Neues Jahr
今日の夜会は、微かなざわめきの中にあった。人々はそわそわとし、ときおり时计に目をやりながら时间の过ぎるのを待っている。そんなさなかにあって皇太子はいつもの落ち着き払った优雅な様子を崩さなかった。贵族たちと谈笑しながら、つぎつぎと会话の轮の中をすり抜ける。人々の落ちつかない雰囲気を见て取って、これなら别段、自分がいなくてもかまわないだろうとルドルフは皮肉な笑みを刻んだが、それは俯いた彼の口元に闪いただけで、谁が目にすることもなかった。そして実际、皇太子の姿はその仅かのちに大広间から消えうせていたのだが、しばらくの间、その事実に谁も気づかなかったのである。
※
别段、司祭にとって特に年末が忙しいということはない。
今年のうちに罪を告解しておこうと思ったのか忏悔に来る者もあったが、それは昼间だけのことだ。アルフレートは、ごく静かな夜を过ごしていた。
とはいうものの、年が明ける今夜、早くから眠ってしまう気にもなれなくて徒に本を开いている。なにか、集中して本を読むのも可笑しいように思えて、自分の部屋に置いてある本を取り出しては、书架の脇に立ったままパラパラとめくった。もちろん自室にある本であるから内容はすべて、头の中に入っている。
空気が、どこかざわざわとしている。
アルフレートは、大広间の方向を気にして、そしてそんな自分に微かに笑った。ルドルフは今、新年を迎えるためのパーティに出ているはずだった。その方向に思いを驰せたのだ。
しかし。
「何を読んでいるんだ?」
ひょい、と背后から本が取り上げられた。
华やかで、鲜やかな空気。惊いて背后をうかがうと、夜会にいるはずの皇太子が、何故かやってきていた。
「ルドルフ様?!」
「ああ、うるさい。まったくおまえはいつものことながら无用心だな。部屋には键をかけろ」
「いえ、あの……」
アルフレートが见ている前で、さっさと机においてある键を手にして扉に向かう皇太子である。
「あの、ルドルフ様。夜会は……」
「あんなもの」
つまらなさそうに鼻を鸣らす。
「抜け出してきた」
「ルドルフ様!」
非难の响きで强く名を呼ぶと、ふん、と、つまらなそうにそっぽを向く。
「别段、私がいなくてもどうということはない」
「しかし、」
「うるさい」
切って舍てると、ルドルフは不意に、荡けそうに甘い声でアルフレートを呼んだ。思わず身をひこうとしたアルフレートを知っているように手が伸びてきて、抱きしめられる。
「そんなことを言いたいのか?アルフレート」
耳朶を軽く噛みながら嗫かれて、反射的に身が竦む。
「本当に?」
「ルドルフ様……」
困ってしまって呟くと、ルドルフは微笑んだ。思わず、见ほれてしまうような微笑みだった。
一つ、息をはく。
「あの……」
「なんだ?」
頬が热くなる。手が、おちつかなげにルドルフの背中に軽く触れる。
「もうすぐ、年が明けますね」
「――そうだな」
「夜会に戻らなくても、よろしいのでしょうか」
ルドルフが、射すくめるような强い目をした。アルフレートはルドルフの背中に触れた。ぎゅっと抱きしめる。
「……でも、嬉しく思います」
「――アルフレート」
そっと頬に触れられた。指が、ためらいがちに伤痕をたどる。爱抚に似た、それ。
くすぐったさに、軽く笑む。ルドルフの瞳が近づいた。目を闭じるとそっとくちづけられてついばむようなキスを缲り返した。
ベッドにいざなわれても、困ったような、気耻ずかしい感情が强い。
明日からしばらく、このベッドで眠れないかもしれない、とふと思う。わかっていても、拒む気持ちは起こらない。思考を読んだかのようにルドルフは悪戯っぽい笑みを浮かべている。
今日の夜会は、微かなざわめきの中にあった。人々はそわそわとし、ときおり时计に目をやりながら时间の过ぎるのを待っている。そんなさなかにあって皇太子はいつもの落ち着き払った优雅な様子を崩さなかった。贵族たちと谈笑しながら、つぎつぎと会话の轮の中をすり抜ける。人々の落ちつかない雰囲気を见て取って、これなら别段、自分がいなくてもかまわないだろうとルドルフは皮肉な笑みを刻んだが、それは俯いた彼の口元に闪いただけで、谁が目にすることもなかった。そして実际、皇太子の姿はその仅かのちに大広间から消えうせていたのだが、しばらくの间、その事実に谁も気づかなかったのである。
※
别段、司祭にとって特に年末が忙しいということはない。
今年のうちに罪を告解しておこうと思ったのか忏悔に来る者もあったが、それは昼间だけのことだ。アルフレートは、ごく静かな夜を过ごしていた。
とはいうものの、年が明ける今夜、早くから眠ってしまう気にもなれなくて徒に本を开いている。なにか、集中して本を読むのも可笑しいように思えて、自分の部屋に置いてある本を取り出しては、书架の脇に立ったままパラパラとめくった。もちろん自室にある本であるから内容はすべて、头の中に入っている。
空気が、どこかざわざわとしている。
アルフレートは、大広间の方向を気にして、そしてそんな自分に微かに笑った。ルドルフは今、新年を迎えるためのパーティに出ているはずだった。その方向に思いを驰せたのだ。
しかし。
「何を読んでいるんだ?」
ひょい、と背后から本が取り上げられた。
华やかで、鲜やかな空気。惊いて背后をうかがうと、夜会にいるはずの皇太子が、何故かやってきていた。
「ルドルフ様?!」
「ああ、うるさい。まったくおまえはいつものことながら无用心だな。部屋には键をかけろ」
「いえ、あの……」
アルフレートが见ている前で、さっさと机においてある键を手にして扉に向かう皇太子である。
「あの、ルドルフ様。夜会は……」
「あんなもの」
つまらなさそうに鼻を鸣らす。
「抜け出してきた」
「ルドルフ様!」
非难の响きで强く名を呼ぶと、ふん、と、つまらなそうにそっぽを向く。
「别段、私がいなくてもどうということはない」
「しかし、」
「うるさい」
切って舍てると、ルドルフは不意に、荡けそうに甘い声でアルフレートを呼んだ。思わず身をひこうとしたアルフレートを知っているように手が伸びてきて、抱きしめられる。
「そんなことを言いたいのか?アルフレート」
耳朶を軽く噛みながら嗫かれて、反射的に身が竦む。
「本当に?」
「ルドルフ様……」
困ってしまって呟くと、ルドルフは微笑んだ。思わず、见ほれてしまうような微笑みだった。
一つ、息をはく。
「あの……」
「なんだ?」
頬が热くなる。手が、おちつかなげにルドルフの背中に軽く触れる。
「もうすぐ、年が明けますね」
「――そうだな」
「夜会に戻らなくても、よろしいのでしょうか」
ルドルフが、射すくめるような强い目をした。アルフレートはルドルフの背中に触れた。ぎゅっと抱きしめる。
「……でも、嬉しく思います」
「――アルフレート」
そっと頬に触れられた。指が、ためらいがちに伤痕をたどる。爱抚に似た、それ。
くすぐったさに、軽く笑む。ルドルフの瞳が近づいた。目を闭じるとそっとくちづけられてついばむようなキスを缲り返した。
ベッドにいざなわれても、困ったような、気耻ずかしい感情が强い。
明日からしばらく、このベッドで眠れないかもしれない、とふと思う。わかっていても、拒む気持ちは起こらない。思考を読んだかのようにルドルフは悪戯っぽい笑みを浮かべている。