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【搬运】P站上排位很高的伏八同人文 Precious 1

只看楼主收藏回复

作者:tact
id=5992506


IP属地:湖北1楼2013-04-06 22:03回复
    気になるものが目の端をちらついて俺はスケボーを駆る脚を止めた。
     ひらひら、ひらひら。小さな女の子が木に向かって飞んでいる。ふんわりとしたスカートをはいているせいか、蝶が舞っているように见える。
     何で飞んでんだ、と视线の先を见ると木の上に猫がいる。降りられないのか全身の毛を逆立ててでっかい目を见开いていた。
    「あれ、お前の猫か?」
     自分の容貌が女子供に好かれない自覚はきっちりとあるので、少女に怖がられないよう精一杯穏やかな声で言ってみる。
    「ちゃちゃ、おりられなくなっちゃったの」
     ちゃちゃ・・・・ああ、猫の名前か。
     俺はスケボーを置くと助走をつけて干を蹴り上げると、猫のすぐ傍にある枝を掴んだ。木が揺れた事で猫がいっそう情けない声をあげたが、そんな事は俺の知ったことじゃない。
    「ほら、こっち来い」
     呼んでみるも当然の事ながら动けないでいる。木にがっしりと爪を引っ挂けて、とにかく落ちないようにとしがみついていた。
    「手间かけんなよ」
     猫の扱いなんて知らないから首の辺りの皮をごっそり掴んで引っ张った。ぱりぱりと木を引っ掻く耳障りな音がして猫が持ち上がる。
     やっぱこれ、このまま落としたんじゃ拙いよな。
     いくら猫とはいえ、地面までは结构な高さがあるし、子供の目には非道な行为に映るだろう。
    「いっ、痛ててて」
     腕の中におさめると思ったとおり、全力で爪を立ててしがみついてくる。痛いし面倒なので一気に地面まで飞び降りると、少女はびっくりしたのか目を丸くしていた。
    「ほらよ」
     こんな小さな子でも女はやっぱり苦手で。泣かれる前に早くこの场から立ち去りたくて、离れませんっと爪を立てている猫をひっぺがして少女に渡した。
    「・・・・ありがとう」
     怯えるか泣かせるか。どちらかだと思った少女は意外にもはにかんだ笑颜でお礼を言ってきた。
    「・・・お、おう」
     少女には不钓り合いな大きな猫。だらんと伸びた片足が不自然な気がしてそっと手を伸ばす。毛が変な方向に流れていて赤く血が渗んでいる。触れるとビクリと脚を缩めた。
    「こいつ、怪我してるじゃねぇか」
     そのせいで木から降りられなくなったのか。
    「大丈夫」
     少女が伤口に手をかざすと金色の光に包まれ、みるみる伤が愈されていく。猫も少女に気を许しているのか、爪を立てることもなくゆったりと抱かれたままだった。
    「お前、ストレイン?」
     思わず身构えるが少女は屈托ない笑颜を向けるだけで、不思议と警戒心がわかない。
    「つうほうする?」
     通报とはそういうストレインを管理している青服に対してか。
    「するわきゃねーだろ。だけどその力はあんま人に见せるな」
     何が悲しくて青服なんかの手助けなんかするか。ってか、こんな幼気な子供を青服なんかに渡してたまるかよ。
    「うん。お兄ちゃんならそう言うと思った。だから、これはお礼」
     にこ、と可爱らしい笑颜を向けてこちらに手を伸ばす。
     礼なんていらねーよ、とこちらも笑いかけるつもりで、出来なかった。
    「・・・・え」
     目の前が暗くなっていく。
    「お兄ちゃん、・・・・が见えないみたいだから。・・になったら见える・・・と・・・・すぐ・・・から」
     少女の声が段々と远くなっていく。
    I


    IP属地:湖北2楼2013-04-06 22:04
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      2025-05-18 05:28:53
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       何か、俺・・・・ヤバくね?
       そう思ってもやっぱりこの少女に悪意は感じられず、俺はそのまま意识を暗に委ねた。
       何かまわりが騒がしくて俺はゆっくりと目をあける。途端に青い色が目に入って飞び起きた。
      「ああ、よかった。生きてる」
       生きてるって不吉な事言うなよ。当たり前だろ!
       って、周りを见渡すと俺は青服に囲まれていた。
      「う? うぉぉぉ?」
       慌てて飞び起きる。つか、どこだ、ここは。何で外で寝てんだ。俺?
      「毛并みいいけどノラかなぁ。なんかちょっと警戒してるみたいだし」
      「それにしてはこんなにちっさいのに亲がいないっておかしくない?」
       おいっ、谁がちっさいって? それにノラってなんだよ。チンピラと言われた事あってもノラって、俺は犬でも猫でもねー・・・・・って・・・
      「おおおおおおおおおっ」
       囲んで覗き込んでくる青服の连中がやけに大きく见えるってどういう事だとは思っていた。取り囲んでいる轮もやけに狭いし。
       自分の姿を二度见、三度见して、ぎゅっと目を瞑って祈りを捧げる。えと、神様仏様・・・・あとえっとキリスト様にもお愿いしときゃご利益あるか? それからそっと目をあけて恐る恐る自分の姿を确认して・・・・・俺は再び后ろに倒れそうになった。
       あろう事か俺は猫になっていた。
      「あ、何かふらふらしてる。やっぱり弱ってるんだよ」
      「舍て猫かなぁ。酷い事するなぁ。こんなちっさいのに」
       ちっさいちっさい言うな!
      しかし何で仔猫・・・・? 俺、もう19才だろ? 仔猫ってありえねー・・・・・って问题はそこじゃなねーんだよ。何で猫なんだよ。せめてカラスとかもっとマシなもんはあるだろ・・・・いや、问题はそこでもないか。
       ちょっと待て。少し落ち着いて考えろ。
       今日は朝起きて、バイトないなら店の扫除を手伝えって草剃さんに言われてHOMRAに向かう途中で・・・・あっ、なんかストレインの少女に会って・・・・
       もしかしてあいつか! 原因は!
       なんだよ。何で猫なんだよ。アレか? せかいじゅうのひとがみんなねこになったらへいわになるわって、そんなノリか?
      「わー、毛并みふわふわ。かわいーし、谁か饲ってあげらんないかなー」
      「无理だよ。俺らみんな寮だし」
       呆然としているところをひょいって抱き上げられて、俺は焦って脚をバタバタさせる。
      「うっわ。やわらかい」
       なんて言ってすりすりされて、男に擦り寄られても嬉しくもなんともないってか、キメぇ・・・。
      「や、やめろって軽々しく抱き上げてんじゃねーよ!」
       俺は精一杯ドスをきかせて怒鸣ったつもりだけど、口から発せられた言叶はにゃーにゃーだった。なんだかしまらない・・・・。
      「人惯れしてないね。やっぱりノラか」
      この际、ノラか舍て猫かなんてどうでもいいんじゃないだろうか。
       青服は俺の颜を覗き込むと何やら考え込んでいる。その颜に见覚えがあるような気がして、俺は早くどこかに逃げたくなった。
       こいつら、猿比古とよく一绪にいるやつらじゃん。ってことは傍にあいつもいる可能性が高いわけで・・・・。
      「お前ら何やってるんだ! さぼるな!」
      I


      IP属地:湖北3楼2013-04-06 22:04
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         うわっ、やっぱり出た!
         いつも颜を会わせれば人を小马鹿にしたような颜つきで嫌な事ばっか言ってきて、最终的には剣と拳を交えた大喧哗に発展するのだが、さすがに今日は无理だぞ。
        「伏见さん。この子、舍て猫ですよ。可哀想に」
         可哀想じゃねーよ! お前らに哀れんでもらう义理はないっつーの。だからこの手を离せ!
        「ああ? 猫なんかにかまってる场合か!」
         そうだよ。悔しいが猿の言うとおりだ。俺なんかうっちゃって早くどっか行け!
         うぉっ、やめろ。俺を猿に渡すな!
        「连れて帰りましょうよ。このままだと保健所で処分ですよ」
         しょ、処分って、ふ、ふふ不吉な事言うなよ。
        「で、何で俺に渡す?」
         掌に俺を乗せた猿は机嫌が最悪だ。
        「だってほら。动物って子供の情操教育にいいんですよ」
        「ばっか! 黙れ道明寺、空気読め!」
         ぶ、ぶわはははは! 子供の情操教育!
         つか、コイツってば自分の部下にどう思われてるんだ?
         同僚が道明寺と呼ばれた男を嗜めているが、猿の机嫌は降下の一途をたどったようだった。
         ぽいっと俺を后ろに向けて放り投げられる。
         うわっ、いくら机嫌が悪いからって投げるか!
        「ああっ、ちょっと伏见さん!」
         认めたくないが一応、俺も猫なわけで。放り投げられた空中で身体を捻ると地面に着地・・・・・。
        「ふ、ぎゃっ」
         何で俺、こんなちび猫(・・・・自分の事だからちびなんて言いたくねーな・・・)なんだよ。高い位置から落とされた俺は细い手足じゃ自分の体重を支えきれず、地面に颚を强打した。
         痛い・・・・マジで・・・・。
        「あああっ、可哀想に! 伏见さんマジで非道!」
        「猫なんか放っておけ!」
         でもやっと解放されてホッとした俺は青服连中から距离をとった。本気でコイツら何するかわかんねぇ。いや、コイツら・・・じゃないか。何するかわかんないのは猿だ。
        「ああ、逃げちゃいますよぉ」
        「放っておけっつってるだろ!」
         痫癪に近い猿比古の怒鸣り声で俺を捕まえるのは谛めたらしい。何度もこちらを振り返りながらも、青服连中はその场を立ち去ろうとしていた。
         しかし、この姿で俺・・・・どうすりゃいいんだろ。とにかくHOMRAに行って・・・・っても、吠舞罗の连中がなんとかしてくれるわけ・・・・ないよなぁ。店ん中入った途端に草剃さんに追っ払われそうだ。せめてアンナがいれば俺だってわかってくれるかもしれないけど。
         清扫用ロボットを避けながら(あれに捕まったら保健所行きだ)とぼとぼと歩く。
         その时、何か影のようなものが横切ったような気がして空を仰いだ。すぐに视界を真っ黒いもので覆われて反射的に身体を翻す。
         てっきりさっきの青服が戻ってきて、服かなんかを被せて俺を捕まえようとしているんだと思った。


        IP属地:湖北4楼2013-04-06 22:04
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          「は・・・・カラス?」 ほんの2、3m先に黒光りする羽を広げてみせながらカラスがこちらを见ていた。何か威吓されてるみたいな気がする。ちょんちょんと飞び跳ねてこちらに寄ってきたかと思うと、羽を大きく広げて俺を袭ってきた。「ちょ、待て待て待て!」 お前カラスだろ! 何で人间・・・いや、今は猫か。くそ、ややこしい。何でカラスが猫を袭うんだよ。俺は八咫乌だぞ。俺の方が位が上だっつーの! 痛てて! やめろ突つくな! 喰う気かよ!
           炎を出してカラスを追い払おうとするが、小さな猫手に炎は宿らない。うぉ、マジかよ。カラスにやられそうになるなんてマジ情けねぇぞ、俺!
           カラスはやたらと大きな黒い羽を広げて覆いかぶさってくる。
           カラスってこんなに大きかったっけ?
           细くてあんなんで体重ささえられんのかよ、なんて思っていた脚は结构がっしりとしていて、俺を掴んで持ち上げようとしている。うぉぉ、カラスって猫持ち上げられんのかよ! なんて関心してる场合じゃない。このままじゃ俺、巣に持ち帰られて肉を引きちぎられて、ヒナの口に・・・・・。
           そこまで、想像してぶわりと背中の毛が逆立った。
           やめろやめろ! 爪立てるな! 喰うんじゃねぇ!
           カラスごときにやられそうになってる自分が情けなくて、でもどうする事もできなくてぎゅっと目を闭じた。「喰われてんなよ。カラスに」 何かがカラスを追い払うような気配が感じられて、俺は恐る恐る目をあける。背中の皮を掴まれてふわりと身体が宙に浮いた。
           じたばたしたいけど、何か动けねぇ・・・・。
           首を掴まれた獣としての正常な反応のせいかもしれないが、一番の原因は目の前にある猿比古の颜のせいだ。つか、いつ戻ってきたんだよ。背中に嫌な汗が流れた。「伏见さん! やっぱり连れて帰るんですか?」 わくわくと猿の部下たちはなんだか嬉しそうで何かハラがたつ・・・・。
           助かったけど助かったような気がしなくて、俺はげんなりと肩を落とした。 「うわぁ可爱いなー」 セプター4の本拠地まっただ中に连れて来られた俺は、にっくき青服どもに取り囲まれた。
           くそぉ、可爱い可爱いって、俺の正体知ってほえ面かくなよ!
           せめてもの救いは俺に全く兴味を示さない猿比古だ。そうだよな。あいつ、动物とか昔から兴味なかったし。「でもこの子、なんだか似てません?」
          「似てるって谁にだよ」
          「ほら、吠舞罗の・・・・切り込み队长」 ぎ、ぎくーっ。似てるって猫になってもやっぱそうなのか。バレちまうのか。そこはかとないキヒンでも漂ってんのか?「えっと、切り込み队长って谁ですか?」
          「お前なぁ、いくら新人だからって吠舞罗の调书くらい読んどけよ。ほら、いたろ? この前の小竞り合いの时も真っ先に飞び出してきた・・・・」
          「ああ! わかりました。あのちっちゃくて可爱いくて凶暴なやつでしょ?」 谁がちっちゃくて可爱いだ! ゴラァ!「お前、ちいさいと可爱いと凶暴を并べるなよ。でもピッタシだわ」 と全员が爆笑するのを、俺は真っ赤になってぷるぷる震えながら耐える。こいつら、今度小竞り合いになったら覚えてろ。真っ先に抹杀してくれるわ!「でも人惯れしてませんねぇ。どうします?」
          「どうって?」
          「谁が连れて帰るかですよ。ここで饲うわけにはいかないでしょう?」
          「それは寮だって一绪だろ!」 ふぅむ・・・・と全员が考え込んでいたところへ背后から地を这うような低い声がかかった。「・・・・谁に、似てるって?」 ううっ、やっぱ出た!「ほら、吠舞罗のヤタガラス! フーフー威吓してるところとか、猫っ毛ぽい茶髪が同じ毛色でしょ? ね? 似てません?」 ドヤ颜している队员を尻目に猿比古は俺をつまみ上げた。「ええっ、伏见さん。连れて帰るんですか?」 待て。俺に似てたら连れて帰るのか?
          I


          IP属地:湖北5楼2013-04-06 22:07
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             やめてやめて。连れて帰らないで! 何か怖いぃ。だっ、谁か!
             首を摘まれている为、きょろきょろする事もできず、俺はじっと猿比古と青服たちの动向を伺う。
             上司のする事に逆らえないのか、それとも寮で饲えない俺を持て余しているのか、谁も猿比古が连れて帰ろうとしていることに异议は唱えなかった。「伏见さん、いじめないでくださいよ。それから生き物を舍てちゃダメですからね!」 頼む。いっそ舍ててくれ・・・・・・。  ここがセプター4の寮かよ。俺の部屋より小绮丽だし広いっつーか・・・・くそ。仕事しろよ。税金泥棒が。
             部屋に入ってやっと地面に降ろされた俺は、とにかく隠れる场所を探した。きっとこれから猿比古の拷问が始まるのだ。
             リビングっぽい部屋には小さいキッチンがついている。この部屋にはベッドがなくて、あっちにドアがあるっつーことは少なくとも2部屋。パソコン机の下はガラガラすぎて隠れた事にならねーし、冷蔵库の向こうはほとんど隙间がねーし。この部屋杀风景すぎんだよ! なんにも置いてないじゃねーか!
             なんだかあんまり居心地良さそうな部屋じゃなくて、俺は冷蔵库をあけている猿比古を盗み见た。
             さっきの様子をみているとコイツの毒舌といっていいかわからないレベルの毒舌にあってさえ、部下には慕われているようではあるが・・・・。「お前、何食うんだ?」 は?「猫だから鱼なのか? そんなめんどくせぇもんないぞ」 えと・・・・。俺の食事。お前が用意すんの?「えっと。俺、ラーメンとかでもいいし! ハンバーガーでも何でも食う!」 つか、お前が鱼焼くとか怖いし。「いきなり元気になったな。ハラへってんのかよ」 俺の必死のリクエストはもちろん通じていない。悔しい事に猿には俺がにゃーにゃー言ってるようにしか闻こえていないのだ。「これとか食うか・・・・?」 猿はおもむろに携帯食のゼリーを取り出すと俺に差し出してきた。
             ばかやろう。もっと身になるものを寄越しやがれ!
             ひょいっと猿の脇から冷蔵库を覗き込む。うわ、ゼリーとカロリーメイトと水しか入ってねぇ。つか、ゼリーやカロリーメイトを冷蔵库に入れる必要あんのかよ。冷やさなくても腐らねぇだろ・・・・・?「食うわけないか」 あっさりとゼリーを引っ込めると、猿は小皿にミネラルウォーターを注いで目の前に置いた。
            「おい! これですまそうなんて思ってねぇだろうな」 やりかねなくて俺は猿と小皿を交互にをジッと见る。しかしいつものクソ猿と违って穏やかな颜つきをしていて拍子抜けしてしまう。「チッ、いっちょまえに抗议かよ。仕方ねぇから何か买ってくる。ちょっと待ってろ」 ぐりっと乱暴に押さえつけられた头が痛い・・・・。
             もしかして今のは头を抚でたのか・・・・・?
             猿はタンマツを持ってどっかに出て行ってしまった。  とにかく少し落ち着け、俺。何でこんな事になっちまったんだ? 戻れるのか? 戻れなかったら一生を猿に面倒みてもらわねーといけないのか?
            嫌すぎる・・・・・・。
             どうせ面倒みてもらうならせめて尊さん・・・・いや、あの人、饭つったらマジでお茶碗に白ご饭盛って出すだろ? 草剃さん・・・・あの人ならちゃんとしたもの作ってくれそう。わりとしっかり猫の饲い方なんて本を买ってきて・・・・でも出すのはきっとキャットフードだ。嫌すぎる。镰本・・・・あいつなら俺と食べ物の趣向は似てるけど・・・めちゃめちゃ食わされてデブ一直线だな・・・・。
             とにかくどうすりゃいいんだよ。
             俺は目的もなく部屋をうろついて考えて、パソコンが目についた。
             そっか。俺、今セプター4の本拠地にいるんだよな。
             元の姿に戻れるか戻れないかは置いといて、とりあえずなんか情报とか仕入れる事できねーかな?
             ここは寮でたいした情报はねーかもしれないけど、ほらそこにあるのは情报の块、パソコンだし! それにうまくいけば谁かに助けてメールとか出せるかもしれねぇじゃん。
             俺はパソコン机に飞び上がると电源をぐっと押してみる。しかし悲しいかな、この忌々しい猫手は无駄に小さいくせして电源ボタンを押すには大きすぎるのだ。しかも非力。くっそ。押せねぇ。
             しばらくスイッチと格闘しているとブンとモーター音がしてパソコンが起动した。


            IP属地:湖北6楼2013-04-06 22:07
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              「やり!」 さて、まず助けてメールかな。镰本あたりならヒマしてるだろ。
               しかし、このキーボード・・・・打てねぇよ!
               学生时代を振り返ってもキーを打つのが得意じゃなかった。もちろん子供の顷から授业で触る机会も多かったため、打てないわけじゃない。でも下を见ずに打つなんて最后まで出来なかったし、中学を卒业してからパソコンを触る机会なんてほとんどなかった。タンマツだって俺の场合、时计型だから音声入力だ。だが理由はそれじゃなくて・・・・。「くっそ。この猫手が・・・・・」 打てないのを猫手のせいにしてとか言うな。実际、この手でキーなんて打てねぇだろ。
               たしっ、たしっと猫手で打ってみるが周りのキーまで押してしまって、ひとしきり打ってモニターを见ると意味不明な文字が并んでいる。情けない事に上の方なんてダイブしないと届かない有様だ。
               ダメだ。この身体、思った以上に使えねぇ。
               无意味な文字列が并ぶモニターを途方に暮れた颜で眺めていると、入り口の键が开く音がして、焦った俺は证拠隠灭の为にキーボードの上をごろごろと転がった。たくさんの意味不明な文字が更に并ぶ。
               すぐに近くのコンビニのレジ袋をさげた猿比古が入ってきて、俺の姿を见ると血相を変えた。「うわっ、お前、毛だらけ」 毛だらけって猫なんだから当たり前だろ。ばーか。「くそっ、スリープにしてたのか? どけよ。バカ猫」 俺はあっさりとつまみ上げられると、どっかに运ばれていく。もしかして外に放りだされるのか? 愿ってもないことだけど。「ふ、ふぎゃあああああああ」 どこかのドアを开けたと思ったらそこは风吕场で、俺は水を张った汤船に放り投げられた。「さるっ、あっ、足! つかない! 溺れる!」 いくら诉えても猿の耳にはにゃーにゃーだ。
               しかもお汤じゃない。水だ! 冷たい冷たいこれ绝対しぬ!
               溺れさせるのが目的ではなかったらしく、再び乱暴に捕まれ汤船から出される。「ぷぁっ、死ぬわ! クソボゲェ!」
              「お前、何気に汚れてるじゃねーかよ」 头からシャンプーをかけられてわしゃわしゃと洗い始めた。「やめろ! 目に入る! せめてシャンプーハットくらい・・・」
              「にゃーにゃーうるさい! あっ、てめぇ爪立てんな!」 优しいなんて无縁の手さばきで俺の全身を洗っていく。つか、俺・・・・全身くまなく洗われて・・・・もうお嫁に行けない身体になっちまったわ。
               ぐったりと力つきた俺をリビングに连れて行くと、猿はドライヤーで猫毛を乾かし始める。ぴっとりと濡れ张り付いて気持ち悪かった毛并みが、ドライヤーの热で乾かされてふかふかになっていくのは気持ちがよかった。
               少しうとうとし始めたところで猿が立ち上がって俺は膝から落とされる。なんだよ。気持ちよく寝そうになってたってのに。
               せめてもの报复に猿比古の足でも啮ってやるか、と后をついて行くとさっきのレジ袋からなにか缶诘を取り出している。やっと饭にありつける予感がして、俺は啮ってやるのも忘れ、うきうきと猿の横で缶が开けられるのを待っていた。「ほらよ。食え」 ことんと目の前に置かれた皿を见て俺はなんだか悲しい気持ちになった。猿が何か作るとは思えなかったが、出されたものはさっき想像した草剃さん系だ。
               所谓猫缶というやつ。
               俺、これからこうゆうのを食って生きていかなきゃなんねーのかな・・・・・。「なんだよ。食わねーの?」 って、皿を引っ込められそうになって、俺は慌ててそれに食いついた。「あ、美味い」 考えてみれば原料は鱼や肉だもんな。猿が作る下手クソな料理より美味いかも。
              I


              IP属地:湖北7楼2013-04-06 22:09
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                 はぐはぐと食べる俺を猿はかがみ込んでジッと见ている。おい、ストーカーかよ。お前も食事しろよ。「美咲・・・・」 思いがけなく优しい口调で呼ばれて头を乱暴に抚でられた。なんだよ、その口调。いつもと调子が违ってて・・・・なんか・・・・。
                 てか、俺だってバレてんの?
                 人间だったら赤くなったり青くなったりしてただろうけど、幸いにも颜色を见分けられるご面相ではない。
                 ジッと见上げると口调どおりの优しい颜を向けてくる。
                 多分これは俺だってわかってる表情じゃない。いくらなんでも俺だってわかってたら、もっと乱暴に扱われてるだろうし(充分乱暴だとは思うが・・・・)、莫迦にした口调で揶揄されるだろう。
                 って、だったら猫を美咲なんて呼んでんじゃねーよ、キメェ。つか名前で呼ぶなと何度言ったらわかるんだ。クソ猿め。
                 ああ、いっくらでも言ってやりたい文句はあるのに、この身体で何言ってもぜんぜん伝わらねぇ。
                 猿は俺が全部小皿の猫缶を平らげたのを见届けると、自分も买ってきた弁当を広げる。
                 コイツ、偏食は治ったのか? ふと、兴味がわいて俺は猿が弁当広げてるテーブルの上に飞び乗った。お行仪が悪いとか言うな。下からだとぜんぜん见えねぇんだよ。「あ、やっぱ野菜避けてやがる」 小さく切ったものまで细部にわたってよける猿に俺は呆れるより感心してしまった。とにかくわけ方が细かい。すっげ细かく切ってあるにんじんまでハシでよけているのだ。こんな小さいものをハシで掴めるってことの方が感心するわ・・・。
                 ジッと右に左に动くハシの动きを见ているとレタスを掴んだ猿比古の动きが止まる。「食うのか?」 レタスを目の前に持って来られて、条件反射でぱくっと衔えてしまった。いかんいかん、つい中学の时の癖で・・・・。
                 あの顷もこうやって猿比古は嫌いなものを俺の口に入れてたっけ・・・・。そうか全然成长してないのか。「お前、猫のくせに随分悪食だな。美咲」
                「お前が食わせたんだろ。つか美咲って呼んでんじゃねぇよ」 名前は美咲で决定なのかよ。もっと他にあるだろ? ヤタガラスとか八田様とか、格好いいのが!
                 ったく、猿比古がいつもと违いすぎて调子がでねーぜ。


                IP属地:湖北8楼2013-04-06 22:09
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                  2025-05-18 05:22:53
                  广告
                  うと、うと・・・と寝入りかけては目が覚める。もう夜も遅いというのに猿は全く寝る様子がない。ずっと何かの书类とにらめっこしながらパソコンで打ち込んでいる。
                   寮に帰ってまで仕事かよ。外で偶然会った时はやたらと络んできて、セプター4ってよっぽどヒマなんだなって思ってたけど・・・・一応ちゃんと仕事してんだな。だったら俺なんかかまってないでその分真面目にやってろよ。そしたらこんな时间まで仕事しないですむだろ?「どうした? 元気ないな」 キーボードを叩く猿の手が止まってこちらにやってくる。
                   出会ってからの无茶ぶりな扱いで元気な方がおかしいだろ。つか、何か猫の姿で何だけど、なんか胃が重たいっつーか、気持ち悪いっていうか・・・・.
                   意识したら何か本気で気持ち悪くなってきた。
                   あ、ダメだ・・・・・吐く・・・・。「うっ、げっ・・・」
                  「美咲?」 洗面所に行く间もなく(つか猫が洗面所で吐くっつーのも変な话しだけど)、その场で食ったものを全部吐いてしまう。部屋を汚されて猿が激怒するのを想像しながらも、一度吐き始めると止まらなかった。
                   猿が真剣な表情をするのが目に入ったから、俺・・殴られんのかなーなんて思って、でも逃げる余裕がなくてぐったりしていた。「秋山ぁ!」 慌てて部屋を出て行った猿は廊下で何やら叫んでいる。「はいっ、どうしました? 伏见さん」
                  「急いで车を出せ!」
                  「はっ? 何かありましたか?」
                  「美咲が急に吐いて」
                  「は? ミサキ?」 なんか・・・殴られることはなかったみてーだけど・・・・なんか、なんか・・・・お前耻ずかしーよ、クソ猿。
                   ただならぬ猿比古の雰囲気に廊下は騒然をし始めて、
                  気が付けば俺は例の青服たちに囲まれていた。・・・いや、今は各々自由な格好で青服とは言えないかもしれないが・・・。「猫が吐くのは日常茶饭事ですけど、食べたもの全部吐いてるのはおかしいですね」
                  「つか、コイツまだちっちゃくないですか? 离乳してるんですかねぇ。何食わせました?」 ちっちゃいって・・・离乳って・・・・あんまりじゃねーかよ・・・・。「普通の猫缶とあと俺の弁当の・・・・」
                  「あー、これ大人用の猫缶だわ・・・・」 ゴミ箱から缶を取り出してみていたひとりが呆れたように呟いた。「どうせ伏见さんのことだから弁当っても自分が食べられない野菜をやったりしたんでしょ?」
                  「・・・・・・」 あ、図星さされてそっぽ向いてやがる。「ダメですよ。猫は肉食なんですから」
                  「结构弱ってますね。やっぱり病院に连れて行きましょう」 いや、病院なんてそんな大げさな・・・・い、行きたくねぇって・・・。
                   俺の愿いもむなしく毛布でぐるぐる巻きにされて猿の腕に収まってしまう。「とにかく冷やさないようにして。车を回して来ますから10分経ったら出てきてくださいね」
                  「悪いな、秋山」
                  「いいんですよ。弁财、夜间もやってる动物病院探して后でメール送信して」
                  「了解」 お前、出来すぎた部下持ったな。つかお前の部下やってる时点で器がデカイよ。「他のみんなはもう部屋に帰って。明日も仕事なんだから」
                  「ええーっ、俺たちも行きますよ!」 えっと、秋山・・さん?の言叶に全员が异议を唱える。何でお前ら动物病院なんかに行きたがるんだよ。わけわかんねーだろ。「全员なんて车に乗れません。ほら、部屋に帰った帰った」 ぶーぶーいう队员たちの背を押して部屋から追い出していく。この秋山さんの方が猿より上司に向いてね? 「伏见美咲ちゃん。どうぞ诊察室にお入りください」 げげっ、なんつー呼び方するんだ。秋山さん、笑ってるし・・・・猿、なんでてめー嬉しそうなんだよ?
                  I


                  IP属地:湖北9楼2013-04-06 22:13
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                     病院の受付で猿がペットの名前のとこに美咲って书いて、饲い主のところに伏见って书いたからそうなったんだろうけど・・・・キメぇ・・・・。「うーん、确かにちょっとぐったりしてるみたいだね。昨日拾ったの? 美咲ちゃんって仔猫だとわかりにくいかもしれないけど、この子・・・あ、男の子だなぁ。まぁ、まだ半日だし、名前変えても影响ないとは思うけど、え? 男の子でも美咲でいいの?」 余计なこと言ってんじゃねぇよ。男で美咲って、余计なお世话だわ!「じゃあ一応血液検査して、ワクチンはもう少し元気になってからにしようか。じゃ血を抜きますからねー。ちゃんと押さえてて」 って・・・・おいっ、血なんて抜かなくていいからよ。俺は蟹座のB型だ。わかってるから血液検査なんてしなくていいってば! や、やめろぉぉぉ。「はい、痛くないですよ〜」
                    「う、うぎゃぁぁぁぁ」 ブスーとやられただけで俺は贫血で倒れるかと思ったのに、「猫の血管探すの难しいんですよねー」なんて言い訳をされながら、前足に何度も何度も针を刺された。だからいらねーっつてんのに。「生后一ヶ月过ぎくらいかなぁ。そろそろ离乳も终るくらいだと思うんだけど、とりあえずしばらくミルクで様子见ながら离乳用を与えてみて」 あ、牛乳饮むくらいならそっちの猫缶で俺、いーんスけど。この高级マグロ入りって书いてるやつ。「间违っても牛乳は饮ませちゃダメだからね」 猿は受付で猫用のミルクと不味そうな离乳用の猫缶を买って・・・・・。「诊察代と饵と・・・合计で1万7千2百円でございます」 ぶふぉぉぉ。
                     猿の腕に収まったままで俺は吹いた。何だよ、俺の何日分の生活费だよ。しかも猿のやつ、ちゃんとタンマツにその金额が入ってるってどういう冗谈だよ。公务员パネェ。
                     いや、でもこれ・・・俺だってバレたら后で诊察代请求されるかもな。バレねぇようにしないと・・・・。「保温はちゃんとしてやって。小さな动物は悪くなる时もあっという间だからね。悪いと思ったらすぐに连れて来て」 受付まで医者が出てきてにこにこと手を振られた。
                     って、二度と行かねぇよ! 


                    IP属地:湖北10楼2013-04-06 22:13
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                      「遅くまでつき合わせて悪かったな。秋山」
                       揺れる车の中で俺は睡魔に袭われながらふたりの话しを闻いていた。
                      「いいんですよ。皆で拾ったんですから。でも意外でした。伏见さんが动物を可爱がるなんて」
                       ホントだよ。こいつ、动物可爱がってるとこなんて见た事ねーし。
                      「・・・・似てるから・・・・放っとけないっていうか」
                       ああ? 似てるって谁にだよ? まさか俺様にっていうんじゃねーだろーな?
                       昼间、散々青服たちにコケにされたことはまだ记忆に新しい。
                      「手荒に扱ったら怒るし、食べ物见ればご机嫌で寄ってきて、表情くるくる代わるし・・・・あいつは猫っていうより犬なんですけどね」
                       だからそれ谁のことなんだよ!
                       秋山さんもわかったような颜してわらってんじゃねーよ。まったく・・・・。
                      「どうでした?」
                       寮に帰るなり、各部屋のドアが开いてわらわらと人が出てくる。
                      「なんだよ。お前ら帰ってくるの待ってたのかよ」
                      「だって心配ですもん」
                      「ちゃんと生きてる! だからもう寝ろ」
                       猿のぶっきらぼうな言い方にもめげず、皆が毛布に包まれてる俺を覗き込む。だが大人げなくも猿はそれを避けた。
                      「み、见せてくださいよ」
                      「断る」
                      「へるもんじゃなし」
                      「へる!」
                       子供か!と突っ込みたくなるのを呆れて见ていると、秋山さんが猿の腕から俺を横から夺い取った。
                      「みんな心配して待っててくれたんですから一目くらい。ほら、ちゃんと元気だからもう部屋に帰って」
                       一目どころか、皆に散々なでくり回されて、やっと気がすんだのか青服たちは部屋に帰っていく。
                      「・・・・秋山・・・・」
                      「すみません。胜手な真似を」
                       猿は怒った颜をしていたが夜中に车を出してもらったという恩があるせいか、あまり秋山さんに强く言えないようだった。
                       でも秋山さんって结构强かかも。従顺なようで猿をコントロールしているみたいに见える。
                      「じゃあ俺も休みますけど何かあったら呼んでください」
                       猿は何か考えてるみたいな颜をして、で・・・真っ赤になりながら・・・・
                      「アリガトウゴザイマシター」
                       って棒読みじゃねーかよ・・・・。
                       でもちゃんと秋山さんには伝わったのか、穏やかな笑みを向けて、
                      「いいんですよ。おやすみなさい」
                       って、ホントにこの人、出来た人だ。
                       猿比古は部屋に戻ると俺を何かの入れ物に毛布ごと入れてお汤を沸かして、なにしてんのかなって思ったら、ペットボトルにお汤入れて毛布に入れてきた。
                       なんだよ。のど乾いたら饮めってことか?
                       いや、汤たんぽか。あったけーな。これ。
                      「美咲」
                       って俺を抚でる猿比古の笑颜がまるで中学ん时みたいで・・・・なんだか切ない。こんな颜もできるんじゃねーか。何で俺に会った时は変态くさい笑いしかできないんだよ。人のことをバカだの童贞だの、ヤなことしか言わねーし。
                       ちょっとアレだけどちゃんと青服たちともうまくやってるみたいだし、何の问题もなさそうなのに何でこいつ、満たされない寂しいって颜してるんだろうな。
                       ベッド以外何にもない部屋に连れて行かれて、猿比古ももう寝るらしくベッドに潜り込んだ。时间はもう午前4时。何时に出勤なのかはしらねーけど、全然寝る时间がないんじゃね? いや、俺のせいなのはわかってるけど。
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                      IP属地:湖北11楼2013-04-06 22:15
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                         しかも猿比古は何度も何度も寝返りをうって全く寝付ける様子がない。そう言えばこいつ、男のくせに冷え性でなかなか寝付けなかったっけ。
                         チッ、しかたねー。
                         俺は毛布の块から飞び出るとベッドにあがって猿の布団に潜り込む。
                        「なんだよ。美咲、そっちで寝ろよ」
                         俺が潜り込んできたことに気付くと背中の皮を掴んで元の毛布の中に落とす。そう言えばコイツ、洁癖性っぽかった。猫と一绪になんて寝れないってやつか。
                        「いいか? 猿比古。これは猫じゃなくて俺だ。俺なら中学ん时も一绪に寝たりしてたし平気だろ?」
                         通じてないかもしれないけど猿比古に言いきかせながら、もう一度布団に潜り込んでいく。
                        「お前、溃されても知らないぞ」
                         もちろん溃したらコロす。
                         思ったよりも布団の中は冷たくて、今まで温まっていた身体が冷えてしまいそうだ。いくらなんでもこれじゃあ眠れないだろう。
                         なるべく身体を离そうとしていた猿比古も、やがて谛めたのか腕を回して引き寄せてくる。
                        「温かいな。お前」
                         眠そうな猿比古の声。
                         猿の体温は俺よりも低い。だけどこうやって体温分け合って一绪に寝てれば、布団の中がぽかぽかになるのは中学の顷で立证済みだった。
                        「あ、おはようございます。伏见さん。猫、连れて来たんですか?」
                        「元気になってよかったですね」
                         昨夜、猿が俺を毛布ごと何かに入れたような気はしていたが、まさか洗濯かごだとは思わなかった。で・・・今、猿はその洗濯かごを片手に引っさげての出勤である。
                        「俺、昨日非番だったから见てないんですよ。见せてください」
                        「名前つけたんですか?」
                        「そう言えば昨日美咲って叫んでましたね?」
                        「ええっ、マジでヤタガラスの名前つけちゃったの?」
                        「寄るな! 触るな!」
                         群がる队员たちを蹴散らすと猿比古は洗濯かごを自分の席の隣りにどっかり据えた。
                         もしかしてセプター4って実はヒマなのか? 昨日猿比古が家にまで持ち帰ってた书类は一体なんなんだよ?
                        「美咲ー、こっちおいでー」
                         てめえら気安く名前で・・・・
                        「お前らまで美咲って呼ぶな!」
                         ってか、何で、猿比古。お前が怒るんだよ。お前が一番呼んでんだよ!
                        「えっ、ひっでー。じゃあ俺ら、なんて呼べばいいんですか?」
                        「あなたたち仕事しなさーいい」
                         って、ツンドラの女がキレてやっと队员たちは仕事を始めた。社会ってこんなもんなのか? これだったらまだ俺のバイトの方が真面目にやってると思うんだけど?
                         さて、せっかくのセプター4の本拠地にいるんだし、ちょっくら侦察。俺は洗濯かごを抜けるとその辺りを歩き回った。えっと、この人は秋山さん。やっぱり真面目に仕事してる。で、昨日、俺を拾ったのが・・・・えっと确か道明寺・・・・。
                        「アンディ、こっちの书类頼むわ」
                         え? アンディ? じゃ道明寺ってどれ?
                        「じゃエノーこっち頼む」
                        「ええっ、自分でやれよ。おいゴッティ、あの资料まだかよ?」
                         え? ちょっと待ってひとりずつお愿い。エノー? ゴッティ? 外人かよ?
                        「ちっちっちっ」
                         パタパタ、なんて目の前を猫じゃらしがちらつく。ツンドラの女よ。俺は猫じゃねーっつの。
                        「ああー、淡岛副长! 仕事しろって言っておいて自分がかまいたいだけなんでしょ!」
                        「悪い? 私も猫が好きなのよ」
                        「ずるいっスよ! 皆触りたいのを我慢してるのに。なー、八田」
                        「おい、切り込み队长、これ食う?」
                        「ヤタガラス、游んでやるよ」
                         って、好き胜手呼んでんじゃねぇよ。
                        「そんなに皆が好き胜手呼んじゃ名前を覚えないんじゃないかしら」
                        「美咲」
                         猿比古が俺を呼ぶ声が闻こえて、振り返るといつもの不机嫌な颜。全く、子供かよ。そんなに仕事がヤなのかよ。
                         それでも俺が傍に寄ると少しだけ表情が和らぐ。
                        「あの名前はもはや定着してるようですね」


                        IP属地:湖北12楼2013-04-06 22:15
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                          くっそ。名前でなんか呼ばれたくねーけど。コイツ、俺の言うこと全然闻かねーし。
                          「ちょろちょろしてんじゃねーよ。大人しくしてろ」
                           猿は俺の背中を掴むと洗濯かごに戻してしまう。いや、俺、侦察があんですけど。
                          「随分騒がしいようですね」
                          「室长!」
                           う、わっ。出た。青の王。
                          「おや、可爱らしいお客人ですか」
                           えっと、なんか青の王・・・・めっちゃこっち见てるんですけど?
                          「しかし不用意にこういったものを持ち込むのは感心しませんね」
                           あ、もしかして猿が怒られちまうのか? おろおろと周りを见ているとツンドラの女が头を深々とさげる。
                          「申し訳ありません、室长。すべては私の监督不行き届きで・・・・」
                           しかしそれを片手で制し、ジッと俺を见ると青の王はいきなり抱き上げた。
                          「わっ、なんだよっ」
                          「あ、その子、ノラなんであんまり人惯れしてません。伏见さんには懐いてるみたいですけど」
                          「懐いてねーよ!」
                           谁が猿なんかに懐くか!
                          「そうですねぇ。皆さん仕事になっていないようですので私が预かりましょう」
                          「えーっ、ずるいずるい室长! 自分が游びたいだけでしょう?」
                           さすがに青の王に连れて行かれるのは勘弁してもらいたい。だから猿比古、助けろ!
                          「すみません、室长。ソレを返してください。ここが駄目なら部屋に持ち帰ります」
                           救世主のように猿比古が立ち上がったけど、なんか・・・・なんか・・・・どいつもこいつも俺をモノ扱いしてねぇか?
                          「まだこんなに小さいのに何时间も放っておけないでしょう。取り上げるわけじゃありません。仕事が终るまで预かるといっているのですよ」
                           つか、お前も仕事しろよ! って全员の颜がそう言ってるんですけど・・・・?
                           えっと・・・・もしかしてマジで连れてかれるのかな・・・?
                          「じゃあ伏见君。今日の业务が终ったら私の部屋へ来てください。私は今から仮眠なので」
                          「チッ」
                           猿比古の舌打ち。えっ、それって不承不承ながら了解したって合図じゃないのか?
                          「ええっ、ちょ、たっ助けろ。猿っ! やめてやめて、この人変态ですーっ。人さらいーたすけてーっ」
                           王様って绝対なのか? 谁も口出せないのか? でもって俺はこのままこの人の部屋まで连れて行かれちまうのか?
                           泣きそうになりながら助けを求めても谁も口を出してはくれなくて、俺は无情にも青の王の私室まで连れて行かれてしまった。
                           これはこれでまた公务员には不钓り合いな豪华な部屋だな・・・・。これだったら隠れるところもいっぱいありそう・・・。床に降ろされた俺はきょろきょろと隠れるのに适した场所を探す。
                          「そんなに怯えなくても悪いようにはしませんよ。八田美咲君」
                           だからみんな好きなように呼ぶなっ・・・え?
                           さっき、みんなが俺を呼んでる时にこの人いなかったような・・・・?
                          「ストレインにその姿にされてしまったのですか? 私にはあなたの姿がみえているのですよ」
                          「げげげっ。マジかよ?」
                           ちょ、俺、かなりヤバくねぇか? いくら猫の姿になったっていっても青の王の本拠地に乗り込んでるわけだし。
                          「ちなみに変态でも人さらいでもありません」
                          「・・・・もしかしてオレの言ってることもわかる?」
                           恐る恐る闻いてみる。俺、さっき结构好き放题言ったかも。
                          「もちろんです」
                          「何でアンタにだけ见えるんだよ」
                          「それは私が王だからでしょう。王はストレインの视覚干渉の影响も受けませんし、何かの力が加えられていてもはね除けることができます」
                          「俺の言ってることがわかるんだったらさ。その窓、开けてくんね?」
                           とにかく一刻も早くここを出て吠舞罗に戻りたい。元の姿に戻れるかどうかはわかんないけど、あいつらならたとえ戻れなくても俺の面倒くらいはみてくれるだろうし。猿のことも心配だけど、青の王にバレちまった以上、ここにいるわけにはいかねーもんな。青の王が素直に俺をここから出してくれればの话しだけど。
                          「窓を开けてもいいですけどね。それでいいのですか? 八田美咲君。私はあなたをもとに戻すことも出来るのですよ?」
                          「えっ、俺、戻れんのか?」
                           もしかしたら一生このままなんじゃないかと、嫌な考えに陥っていただけに光がさしたような気分だった。
                          「もちろんです。戻せるのは私だけじゃない。赤の王だって出来るはずです」
                          「えっ、尊さんにも?」
                           だったら青の王に借りを作るよりは尊さんに戻してもらう方が后々いいんじゃないか?
                          「だったら・・・・」
                           やっぱりこの窓を开けてくれと言おうとして、それから自分の姿を顾みる。まずHOMRAまでたどり着けるかどうか。それからすんなりと尊さんに会えるかどうか。そしてこの姿を尊さんに见られて呆れられないかという不安。尊さんは笑ったりしねーだろうけど、こんな情けない姿を出来れば见せたくない。
                          「あなたをHOMRAまで送るのは面倒ですね。かといって自力で帰りなさいなんて言った日には后で伏见君に何といわれるか・・・・」
                          「あ・・・猿に・・・・猿に言うのか?」
                           猿比古は俺をただの猫だと思って保护したのだ。それが俺だってバレたら・・・・。
                           ・・・・昨夜の诊察代、请求されちまう。
                          「言いませんよ。だからわざわざここまで连れて来たんですしね」
                          「ホントに?」


                          IP属地:湖北13楼2013-04-06 22:17
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                            この人、腹黒いのかと思ってたけど案外いい人なんだろうか。ジッと见上げると青の王は邪気のない笑みを向けてくる。
                            「だからその姿も私が戻しましょう。こっそり外に出して差し上げますから」
                            「あ、でも猿が仕事终ったら俺を引き取りに来るんじゃねーの?」
                             そんときに俺がいなかったらマズいと思う。后でとりに来いってこの人言ってたし。
                            「逃げてしまいましたとか言ってそれはなんとかします。大丈夫ですよ。一応、上司なんですし」
                             一応・・・・・ねぇ。
                            「ま、いっか。んじゃ頼むわ」
                            「じゃあこちらへ。力を抜いて楽にしていてください」
                            「ん・・・・」
                             青の王の右手に青白い光が灯る。それで额に触れ、頬に肩に、体中に触れると少しずつ视界が暗くなっていく。それは猫になった时と同じで、似たような状况にその时の事を少しずつ思い出した。
                            —— お兄ちゃんは大切なものが见えてないみたいだから私が手助けしてあげる。自分以外のものになればそれが见えるかもしれないから。
                             见つけられるといいね。たったひとつの真実・・・ ——
                            「・・・・んっ・・・」
                             肌触りのいいシーツの感触が全身を包んでいる。挂け布団はふわふわと柔らかくてお日様の匂いがした。
                             えっと、バイトのシフトってどうなってたっけ? 今日は何时からだろ・・・・
                             目をあけて自分の部屋じゃないことに気付いた俺は、がばっと飞び起きた。
                            「って、ここどこ?」
                            「起きましたか? ここは私の部屋ですよ」
                             青の王の颜を见てさっきまでのことを思い出す。
                             そっか、ここはセプター4の本拠地だ。ホントだ。ちゃんと身体、もとに戻ってる。
                            「うわっ、って何で俺、裸?」
                             上半身は何も着ておらず、下半身は挂け布団に覆われていて见えないが・・・・感触からいって多分何も着ていない。
                            「猫から人间の姿に戻った时には裸でしたよ。いろんなストレインの情报は见てきましたが、服ごと変身させるというのは闻いたことがないですね」
                            「げげっ、じゃあ俺の服とかどうなってんの?」
                             スケボーとかなけなしの生活费が入ってるタンマツとか・・・。タンマツ・・・ロックかけてるから使われることはないだろうけど、见つからなかったら新しいの・・・俺、买えねーよ。
                            「とりあえずの服はさっき頼んでおきましたが、Sで大丈夫ですよね」
                            「えっ、俺、L・・・」
                            「S、でしょう。随分细かったですけど」
                            「・・・・っせーな」
                             人の服のサイズとかどうでもいいだろ。少々でかくたって着れるんだよ。
                            「服はもうすぐ届くと思うのですが、とりあえずこれでも」
                             至れり尽くせりで青の王はワイシャツを渡してくれる。これは多分青の王のものだろう。デカイ。うわ、これ着たくねーなー。绝対笑われそう。
                            「俺、どんくらい寝てた?」
                            「ほんの1时间ちょっとですよ」
                            「そっか、わりーな。ベッド占领しちまって。本当は仮眠とるはずだったんだろ?」
                             渡されたワイシャツに手を通す。どこまで腕だ。指先も见えねぇんスけど。多分立ち上がったらこれ、膝丈だわ・・・・。认めたくねぇけど。
                             猿比古よりもでかいんだっけ。ひょろひょろの猿と违ってがっちりしてそうだもんな。
                            I


                            IP属地:湖北14楼2013-04-06 22:20
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                              2025-05-18 05:16:53
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                              「いいんですよ。私もそこのソファで少し仮眠しましたし、ちゃんとあなたの面倒をみるって伏见君と约束しましたしね」
                               そう言って青の王はジッとこっちを见ている。何か変か? いや充分変だろ? この格好。
                               ベッドを青の王に譲ろうと降りかけたところでノックがあった。
                              「室长。服をお持ちしました」
                               げげっ、ツンドラの女っ。
                               俺は慌ててベッドに后ろを向いて飞び乗った。
                               だだだ、だって、ワイシャツ着てるっていっても所诠は薄い布、一枚で中が透けちまうっていうか、それを女の人に见せるわけにいかねーっていうか、しかもそれツンドラの女ってありえねーっていうか。
                               いやいやその前に赤のクランの俺がここにいるってマズいだろ!
                               慌ててたんで挂け布団の上にぺたんと座ってしまったんだけど、布団被って隠れた方がいいんじゃねーのかな。一応后ろ向きだから谁かなんてわかんねーだろうけど。
                              「こちらで间违いないですか? 男物の服と下着と靴、Sサイズ・・・・」
                              「ええ、大丈夫でしょう。ご苦労様でした」
                               な、何か视线を感じる。ツンドラの女が、こっちを见てる・・・・。
                              「差し出がましいようですが室长・・・・。今は勤务中ではありませんし、お盛んなのは结构ですが・・・・いえ、忘れてください」
                               おさかんって何だ? 热燗の一种か?
                               首を捻っているうちにツンドラの女は部屋を出て行き、
                              青の王が服一式を持ってこちらにやってきた。
                              「すまねぇ」
                               しかし纸袋を渡される直前で青の王はそれを引っ込める。
                              「えと、何?」
                               意味がわかりかねて俺はちょっと不机嫌に首を倾げた。游んでる场合じゃねーんスけど?
                              「その姿に戻した见返りにひとつだけお愿いがあるのですが・・・・」
                               にこにこと无邪気に青の王が笑う。
                              「おー、いいぜ。アンタには世话になったし、借りは作りたくねぇ」
                               この笑颜に邪気がないなんてどうして思ったんだろう。ただコイツにはどんなことにも悪意がないというそれだけだったのかもしれない。
                              「私も君のことを美咲と呼んでもいいですか?」
                              「はぁ?幼稚园児じゃねぇんだから八田って呼べよ。で、お愿いって何だ?」
                              「今のがお愿いですよ」
                               俺は首を倾げて青の王の颜をみる。えっと、今なんつった? 俺の闻き间违いか?
                              「美咲」
                              「えっと、それって何か青の王にメリットとかあるんスか?」
                               全身に鸟肌を吹きながらも耐える。殴っちゃいけねぇ。怒鸣ってもいけねぇ。
                              「私がそう呼びたいだけです。伏见君があなたのことを呼んでるのを闻いて、いつも羡ましいって思っていたのですよ」
                              「はぁ? 羡ましいってそれは普段ケンカしてる时に呼んでるあの気持ち悪い呼び方?」
                               ちょっとこの人どんな趣味してるんだ?
                              「君たちは同级生だったのでしょう? 仲がよかったと闻いています」
                              「それ、猿比古が?」
                              「伏见君は何も语ってくれませんよ」
                               じゃ・・・・谁?
                               って笑ってごまかすなよ。


                              IP属地:湖北15楼2013-04-06 22:20
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