『最後のひと手間で俺の餃子はようやく完成するんすよ こっからが俺の餃子の…真の姿だ!!』
■創真、覚醒!!
叡山「いいだろう…見せてみろや幸平…!だがそれで終いだ…!! 学園での最後の調理を楽しめや!!」
愚痴る審査員「まったく…叡山殿も付き合いの良いことだな」「あんな少年の料理なんて高が知れてるというのに!」
ニヤニヤしてる竜胆「……」
どっかに走るソーマ「お!そだそだアレもとって来なきゃ」
そう言って鍋を持って来る。
叡山「?」
(アレは…さつま地鶏の鶏ガラ…?)
(そうか…試合開始前から煮込んでスープをとっていたのか)
『事前に仕込みが必要なら済ませておけよ』
『んじゃこっちの厨房借りますわー』
というやりとりを思い出す叡山。
叡山(餃子に鶏ガラスープだと…?何をやるってんだ それに…さっき手に取っていた あの2つの容器は一体…?)
ソーマ「おし…スキレットがじゅうぶん温まってきた」
ナレーション:
スキレット…鋳鉄製で高い蓄熱性を誇る厚手のフライパン 素材に対してやさしく かつ ムラ無く火を通すことができる 小さめサイズの物は料理を1人分ずつ提供するのにも便利
ソーマ「手羽先の皮目もいい感じ」
(ここで水分を投入だ!)
局長(焼き餃子は…水分を加えて蓋をすることにより 具の中まで蒸し焼きにすることが大事だ)
(その際 水ではなくお湯を使った方が焼き上がりがべと付きづらくなる 幸平もそれを心得ているようだ)
(スキレットに湯を入れたーー)
とそこで円筒の筒から何やら調味料を振りかけるソーマ。
パラパラと餃子に粉が降りかかる。
審査員「む…何だ?」
竜胆「チーズ…?」
「パルメザンチーズだ」
観戦してる生徒達「なに! 湯と一緒にチーズを!? 一体何のために…?」
そこで食戟局長がガタっと椅子から立ち上がる。
局長「わかったぞ! 彼の餃子の正体!! 羽根つき餃子だ!」
「羽根つき餃子は本来水で溶いた小麦粉で作るもの 彼はそれをパルメザンチーズによって作ることを思い付いたのだ!」
解説:
焼く時に流し込むと薄くパリパリとした食感の“羽根”が出来る
(つまり…”さつま地鶏の羽根チーズつき手羽先餃子”! それが彼の餃子の真の姿…!! )
審査員「くくくっ…はっはっはっは…!」
「ほら見たことか! いよいよ本格的に無様なB級アイディア料理になってきたぞ」
(そもそも具に豚トロなんかを使った時点で地鶏の風味は台無しなのに 更にその上チーズまで!? さつま地鶏の上質な風味を…余計なものでゴテゴテと塗りつぶす行為に等しい! 見事に洗練された叡山殿の品とは全くの対極だ!)
審査員「やはり時間のムダだった…さっさと判定を済ませて食戟を終えるべきだった!」
しかし叡山はまだ動かない。
叡山(…だが…あの鶏ガラスープを使っていないぞ まだ何か…あるのか?)
審査員「おい! 何か言ったらどうなんだ幸平創真! 悪あがきはやめたまえ!!」
ソーマ「しっ」
叫ぶ審査員を制するソーマ。
ジュワァアアという焼き音だけが厨房に響いていく。
とそこでパチパチッという音を聞くソーマ。
ソーマ(来た 羽根の水分が飛びきった音ーー今だ!!)
フタを開け、ついに鍋のスープを投入する。
叡山「スープを…!」
ソーマ「ここまでで最後のひと手間なんすよ」
「地鶏からとった鶏ガラスープに片栗粉を加えた…”あんかけ”を回しかけて仕上げだ!!」
ついにフライパンを置くソーマ。
ソーマ「おあがりよ 叡山先輩…!!」
叡山「…くだらねぇ」
「このあんかけが何だって言うんだ どうせ考え無しに調理手順を足してみただけだろう」
「決まりだぜ やはりお前が遠月には不要な存在だー…」
もぐもぐ…
餃子を口に含んだ叡山が固まる。
審査員「…ん?」
プルプルプル…と震えだす叡山。
そして新たな顔芸を披露。
背後から煽るソーマ「あれー?」
「どうしたんすか叡山先輩 ひょっとして俺の餃子」
「美味いって思ってんすか?」
叡山「……!」
審査員「な…! 何ぃい!?」「あんなB級グルメなんかが!?」「バカなありえない!」
ソーマ「まぁまぁ…そこまで言うなら食べてみた方が早いんじゃないすか? はいどーぞ」
目の前に置かれた見るからに美味そうな一品に唾を飲む審査員「……」
しかし我慢するように、実食を拒否。
審査員「…バカバカしい!」
「言っただろう! 君の品など食べる必要はないんだよ!」
「さあ判定にー」
そう言ってスイッチに伸ばした手をもう一人の審査員が止める。
「?」
審査員B「えっと…その…」
「判定は…一口食べてみてからでもいいんじゃないですかね…?」
審査員「なにぃ?」
審査員B「ほら…勝敗はもう決まってるんですし!」
審査員「…何を言ってるんだね君は! 時間の無駄だ! とにかく私は食わんよ!」
審査員B「じゃ じゃあすみませんが僕は一口…」
審査員「…!」
それを見てたもう一人も「じゃ じゃあ私も…」
審査員「!?」
そして餃子を食べた2人が一気におはだけ。
審査員B「何故だ…!」
「何故あんなムチャクチャな調理でここまで地鶏の風味が際立っているんだ!?」
ソーマ「その答えは“あんかけ”っすよ」
「地鶏のスープに醤油・酒・酢・砂糖・ごま油と…そして ある“秘密の隠し味”を加えてあります」
審査員「隠し味…だと!?」
ソーマ「ねぇ叡山先輩」
「叡山先輩も美味いって思ったんすよね 俺の料理」
「だったら」
「どっちの皿の方が美味いかハッキリさせたくないっすか?」
対峙するソーマと叡山。
■波乱に満ちた食戟はついにクライマックスへ!
