言叶なんて<燐志摩>
片手で喉を押さえながら、「あ」と声に出してみる。けれど声帯は震えず、肺から吐き出した息はただの空気となって口から外に出て行った。続けて、「い、う、え、お」と口を动かす。けれどその言叶は声となって大気を震わすことはなく、その様子を见た雪男が眉を颦め、首を振った。「もういいよ、志摩くん」その言叶に、(彼にとっては珍しく悲しそうな、悔しそうな、申し訳なさそうな)表情に、ああもう自分は喋ることはできないのだと知った。その时に感じたことは、咏唱骑士は谛めなければならないなぁということと、女の子を口说くことはできないなぁということと、もうこの声が皆に―――彼に、届くことはないのだなぁということだった。
言叶など
その悪魔は口から瘴気を吐き出しながら攻撃してくるヤツで、咏唱骑士である子猫さんや坊は防卫しつつ攻撃もしていたが、やはり瘴気から身を守るためには防卫が多くなってくる。奥村先生――今は先生ではなく共に戦う者なので雪男くんと呼んでいるが时々间违うこともある――が来るにはまだ时间もある。それだったら自分がキリクで、と名乗り出た。だって自分は坊や子猫さんみたいに全ての咏唱を覚えているわけではないし、志摩である自分は彼らを守らなければならない。危険だ、やめろ。彼らが言う言叶に微笑んで、キリクを构えて飞び出した。自分が足止めをするから、致死节を。结果的には、雪男くんがその后すぐに来てくれて悪魔は倒せた。しかし、悪魔の间近でヤツが吐く瘴気に当てられた俺は、喉をやられて声は出なくなった。
「ごめん、仆がもう少し早く来ていれば・・・」
申し訳なさそうに、颜を俯けて言う雪男くんの言叶に、首を横に振る。手近に文字を书くものはないから、彼の掌を贷してもらい、指で文字を书く。え、え、ん、で、す、よ。そしてにっこりと微笑む。雪男くんが谢ることではない。自分が判断して、自分がやったことだ。谁も谢る必要はない。
「けど、志摩くん・・・」
(俺が自分でやったことですえ?怒られる理由はあれ、谢られる理由はありまへん)
「君は・・・本当に、嘘吐きだ」
雪男くんは口をつぐみ、席を立つ。その言叶に、俺は何も言えなくて、ただ苦笑を浮かべて部屋を出る彼を见送る。多分、明陀に知らせに行くのだろう。坊や子猫さんは、先に帰らせてあるから。帰ったら何を言われるのだろう。怒られるのは嫌だなぁ。ああ、でも优しい彼らは泣くのかもしれない。それはもっと嫌だ。彼らの悲しむ颜は见たくない。救护室を出て、忙しなく走り回る祓魔师たちの间をすり抜けていく。もう治疗は终わったのだし、别段动くことに问题はなかった。それに、ただじっと待つと、色んなことを考えてしまう。はぁ、と溜息をつく。思わず丸まった背中を、バシンッと强い力で叩かれて、思わずたたらを踏む。谁だと后ろを振り返ると、别の任务に行っていたはずの奥村燐が立っていた。
「よう、廉造!元気してたか?」
(燐くん、)
相変わらず元気そうな彼に、いつものくせで名前を呼ぶ。いや、呼ぼうとして、声が出ないのだったと気付いた。ああ、やばいなぁ。怪讶そうに眉を潜め、首を倾げる彼にそう思った。いつもならぽんぽん飞び出てくる軽口も出てこない俺を不信に思ったのだろう。どうしようかなぁ。苦笑をしながら頬を掻いていると、彼が口を开く―――前に、雪男くんが彼の后ろから走ってきた。ああ、怒っている。眉间に皱がいつもより刻まれている。
「志摩くん!何胜手に救护室からいなくなってるの!」
片手で喉を押さえながら、「あ」と声に出してみる。けれど声帯は震えず、肺から吐き出した息はただの空気となって口から外に出て行った。続けて、「い、う、え、お」と口を动かす。けれどその言叶は声となって大気を震わすことはなく、その様子を见た雪男が眉を颦め、首を振った。「もういいよ、志摩くん」その言叶に、(彼にとっては珍しく悲しそうな、悔しそうな、申し訳なさそうな)表情に、ああもう自分は喋ることはできないのだと知った。その时に感じたことは、咏唱骑士は谛めなければならないなぁということと、女の子を口说くことはできないなぁということと、もうこの声が皆に―――彼に、届くことはないのだなぁということだった。
言叶など
その悪魔は口から瘴気を吐き出しながら攻撃してくるヤツで、咏唱骑士である子猫さんや坊は防卫しつつ攻撃もしていたが、やはり瘴気から身を守るためには防卫が多くなってくる。奥村先生――今は先生ではなく共に戦う者なので雪男くんと呼んでいるが时々间违うこともある――が来るにはまだ时间もある。それだったら自分がキリクで、と名乗り出た。だって自分は坊や子猫さんみたいに全ての咏唱を覚えているわけではないし、志摩である自分は彼らを守らなければならない。危険だ、やめろ。彼らが言う言叶に微笑んで、キリクを构えて飞び出した。自分が足止めをするから、致死节を。结果的には、雪男くんがその后すぐに来てくれて悪魔は倒せた。しかし、悪魔の间近でヤツが吐く瘴気に当てられた俺は、喉をやられて声は出なくなった。
「ごめん、仆がもう少し早く来ていれば・・・」
申し訳なさそうに、颜を俯けて言う雪男くんの言叶に、首を横に振る。手近に文字を书くものはないから、彼の掌を贷してもらい、指で文字を书く。え、え、ん、で、す、よ。そしてにっこりと微笑む。雪男くんが谢ることではない。自分が判断して、自分がやったことだ。谁も谢る必要はない。
「けど、志摩くん・・・」
(俺が自分でやったことですえ?怒られる理由はあれ、谢られる理由はありまへん)
「君は・・・本当に、嘘吐きだ」
雪男くんは口をつぐみ、席を立つ。その言叶に、俺は何も言えなくて、ただ苦笑を浮かべて部屋を出る彼を见送る。多分、明陀に知らせに行くのだろう。坊や子猫さんは、先に帰らせてあるから。帰ったら何を言われるのだろう。怒られるのは嫌だなぁ。ああ、でも优しい彼らは泣くのかもしれない。それはもっと嫌だ。彼らの悲しむ颜は见たくない。救护室を出て、忙しなく走り回る祓魔师たちの间をすり抜けていく。もう治疗は终わったのだし、别段动くことに问题はなかった。それに、ただじっと待つと、色んなことを考えてしまう。はぁ、と溜息をつく。思わず丸まった背中を、バシンッと强い力で叩かれて、思わずたたらを踏む。谁だと后ろを振り返ると、别の任务に行っていたはずの奥村燐が立っていた。
「よう、廉造!元気してたか?」
(燐くん、)
相変わらず元気そうな彼に、いつものくせで名前を呼ぶ。いや、呼ぼうとして、声が出ないのだったと気付いた。ああ、やばいなぁ。怪讶そうに眉を潜め、首を倾げる彼にそう思った。いつもならぽんぽん飞び出てくる軽口も出てこない俺を不信に思ったのだろう。どうしようかなぁ。苦笑をしながら頬を掻いていると、彼が口を开く―――前に、雪男くんが彼の后ろから走ってきた。ああ、怒っている。眉间に皱がいつもより刻まれている。
「志摩くん!何胜手に救护室からいなくなってるの!」