01_1 はじまりの日
yuta_1026 【裕太】
「みんなーおっはよ~~!」
オレはいつも通り、元気よく声を上げて教室に入った。
见惯れた早起き组の面々が笑って挨拶を返してくれる。
boy0_0000 【男子】
「おう。おはよ、蓝川」
gir0_0000 【女子】
「蓝川くん、今朝は洗濯物干して来たんでしょ!」
yuta_1027 【裕太】
「うん、もちろん! 今日は晴れてよかったよ~」
ここのところ雨が続いてたから、今日は溜まってたもの
全部干して来た。
1人暮らしだから量は大したことないんだけど、部屋干
しが嫌いでずっと我慢してたから。
それにしても、最近ホント凉しくなって来てかなり気分
がいい。なんたって今年の夏はひどかった。
バイト三昧で体力低下してたせいもあると思うけど、と
にかく夏バテがひどくて、ただでさえ薄っぺらい体なの
にそのせいでまた体重减っちまったし。
ryou_0378 【谅】
「おはよう裕太。なんか今朝はいつもに増して元気がい
いな」
yuta_1028 【裕太】
「谅おはよう! あ、やっぱ分かる? へへー実はさ…
…」
ryou_0379 【谅】
「どうせ特売かタダメシかボーナスだろ?」
yuta_1029 【裕太】
「うっ!? な、何で分かったんだ……谅、お前エスパ
ーか!?」
ryou_0380 【谅】
「谁だって分かるよ……裕太の行动パターンはさ」
呆れたようにため息つかれて、ちょっと耻ずかしくなる。
オレってそんなに分かりやすい……?
でも、谅がオレの幼なじみだからすぐ颜色読めちゃうっ
ていうのも绝対あると思う! コイツ、ホント异常なく
らい锐いんだから!
ryou_0381 【谅】
「しかし……何だってお前、こんな生活になっちゃった
んだろうな」
yuta_1030 【裕太】
「え? こんな生活、って?」
ryou_0382 【谅】
「お前なあ……。はあ。顺応性がよすぎるって言うか、
忘れっぽいって言うか……。以前はこうじゃなかった
ことくらい、覚えてるだろ?」
yuta_1031 【裕太】
「……ああ! なんだ、そういう意味か!」
谅に言われるまで素で忘れてた。确かにオレ、この生活
に驯染み过ぎて、まだ家族と暮らしてた顷のこと忘れか
けてるのかも……。
家族と暮らしてた顷って言っても、まだ1年も経ってな
いんだけど。
なにせ急な展开だったから、オレは泣き言言う暇もなく
この生活に顺応してたって言うか。
ryou_0383 【谅】
「だけどさ、おじさまももう少し生活费上げてくれたっ
ていいのにな。いくらお前が家族の反対押し切ってこ
っちに残ったからってさ」
yuta_1032 【裕太】
「べ、别にいいんだ。オレはこれでもやれてるんだから」
ryou_0384 【谅】
「……お前は、九州に行く気ないわけ?」
yuta_1033 【裕太】
「ないに决まってるじゃん! 何のためにバイト诘め込
んでまでこっちに残ってると思ってんだよ!」
ryou_0385 【谅】
「……ん? そう言えば、何のためだ?」
yuta_1034 【裕太】
「えっ? えーと……それは……」
yuta_1035 【裕太】
「……九州、コワイから」
ryou_0386 【谅】
「ハア?……九州の何が怖いんだよ」
yuta_1036 【裕太】
「え、えっと……」
yuta_1037 【裕太】
「……九州男児、とか」
ryou_0387 【谅】
「…………」
yuta_1038 【裕太】
「……ごめん。うそ」
yuta_1039 【裕太】
「りょ、谅と……离れたく、なかったし」
ryou_0388 【谅】
「……ハア?」
yuta_1040 【裕太】
「なっ……何だよ!」
ryou_0389 【谅】
「お前ね……嘘ならもうちょっと信凭性のある内容にし
ろよな」
yuta_1041 【裕太】
「…………」
……実のところ、东京に残ったのは结构耻ずかしい理由
だったりする。
そもそもこの生活苦の始まりは、急に决まった亲父の転
勤だった。
亲父は天国屋っていう百货店に役员として勤めてる。
天国屋って言うのは今年で创业100年の老舗百货店で、
立ち上げたのは俺のひいじいちゃんで……つまり、蓝川
の血筋は创业者一族ってやつなんだ。
その天国屋が100周年を记念して福冈に新店舗を作っ
て、常务取缔役の亲父はそこの総括责任者として阵头指
挥をとるために転勤が决定して。
どんな事情があったんだか知らないけどかなり急な话で、
オレはこの楽才学园に入学したばっかりの春先にそれを
知らされたってわけ。
で、亲父と母さんは当然家族ごと福冈に行く気でいたら
しいんだけど、そこでオレが残るって言い出した。
だってせっかく入ったばっかの学园転校するなんて嫌だっ
たし、何より……ハハオヤ离れ、したかったんだ。
ryou_0390 【谅】
「まあ、お前なりに考えての行动だと思うけどさ。おば
さまも寂しがってるだろうな。裕太のこと、すごく可
爱がってたし」
yuta_1042 【裕太】
「う、うん……そうかも、しんないけど。……そろそろ
母さんも子供离れしてくれないと、困るよ」
ryou_0391 【谅】
「……へえ。お前がそんなこと言うなんてな」
yuta_1043 【裕太】
「ど、どういう意味だよ」
ryou_0392 【谅】
「いや、别に? 成长したなあと思ってさ」
yuta_1044 【裕太】
「うっ……ど、どうせオレは……」
そう。今回の1人暮らしは、オレが自他共に认めるマザ
コンだからこそ、决意したことだった。
母さんがすごく寂しがってるのは、クソ亲父の毎周かけ
てくる电话で知ってる。
あの亲父、自分が何言ってもダメだって知ってるから母
さん引き合いに出してこっちに来いってうるさいんだ。
だけど、何言われたってオレは东京を离れないって决め
てる。今回のことはチャンスなんだ。亲父の干渉からも、
母さんの依存からも逃れるための。
yuta_1045 【裕太】
「子供がいなきゃ寂しいなら、いっそのこと、兄ちゃん
が福冈店に転勤すればいいのに。どうせ同じ会社なん
だから」
ryou_0393 【谅】
「あー……无理だろ」
yuta_1046 【裕太】
「え? なんで? そりゃ今は札幌店勤务だけどさ、そ
のくらいどうにでも……」
ryou_0394 【谅】
「违うって。どうせアイツ、女切れたことないんだから
同栖でもしてるよ。歳も歳だし、そろそろ结婚の话と
かないの?」
yuta_1047 【裕太】
「ええっ!? 结婚……全然想像つかないなあ……」
オレの兄ちゃんは今年で27歳。そう言えば结婚しても
おかしくない年齢だけど、そんな话闻いたこともない。
大学出て亲父と同じ会社に就职して、すぐに名古屋に転
勤になった。2年くらいいて、その后少し东京に戻って
来たけど、また今度は札幌に転勤。
だから、もうずっと东京にはいないけど、时々帰って来
たりするし、电话もしてる。
结婚なんてそんな重要な话があったら、闻いてないはず
ないんだけどなあ。オレが1人暮らし始めてからは心配
してよく电话くれるけど、そんな话题にはならない。
ryou_0395 【谅】
「……ま、いいや。あんなヤツの话。なあ、ところでさ」
yuta_1048 【裕太】
「うん?」
廊下の方からどたばた烦い足音と叫び声が闻こえ、物す
ごい势いで教室のドアが开いた。
haga_0307 【???】
「よっしゃあ!! いちばん乗りッ!!」
先头で走り込んできたヤツに続いて、息せき切った2人
が飞びこんできた。
boy1_0001 【男子1】
「ふっざけんな、お前さっきシャツ引っ张りやがっただ
ろ芳贺っ!」
boy2_0001 【男子2】
「うあ~なんだよー。あんな赌けしなきゃよかったぜ~
今月厳しいのに……」
haga_0308 【芳贺】
「あっははは! 今更おせーよ! 约束通り、放课后お
前らのおごりな!」
騒がしく教室に駆け込んできたのは、芳贺とバスケ部の
连中だった。
谁が教室へ一番に駆け込むか赌けをしていたらしく、
今朝もまた芳贺が胜ったらしい。
运动部の朝练が终わるこの时间帯、いつも教室は急に赈
やかになる。
ryou_0396 【谅】
「おはよう芳贺」
haga_0309 【芳贺】
「ん? おう! 广瀬、今日も早いなあ! お、蓝川。
お前昨日も相変わらずバイトだったんだろ」
yuta_1049 【裕太】
「え? うん。そうだけど」
haga_0310 【芳贺】
「ボケーッとした颜してさあ、かなり疲れてんじゃね?
たまには休んだらどうなんだよ」
yuta_1050 【裕太】
「べ、别に疲れてないって! オレ元からこういう颜な
の!」
ryou_0397 【谅】
「芳贺。とりあえず廊下は走るなよ。お前とぶつかった
ら相手がただじゃ済まないんだから」
haga_0311 【芳贺】
「あぁ、わりわり。だっていきなりコイツらが竞争だ!
とか言い出すからさー」
boy1_0002 【男子1】
「嘘つけよ! 最初に言い出したのお前だろーが!」
haga_0312 【芳贺】
「あれ? そうだっけ? まあどうでもいいじゃん。と
りあえずおごり、忘れんなよ!」
芳贺达はハイテンションで喋りながら、いつもたまり场
にしてる教室の角のスペースに移动して行った。
まるで岚が通过してったみたいだ……。
yuta_1051 【裕太】
「あいつらいっつも元気だよなー」
ryou_0398 【谅】
「裕太だってそうだろ。……そんな体のどこに毎日遅く
までバイトして学校も皆勤赏なエネルギーがあるのか
知りたいよ」
yuta_1052 【裕太】
「そんな体は余计! 惯れだよ惯れ! ところで谅、さ
っきの话の続きって?」
ryou_0399 【谅】
「ああ! そうそう。あのな、また母のお弟子さんから
残暑见舞いにたくさんお菓子を顶いたんだ。もしよか
ったら……」
yuta_1053 【裕太】
「わっ! 本当!? もらうもらう!!」
条件反射で思わずがくがく颔くと、谅は目を丸くした后、
はあー、なんて深くため息ついてる。
ryou_0400 【谅】
「……まったく、食いつきがいいんだから。もうちょっ
と远虑したら?」
yuta_1054 【裕太】
「し、仕方ないだろ! 生きるためなの!」
ryou_0401 【谅】
「生きるため、ねえ。……育ちはいいクセに、何でこん
な风になっちまったんだか……」
それにしても、持つべきものは裕福な友人って感じだ。
谅からはこの前お中元の残りをもらったばっかりなんだ
けど、食费が浮いて本当に助かってる。
谅の母亲はテレビに出るくらい有名なお茶の先生。お弟
子さんもたくさんいて、しょっちゅう赠り物贳うからい
つも処分に困ってる。
父亲は大学教授で时々心理学の本も出版してるし、両亲
共に颜が広くて冠婚葬祭のときなんか本当に大変らしい。
この楽才学园は结构ブルジョアな家の学生が多いんだけ
ど、その中でも谅の家は际立ってると思う。
だけど谅自身は、目立つのが嫌いな性格だから、亲のこ
と言われるのはあんまり好きじゃないみたいだ。
もう入学してしばらく経つから驯染んできたけど、やっ
ぱり最初は闻かれる度にいつもうんざりした颜してたな
あ。
授业の始まりを告げるチャイムが鸣って、皆それぞれ席
に着き始める。
ryou_0402 【谅】
「お。じゃあまた后でな」
yuta_1055 【裕太】
「うん! 谅~、ありがとな! マジ助かる!」