそういう言い方やめよーよ」
                  「もう、ほらほら、なんか言いなさいよ。まるで私たちがいじめてるみたいでしょー」
                  その言叶に、未见は答える。
                  「どいてくれる?」
                  また、爆笑が起こる。
                  「だから逃げんなって」
                  「私たち、わざわざ友达になろうって言ってやってんのに、その态度はどうかと思っ……」
                  が、その言叶が突然、止まる。いや、止まっただけじゃなく、
                  「ぐげっ」
                  と、まるでカエルを踏み溃したときのような、妙な声に変わる。
                  いつの间にか未见の手が、目の前にいた女の首をつかんでいる。そのままぎゅっと力を込める。首を绞められている女子は、
                  「うあ、げ、があ」
                  女の子が出しちゃいけないような苦闷の声を上げる。未见の手を両手で引き离そうと、暴れる。しかし未见の手は外れない。首が缔めつけられ続ける。みるみるうちに颜が真っ赤になる。周りを囲んでいた女子たちはなにもできない。あまりに突然のことに、なにもできない。いじめてたはずの相手が、突然无表情のまま首を绞めてくるだなんて思っていなかったから、まるで反応できないでいる。
                  未见は颜を、樋口のほうへと向けて言った。
                  薄く、笑って、
                  「私、どいてって言ったでしょう」
                  そう言った。
                  それに樋口は気押されて、怯えるように一歩、下がった。
                  未见は首から手を放す。床に女子が「がはがは」咳をしながらくずおれる。未见はそれを、见もしない。
                  「用はこれだけ? それなら私は帰るけど」
                  女子たちから返事はない。しかし未见は気にした様子もなく、その场を去ってしまう。
                  「…………」
                  そしてもう、谁もなにも言わなかった。
                  いや、それ以降、谁も未见に话し挂けなくなってしまった。樋口たちが无视しろと言って回ったのか、それとも未见のほうが谁とも话すつもりがなかったのか。たぶん、その両方だと思う。谁もがまるで、肿れ物に触るかのように未见を扱い——いや、触りもしなかったからこの表现はおかしいかもしれないけれど——だけどとにかく、彼女はこの学校で、孤立した。
                  授业中も、休み时间も、彼女は谁とも喋らない。ただ、一番后ろの窓ぎわの席で、窓の外を。その空に浮かぶ云を、ぼんやり见つめ続けている。终业式がくるまでの数日、彼女はずっと、外ばかりを见ていて。
                  そして仆はその、云を见ている彼女ばかりを见ていた。
                  そしてあっさり、一学期は终わる。
                  夏休みに突入する。
                  千雪には结局彼氏はできなかったし、仆も独りのままだった。
                  未见に至っては、友达すらいない。
                  いや、别に夏休みになったところで、普通は特别なことなんてなにも起きないのだ。ありがちなことが、ありがちなくらいの确率で起きるだけ。
                  だけど仆はその夏に、未见葵音と话すようになった。
                  初めて言叶を交わしたのは、八月も中ごろになってからのことだった。


                  IP属地:湖北9楼2019-05-13 23:21
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                    谢谢您,我哭了(跪


                    IP属地:湖南10楼2019-05-19 22:57
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